班の地図

男女逆転ゼミ ~「イバーランドの県道」制作ノート2~

この記事では、「イバーランドの県道」を制作した過程を書いてみたいと思います。2回目です。1回目はこちらから↓。

【前回(1回目)のあらすじ】

北茨城(きたいばらき)の名前から、茨城県市町村擬人化に邁進する。「風来のシレン」的な、二字熟語+カタカナ表記でキャラ名を統一、大学生(20歳以上)くらいの設定、部活・サークルに所属させることでキャラ付け。しかし、彼たち彼女たちは、どんな学校に行っているのか? そのような大きな設定を決めないと、ただ「そこにいる」「キャラのためのキャラ」になってしまうのでは?

1、プロイバゼミの誕生

市町村擬人化したキャラたちは、大学生くらいの設定。しかし、〇〇大学、例えば「イバラキ大学」というのも芸が無さすぎます。そもそも実在する「茨城大学」もありますし…。

そこでまず、このキャラたちは「市町村の化身」なのか、つまり市町村そのものなのか、それとも「市町村の出身者」、つまり市町村そのものではないのか、を考えることにしました。

そもそも擬人化というものは、文字通り、たいていが「そのものズバリ」です。いくつかの擬人化の先行作品を見て考えてみましょう。

例えば「刀剣乱舞」。あれ、刀がそのまま人になっていますよね↓。

「艦隊これくしょん」(艦これ)でも、戦艦などがそのまま人↓。

当然、「ヘタリア」などの「国の擬人化」でも、そのまま↓。

都道府県の擬人化で有名な「うちのトコでは」でも、茨城はそのまま茨城というキャラです↓。

しかし私は、そのまま「市町村の化身」とすることに、少し違和感がありました。「市町村の擬人化」について書いたのが、次のnote記事です↓。

noteを始めたばかりの2019年5月24日に書いた記事です。今、自分で読んでみますと、noteを始めたばかりなので、少し肩の力が入った文章ですね…。

この記事の中では、

1、なぜ市町村なのか?
2、なぜ擬人化なのか?
3、市町村擬人化がマイナーな理由を考える
4、市町村擬人化の「教育的効果」を考える
5、市町村擬人化の「レシピ」を考える
6、おわりに~日立市の擬人化の例~

というように、市町村擬人化についてえんえんと語っているわけですが、詳細は実際の記事を読んで頂くとして、ここでは簡単にまとめます。

・フィクションにする→市町村そのものだとフィクションになりにくい
・ゆるキャラとの差別化→市町村の多様な特色を盛り込みたい
・特色を絞りにくい→さまざまな特色を「体現」できるように

また、擬人化の「教育的効果」について述べた文章の引用はこちら↓。

擬人化とはあくまで特徴を誇張して表現しているだけで、現物ではないんですが、それを即、「現物だ」と誤解する人が多いのです。
皮肉なことに、「よくできた擬人化」ほど、誤解が広がります。大事なことは、「よくできた擬人化」を目指しつつも「でもこれだけじゃないですよ」という背後で葬られた取捨選択の存在を仄めかすような擬人化を目指すことではないでしょうか?
つまり、「私もやってみよう!」という気を起こさせる擬人化です。
「擬人化とは取捨選択の結果で現物そのものではない。ただのモデル、いち表現に過ぎません。ご不満なら、ご自分でぜひ作ってみて下さい!」
…という市町村擬人化を進めて提案したい、と考えています。
「魅力ある虚像」さえ作れればそれでいい、そこで止まりたくないのです。

要するに、擬人化されたキャラ=市町村、とは思われたくない。ただのモデル、いち表現に過ぎませんよ!という擬人化にしたい。

そこで設定したのが「各市町村の出身者」というものです。これならば、市町村そのものではない。そのものではないから、良いことも言えば悪いことも言える。地元から離れている。つまり「外からの視点」で、自分の出身の市町村を見ている。擬人化なんですけど、対象の市町村からは少し離れた、いわば「ワンクッションおいた」擬人化にすることにしたのです。そうすれば、「他にもいる」ことになる。出身者って、1人ではありませんから。

さて、このキャラたちは、どこに通っているのか?

「町学校」(ちょうがっこう)、「町学生」(ちょうがくせい)という概念を設定しました。

ここにはすべての都道府県の市町村出身者が通っている。いや、もしかしたら世界の市町村(に準ずる行政単位、街)出身者が通っている、かもしれない。そこで「ゼミ」に属します。茨城県各市町村出身者のゼミ。ゼミですから、主宰者がいる。当然、「教授」です。「プロフェッサー」です。茨城県の擬人化キャラ、イバラキ。なので「プロフェッサーイバラキ」。彼のゼミだから、通称「プロイバゼミ」にしよう…↓。

190915町学校設定コマ

そんな感じで、「プロイバゼミ」が誕生しました。

2019年現在、茨城県には44の市町村があります。ですので「@44」をつけて、「プロイバゼミ@44」としました(もし市町村数が合併などで変わったら、「プロイバゼミ@〇〇」の数字も変わります)。

2、プロラキゼミも誕生

当初、この「プロイバゼミ@44」というタイトルで、茨城県市町村擬人化のコンテンツを作っていました。

実を言うと、「プロラキゼミ@44」というもう1つのゼミも、「イバーランドの県道」というゲームブックも、企画していなかったんです。

ここから、「プロラキゼミ@44」というゼミの誕生について書きます。

先ほども挙げたように、各市町村の出身者の「ゼミ生」は、各市町村の特色を表しているものの、ただの出身者に過ぎません。

男女どちらかに分けられます。44人いますから、22人ずつで男女に分けました。「刀剣乱舞」のように男性ばかりにしても、「艦隊これくしょん」のように女性ばかりにしても良かったのですが、イケメンパラダイス・男塾や、女子大・女子高のようなノリになってしまうのもなあ…と考えたのです(男女いますと、ちょっとしたラブロマンス的な展開もしやすいですし…)。

