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著書『国家はなぜ衰退するのか』!

2024年にノーベル経済学賞を受賞した、
ダロン・アセモグルさんと
ジェームズ・A・ロビンソンさんの
共著になります。
(注:サイモン・ジョンソンさんも受賞)

「制度がどのように形成され、
国家の繁栄にどう影響を与えるか?」

「受賞者たちは植民地化の際に導入された
社会制度が、各国の繁栄の違いを説明する
一つの要因であることを示した。
国の間の大きな所得格差を縮小することは、
現代における最大の課題の一つである。
受賞者はこの目標を達成するために
社会制度が重要であることを実証した」

これが、授賞理由です。

本記事では、アセモグルさんたちの
経済学の理論を踏まえつつ、
この著書の内容をかいつまんで紹介します。

受賞者の一人、アセモグルさんの略歴から!

彼は、1967年生まれ。
2024年時点で57歳です。
トルコのイスタンブール生まれ。
イギリスのヨーク大学に進学します。
ロンドン・スクール・
オブ・エコノミクス(LSE)で
数理経済学と計量経済学の博士号を取得。

ロビンソンさんやジョンソンさんと、
『新制度派経済学』の研究を
進めてきた経済学者です。

「…新制度派経済学って何ですか?」

一言で言えば「制度」を重視する
アプローチの経済学。

経済学は、文字通り
「経済」を研究する学問なのですが、
そのアプローチには実に
様々なものがあります。

◆古典派経済学
◆マルクス経済学
◆新古典派経済学
◆ケインズ経済学 …ほか多数

これらの説明を、
ものすごく取捨選択して書きます。
(注:私なりの解釈です)

『古典派』はアダム・スミスに代表される
「労働価値説」という
「人の労働が価値を決めるのだ!」という
考えに基づく経済学です。
「見えざる手」などと言って、
個々の利益を最大化するように
それぞれが経済活動を行えば、
「自然に」最適に資源が分配される…。
あまり手を加えるべきでなく、
それぞれの環境や特徴に応じた経済活動を!
原則、レッセフェール(自由放任)です。

これを批判的に継承したのが
『マルクス経済学』。
資本家と労働者との間では
労働ではなく「労働力」が売買され、
この労働力を使って生まれる
賃金を「超える」剰余の価値こそが利潤。
「剰余価値説」です。
ここから『搾取』などの言葉も生まれる。
自由にさせていてはよろしくない!
貧富の差が拡大する!
だから介入すべきだ、という論になる。

さらにこれに対する『新古典派』は
文字通り「新しい」古典派。
自由放任を基調とする。
しかし、古典派のように
基本、自由に…というわけではなく、
締めるところは締める。ここが新しい。
国家(政府)の役割も重視する。

『ケインズ経済学』は何か?
「世界恐慌」など世界的な不況に対する
経済学からのアプローチを説きます。
中央銀行や政府は積極的に
「金融政策」や「財政政策」を行うことで
世の中に需要・投資・貨幣を増やせ、と。
「供給すればそれ自らの需要を生み出す」。
必要性を作り出せば、経済は好転する。
有名な『ニューディール政策』では、
公共事業を行って仕事を増やしていました。

◆古典派経済学:基本は自由放任
◆マルクス経済学:基本は統制経済
◆新古典派経済学:自由だが必要あれば統制
◆ケインズ経済学:供給して需要を生み出す

…経済とは摩訶不思議なもので、
まるで「生き物」ですよね。
これをすれば絶対に成功する!
というものではない。
だから、色々な経済学派が生まれる。

個々の人間には千差万別の
「欲望」があります。
人間が集団になれば、それこそ
変数が多過ぎて予測しづらい…。
それを把握し、お金の流れを予測し、
失業や貧富、好況や不況を見通すのは
本当に難しいこと。
その難題に挑んでいるのが
経済学者だ、とも言えるでしょう。

では、アセモグルさんの
『新制度派経済学』とは何か?
それを考えるためには、
新古典派経済学の欠点に触れる必要がある。

従来、経済学者は「企業組織」に
ほとんど関心を向けませんでした。
「市場の役割」だけに注意を払ってきた。

もし「自由に交換取引できる市場」があると
仮定すれば…という話を進めていきます。
そんな市場であるのなら、
「能力のない人」は財を売る。
「能力のある人」は財を買い取る。
能力のある人に財が配分されるため
財は効率的に利用される…。明快です。
『新古典派経済学』はこう研究してきた。

…しかし、本当にそんな市場、あるの?
みんな自由に交換取引できているの?
情報も限られていますよね?

新古典派経済学において、
企業は「完全合理的」に「利潤極大化」する
経済人として単純化されて考えられました。
でも人間は、組織は、複雑。
「そんな単純な企業ばかりではない!」
「経営学分野」と「経済学の内部」から、
批判を受けることになります。
机上の空論になるのでは?と。
単純化し過ぎていませんか?と。

ゆえに新制度派経済学は
『組織の経済学』とも呼ばれます。
「不確実な環境のもと」における
合理的な個人の行動を研究し、
理論化を試みる。

アセモグルさんはこの視点に立って、

『非常に豊かな国がある一方で、なぜ
ひどく貧しい国が存在するのか?』

この世界的な難問に取り組んだのです。

それまで、色々な理由が考えられてきました。

◆文化説:繁栄は、その国の文化による
◆地理説:国の地理条件によって異なる
◆無知説:統治者が無知だと貧しくなる

しかしアセモグルさんは否定する。
この三つの説では所得格差を説明できない!と。

「北朝鮮と韓国はほぼ同じ文化なのに
経済も発展もまるで違うではないか?」
「熱帯は暑いから労働意欲が湧かない、
と言われやすいが、クメール王朝などは
熱帯でも経済が栄えていたではないか?」
「全体に貧しい国では、支配者層が
『無知』なのではなく、『故意』に
全体の経済成長を阻害しているのでは?」

では、何が原因なのか?

アセモグルさんは「制度」に理由を置きます。
特に「政治制度・社会制度」を重視する。
経済は政治に影響を受けて、
大きく左右されるから。

著書『国家はなぜ衰退するのか』では、
経済学的なロジックを用いつつ
歴史の事例を読み解いていきます。

どんな文化でも、どんな地理状況でも、
政治制度が良くなれば経済は好転する。
どんなに文化や地理状況が良くても、
政治制度が悪ければダメだ。
いくら経済学的に良い経済政策を行っても、
政治制度が良くなければ、ダメ…。

とどのつまり「政治制度」が重要!

自由放任、統制経済、
大きな政府、小さな政府、
そういうアプローチとは
また異なる視点です。
アセモグルさんたちは、実証的で実用的な
この仮説を打ち上げたのです。

最後に、まとめます。

本記事では2024年に
ノーベル経済学賞を受賞した
アセモグルさんたちを紹介しました。

読者の皆様は、どう考えますか?

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