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ここがロドスだ、ここで跳べ ~31歳から36歳~

1、適齢

早いもので世代考察のnote記事も6回目です。今回は31歳から36歳まで。

前回の記事はこちらから読めます↓。

恒例の二字熟語のキーワードからいきましょう。「適齢」です。適した年齢。ここがチャンス。ここがロドスだ、ここで跳べ。…そうそう、タイトルの意味はこちらからどうぞ↓。

少し説明しますと、これはイソップのおとぎ話「ほら吹き男」から作られたことわざです。嘘つきの陸上選手が遠征先のロドス島から帰ってきた。「ロドスでは大ジャンプしたんだ、ロドスに行けばロドスの人が証言してくれるよ!」と自慢したんですね。ところがこれを聞いた人。「それが本当なら、ここがロドスだと思って跳んでみろよ」と言い返した…。というお話。

どこでも出せないような実力は真の実力ではない。そんなことわざです。最近ではAKB48の楽曲タイトルにも取り上げられました↓。

「今の自分を見せろ」。「拗ねても始まらない」。「ここが舞台だ」。秋元康さんの作詞には、このような意味の歌詞が並びます。一言で言うと「論より証拠」。やれるんなら、今ここでやりなさい。

この言葉が最も突き刺さる世代は、実はこの31歳から36歳ではないか。

2、35歳の壁とは?

というのも、この世代では、いくつかの「適齢」があります。よく言われるのが、「35歳の壁」です。

まずは「結婚」。30歳までの結婚は、今では何となく「早い」というイメージがありますが、30歳超えてからの結婚はボリュームゾーン。30歳を超えてから、急に「結婚式の招待状」が増えていきます。20歳代では気楽に祝福できた自分も、徐々に焦りを感じてくる。35歳からの成婚率は下がっていくということは、婚活市場などでよく言われます↓。

次に「出産」。もちろん、40歳超えてからの出産も増えてきてはいますが、現在の日本産婦人科学会の定義では「35歳以上が高齢出産(高齢初産)」だそうです。ちなみに1980年代には、30歳以上でした↓。

まだありますよ、「住宅ローン」。これも35歳。…なんか、みんなして、よってたかって35歳でせっせと壁を作っているのではないかという、陰謀説すら感じてしまいます↓。

おそらく、この「35歳の壁」には、共通している前提があるのでしょう。「子どもを持つなら35歳までが望ましい」→「相手の家族が納得しやすく結婚しやすいのも35歳まで」→「子どもができたら家が欲しくなる、定年を考えても35歳までにローンを組んでおけば安心では?」という三段論法。そうだよね、と思いますか? そんなの馬鹿げている、と思いますか? 

いずれにしてもこの世代、ジャンプをする人が増えてくる、それに対して自分の決断も迫られてくる。

もし決断をしない、ジャンプをしないにしても、親の「結婚プレッシャー」「出産プレッシャー」などは強まるでしょう。それに対抗するのであれば、少なくとも自分自身の中で理論武装と納得が必要。それができなければAKB48風に「今の自分を見せろ」「拗ねても始まらない」「ここが舞台だ」という気持ちで、がむしゃらに行動するしかない。

もちろん、すでに結婚・出産・子育て真っ最中の人もざらにいる世代です。そうなると「離婚」というキーワードもちらつきます。本当にこれが幸せなのか? パートナーはともかく、パートナーとの家族とはこれでいいのか? 子どもについての問題は? まだ間に合ううちに、婚活市場にスムーズに乗れるうちに、次のステップに進んだ方がいいのか? そのようなジャンプを考える人もいる世代ではないでしょうか。

補足しておきますが、妊娠・出産につきましては、女性だけの話ではありません。井上純一さんの『中国嫁日記』4巻にもありますが、「不妊」は男性にも原因があるケースが多い。卵子と同じく精子も老化していきます。女性からは男性に言いづらいデリケートなケースも多いので、むしろ男性から積極的に動いていく(自分の検査をしてみるなど)必要があります↓。

3、仕事の流儀も変わらなきゃ

ここで視点を変えて、この世代の「仕事」について考えましょう。

プロ野球を例に挙げるのが、わかりやすいかもしれません。高卒ルーキー18~19歳、あるいは大卒ルーキー22~23歳でプロ野球の世界に飛び込んだ若武者たちも、30歳を過ぎれば立派なベテランです。36歳まで選手を続けられれば御の字です。50歳でマウンドに立った元中日ドラゴンズの「山本昌」さんは、もはや生きる伝説です↓。

この記事によると昔、山本昌さんは、今は亡き闘将の星野監督から、ベンチ裏で「鉄拳制裁」で18発ほども殴られたことがあるそうです。今なら完全なパワハラです。思わず山本昌さんが睨み返すと、星野監督は一言、「そういう顔をして投げろ!」と一喝。気迫の大切さを、嫌われ役になって伝えたかったんでしょうね(方法は荒っぽいですが…)。「星野監督は怖い人でしたが、チャンスは与え続けてくれた。今では感謝している」そうです。

