明智光秀の「三日天下」は有名ですが、
(実際は6/2~6/13頃で10日以上)
イギリスの「イングランド」にも
わずかな期間だけ天下を握り、
そして散っていった王様がいます。
ジェーン・グレイ、という女性です。
本記事では、彼女と
その周りのめくるめく政局、
悲運の生涯について紹介します。
彼女が生きたのは16世紀中頃です。
1537~1554年。
日本史で言えば戦国時代の真っただ中、
武田信玄や上杉謙信と
同じくらいの時代に生きた人。
…この頃のイングランドは、
「戦国時代」がある一人の国王によって
力ずくで抑えられていた時代でした。
『ヘンリー8世』です。
1491年~1547年。
ジェーン・グレイから見れば、
「おばあちゃんのお兄さん」になります。
つまりヘンリー8世から見れば
ジェーン・グレイは「妹の孫」。
…このヘンリー8世は
良くも悪くも強烈な個性の持ち主でした。
父親は国王、ヘンリー7世。
兄アーサー、姉マーガレット、
そして妹メアリー(ジェーン・グレイの祖母)。
4人兄弟姉妹の次男として生まれます。
本来なら兄が王位を継ぐ予定でしたが、
1501年、その兄が結婚後20週間で急死。
彼に王位が回ってきます。
その兄は、
カスティーリャ女王とアラゴン国王の夫婦の
末娘と結婚していた。
キャサリン・オブ・アラゴンという女性です。
このキャサリンは20週間で夫を亡くした。
…ヘンリー8世は、この兄嫁と
「婚約させられた」のです。
当時、わずか10歳。
それは、カスティーリャとアラゴンとの
結びつきを保つためです。
カスティーリャ王国とは
現在のスペインの中央にあった王国。
トレドという都市があります。
アラゴン王国は
現在のスペインの東部。
バルセロナという都市があります。
1479年、この二つの国が合わさって
「同君連合」となっていた。
1492年にはグラナダという
半島南部のイスラームの拠点を落とした。
同じ年、コロンブスが西インド諸島に到達…。
いわゆる『スペイン』ですね。
大航海時代のスペインは日の出の勢い!
日本で言えば、武田信玄と上杉謙信が
手を組んだような感じです。強い。
このスペインを敵に回すわけにはいかない!
ヘンリー8世は「政略結婚」として
亡き兄の妻を
自分の妻に「させられた」のでした。
1509年、父王ヘンリー7世の崩御に伴い、
ヘンリー8世は即位します。
妻キャサリン・オブ・アラゴンとの間に、
子どもができる。
(死産、夭折、流産…と
悲劇が重なった上での子どもでした)
その子どもこそ、のちのメアリー1世。
『ブラッディ―・メアリー』と呼ばれ、
ジェーン・グレイと数奇な運命で対決する
(させられる)女性なのです。
…ここまでだけでも
家系図が頭の中でごちゃっとしてきたので、
ヘンリー8世を軸に整理しましょう。
◆ヘンリー8世:強烈で苛烈な国王
◆妻のキャサリン・オブ・アラゴン
◆その娘のメアリー(後のメアリー1世)
◆ヘンリーの妹の孫のジェーン・グレイ
その通りですが、このヘンリー8世、
乱世の国王が如く、もうやりたい放題。
ヨーロッパは、1517年に始まる
「宗教改革」の激動の波にさらされます。
カトリック(旧教)VSプロテスタント(新教)。
イングランドはカトリックでした。
スペインもバリバリのカトリック。
イングランドの中も、
15世紀に起こった『薔薇戦争』という
内乱が収まったばかり。
恨みと陰謀渦巻く
不穏な情勢が続いている…。
国内外の敵、外憂内患に対し、
ヘンリー8世は強烈なカリスマで統制します。
逆らう者は容赦しない…。
いわゆる「絶対王政」ですね。
彼は、男性の世継ぎを熱望していました。
…しかし残念ながら、
妻のキャサリン・オブ・アラゴンとの間に
男児は成長しなかった(生まれたが夭折)。
どうする、ヘンリー8世!
…妻のキャサリンと離婚し、
新しい妻、アン・ブーリンを迎えた。
カトリックでは離婚を禁止していますから、
「イングランド国教会」を分離成立させた。
ここからイングランドは
いわゆる「プロテスタント」の国になる。
その後、彼は計6名の妻を
順番に迎えることになります。
このうち、ジェーン・シーモアとの間に
エドワードという待望の男児を授かりました。
ヘンリー8世が1547年に亡くなった際、
王位継承順位は以下の通り。
しかし9歳のエドワードが
エドワード6世として即位した後、
わずか15歳でこの世を去る…。
王位継承順位は、こうなります。
…何とここでジェーン・グレイが
王位につくんですよ。
メアリーやエリザベスを跳び越えて!
ジョン・ダドリーという野心家が
エドワードに遺言を書かせていた。
メアリーとその一派はこの陰謀に対抗、
イングランドの東部、
ノリッジという街で即位します。
ジェーンの即位に反対する人たちは、
メアリーの下へと続々と集結していく…。
こうして勢いを得たメアリー派は
ロンドンに攻め込みました。
ジョン・ダドリーの野心は粉砕された。
その彼にかつぎあげられた
ジェーン・グレイも逮捕される。
1554年、処刑。…わずか16歳でした。
イギリス史上、最も美しく、
最も聡明とも言われた若き女王は、
こうしてこの世を去ったのです。
最後にまとめます。
本記事では「九日間の女王」こと
ジェーン・グレイについて書きました。
彼女と彼女の一派を撃滅し、
改めて即位したメアリー1世は、
スペイン出身の母を持つカトリックです。
国内のプロテスタントを粛清していきます。
多くの血が流れた。
ゆえにブラッディー・メアリーとも呼ばれる。
…その彼女の後に即位したのが、
有名な「エリザベス1世」なのです。
この女王の下、イングランドの治世は
落ち着いていくのでした。
ジェーン・グレイを元に、
『9days Queen ~九日間の女王~』という
舞台が日本でもつくられています。
2014年。主演は堀北真希さん。
興味の出てきた方はぜひ!
※中野京子さんの『怖い絵』でも
「ジェーン・グレイの処刑」が紹介されています↓
※堀北真希さん主演の
『9days Queen ~九日間の女王~』の
DVDのAmazonページはこちら↓
※こざき亜衣さんの漫画
『セシルの女王』では
ヘンリー8世やエリザベス1世が
側近のウィリアム・セシルの視点から
描かれています。
ジェーン・グレイももちろん登場します↓
※『日本と英国の歴史と地理の共通点と相違点』↓
合わせてぜひどうぞ!