ただ、ここで困りました。

「男女で分けたけど、その基準が示せないのでは?」

そうです。ただ単に44人だから22人ずつ男女に分けただけで、各地域で偏らないように、と決めただけですので、例えば「水戸市の『好文のミト』は、なぜ男性キャラなの?」と言われても、「そう決めたので」としか言えないのです↓。

190518好文

ここで、ひらめきました。

「男女逆転版で、もう44人キャラを作ってしまえば?」

…自分でひらめいておきながら、私はこの考えに戦慄しました。

44人キャラを設定して、形にするだけでも(私にとっては)相当な労力です。それをさらに倍! 自分で自分の首を絞めるだけでは…。とりあえず「プロイバゼミ@44」だけ作って、好評なら男女逆版を作ればいいじゃないか…。葛藤しました。

しかし結果的に、私はもう1つのゼミも作ることにしました。

その一番の理由は、先ほど挙げた、擬人化のコンセプトにあります↓。

大事なことは、「よくできた擬人化」を目指しつつも「でもこれだけじゃないですよ」という背後で葬られた取捨選択の存在を仄めかすような擬人化を目指すことではないでしょうか?

「でもこれだけじゃないですよ」と示すためには、同じ市町村で男女逆の2人の擬人化キャラを作ればいいじゃないか。労力は2倍でも、このコンセプトをはっきり目に見えて示すことができるじゃないか! 「ああ、1つの市町村をモデルにしても、色々なキャラが考えられるんだな」と、直感的にわかってもらえるではないか!

こうして、色々な葛藤を振り切る形で、「プロラキゼミ@44」も誕生することになりました↓。

190514プロラキ問い

主宰者である教授(茨城県の擬人化キャラ)は、両方「プロフェッサーイバラキ」ですが、「プロイバ」「プロラキ」と、呼び名を変えることで対応します。男性のほうが「プロイバ」で「プロイバゼミ」、女性のほうが「プロラキ」で「プロラキゼミ」です。

※ちなみに、他の都道府県でもこの設定を応用できるように、と考えています。例えば福岡県ならば、「プロフクゼミ」と「プロオカゼミ」というようにです。もちろん、同じ「フク」がつく福島や福井とどう区別するのかですとか、岐阜とかだったら「プロギゼミ」「プロフゼミ」になるんですか?などの疑問は残りますが、…全国展開ができたら、また考えます。

3、文武のバランス

44×2+教授2の、90キャラを作る長い道のりが始まりました。

一応、バランスを考えました。それは、部活・サークルのバランスです。運動部(体育会系)ばかりや、文化系・芸術系ばかりに偏らないよう、ああでもないこうでもないと、各市町村の特色や要素を踏まえて、キャラを設定していくのです。

男女別ですから、44人のうち22人は男性、22人は女性。そのうち、男性の運動部(体育会系)のキャラを11人、文化系・芸術系のキャラを11人。女性も同じ。これを、プロイバゼミとプロラキゼミの両方で設定していきます↓。

190915ゼミ生22ずつ設定

この作業、そうとう時間がかかりましたね…。数を合わせることもさることながら、市町村間の差が激しい。つまり、ネタの格差の問題です。

各市町村で、ぱっと特徴が思い浮かんだり、歴史があったり、全国的に有名なイベントやスポットがあったりするところはいいんですよ。

茨城県で言えば、県庁所在地の水戸市ならば、野球部の他にも「納豆研究会」「歴史研究会」「水戸黄門研究会」「梅酒研究会」など、いくらでもアイデアが出てきます。ちなみに女性キャラのほうは、水戸藩と水戸学にちなんで「藩学のミト」と名付けて、オセロの発祥(考案者出身)の地ということで「オセロ部」にしました(オセロの原型となる「リバーシ」はイギリス発祥ですが)↓。

190518藩学

ところが(どことは言いにくいですが…)ネタがない市町村もある。特に、平成の市町村合併で新しく生まれた市町村は、まだ歴史が浅いこともあって「これ!」といった特徴がわかりにくい。名前すら新しいのですから。

それこそ各市町村の「観光協会」などのホームページで検索するんですが、なかなかピンと来るネタがない。そもそも観光協会のホームページが整備されていないところもある。市町村のホームページはさすがにありますが、行政情報ばかりでイマイチ「キャラの立った」ネタがない…。ゆるキャラをそのままパクるわけにもいかない…。

そのような苦労を重ねつつ、何とか基本的なデータができました(というか、これが決まらないと先に進めないので、後から推敲していくことにして、半ば強引に決めました)。

さてここで新たな難問が。…この設定データを体現したキャラを、どのように形にしていけばいいだろう? 自分で描く? とはいえ、90キャラも1から描いていては、どのくらい時間がかかることやら…。

さあ、どうしよう?

(次回につづく…)

4、5つの班

いかがでしたでしょうか?

この記事では「イバーランドの県道」の制作過程について、プロイバゼミとプロラキゼミの誕生、キャラ設定について書いてみました。

ちなみに、茨城県の地域区分では「5つ」に分けるものがよく使われますので、ゼミの中でも「班」を分けて、それぞれに「班長」を置くことにしました。こんな感じです↓。

班の地図

班別のゼミ生

班長には、それぞれの地域にある代表的な市を選んでいます(ミト、ツクバ、コガ、ヒタチ、カシマ)。

こちらの記事で、より詳しく茨城県の地域区分について書いてみましたので、もしよければお読みください↓。

ここまでお読みいただき、ありがとうございました。

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