このエピソードを紹介したのは、31歳~36歳の仕事は、どこかで今までの仕事の流儀を意識して変えなければいけない、と書きたかったからです。

プロスポーツの世界ほどではないにしても、30歳を越えれば肉体は衰えて、仕事に影響が出始めます。10歳代や20歳代のように、馬力や根性で乗り越えられない部分が出てきます。なのに、毎年、ルーキーの若武者は社会にたくさん出てくる。「追い越し狙い」の対象になる。それを跳ね返すためには、気迫なり、経験なり、テクニックなり、メンタルコントロールなり、若い人にはない持ち味を出していかなければいけない。

組織で勤める人だけではありません。個人事業主、フリーランサーの世界は、見えにくいだけでもっと過酷かもしれません。毎年、血気盛んな新人が現れる。馬力や根性で安くやりますからとアピール合戦の末、そういう若い人たちに仕事が流れていくかもしれない。クライアントとしても、同じ質のものができるのであれば、より年下の人のほうが気楽に頼めるかもしれない。見えない仮想敵(仮想味方もいます)だらけです。世代なりの持ち味を出す必要があります。

年を重ねれば、知らず知らずのうちにハードルが高くなります。自分では若いつもりでいても、世間はそうは見てくれません。自分ではハードルを下げているつもりでも、相手は「30歳越えか」という目で見ます。トレード要員、異動、解雇。組織は時に残忍です。プラスの面で言えば、昇給、昇進、栄転。役職をつけて、前とは組織的に違う仕事をさせることもある。

ただいずれにしても、自分自身の中で意識して、「変わらなきゃも、変わらなきゃ」(昔のイチローさんのCMより)の精神で、変革していかなければいけない世代です。転職・起業というハイジャンプをするか、徐々にスモールジャンプをするかは、これはその人次第ですが…。子育てがひと段落して、再就職を考える人も多いでしょう。しかし、転職市場や再就職市場にも「35歳の壁(呪い?)」があることを付記しておきます↓。

4、島耕作ってどうでしょう?

いかがでしたでしょうか? この記事では主に、31歳から36歳までの家庭と仕事について考察してみました。

「ワークライフバランス」ならず「ライフパズル」の考えでは、それぞれが細かいワンピースでどう複合的に組み立てていくかが大事なんですが、旧来の組織(あるいは旧来の日本社会)で働いている場合は、どうしても「ワーク」と「ライフ」の二項対立になりがちなんですよね…。参考までに、スウェーデンの視点はこちらから(手前味噌の記事ですが)↓。

肉体的にも衰えが出る世代ですので、ぜひ疲れを感じたら「フィーカ」でコーヒータイムとしゃれこんでください。マラソンだって給水ポイントがあるんですから…。

さて、お待ちかねの(待っている人はいるのか?)の漫画紹介を。

これは外せないでしょう!『課長島耕作』!↓。

というか、島耕作って34歳で大企業の課長になったんですね…。今(2019年現在)では『会長島耕作』にまで昇進しています。『島耕作の事件簿』『転生したら島耕作だった件』『騎士団長島耕作』など、スピンオフ作品もよろしければどうぞ。まさに団塊の世代のサクセスストーリー。ちなみにこの漫画、作者の弘兼憲史さんと島耕作は同じ年齢だそうですよ。34歳で連載開始したから、島耕作も34歳にしたとか…。

ただ、島耕作は(女性遍歴がすさまじいこともありますが)離婚してしまっているんですよね。終身雇用でスーパーサラリーマンだと、なかなか(昔ながらの意味で)ワークライフバランスはとれないのかもしれません。まあ島耕作は自分の軸を持っているので、大企業に属しながらも変幻自在の「プロティアン」で、その都度「ライフパズル」を組み立てているのかもしれませんが…(プロティアンについてはこちらの記事もどうぞ↓)。

もう1つ。ある意味、島耕作と対極の漫画がこちら↓。

福満しげゆきさんの『うちの妻ってどうでしょう?』です。かたや大企業の課長、かたやフリーランスの明日をも知れぬ漫画家。かたや離婚と女性遍歴、かたや結婚と子育て。どちらが幸せだと感じるかは読者次第です。

福満さんは『僕の小規模な失敗』『僕の小規模な生活』と日常生活エッセイを重ね、『妻に恋する66の方法』も連載中です。『終わった漫画家』など、すごい自虐的な(でも面白い)漫画もあって、読者を選ぶクセのある漫画が多いのですが、「うち妻」は比較的するりと読めます(たぶん)ので、ぜひ。あと方言を話す人が好みの方も、ぜひ。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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