詩集『みをつくし』(七月堂/2017/08)より―宇宙なんて知らなかった
2017/8/1に、七月堂さんより出させて頂いた第一詩集『みをつくし』より。今は原本も手元にないため、当時の記録を残したく、noteにもまとめておこうかと。『みをつくし』は、私が高校生∼20代前半・半ばくらいまでに執筆したものをまとめた詩集でした。今読み返すと、非常に恥ずかしいですが、思い入れの強い詩集でもあります。
レイアウトやフォントにもこだわった一冊でしたので、WEB上にアップしてしまうと、その辺りが再現できず悩ましいのですが……。これを機会に、また創作活動も再開したいと考えております。
宇宙なんて知らなかった
宇宙についてただひたすらに考えていた
物理学 とか 相対性理論 とか 疎いので
まず、それらは後回しにして
言葉の成り立ち や 漢字の意味 を 調べることにした
そうして、たまたま手に取ったのが日本国語大辞典であった。
―テンチノ アイ
母と私とを隔てるに十分な壁が
夜な夜な形成されていた
けっして乾ききらない髪の毛と
止まることのないドライヤーの音
音源を持つ手の甲には
鮮やかな星座があった
名前を知らぬ星座であった
それは父が焼き付けたものであった
「あな、いみじ」
陸奥の国に いやしき男住みけり
父をさをさ宿にあらざりければ 母のみ添ひてあるに
この父の心憂きこと多くて
母を常に憎みつつ
男にもこの母の御心のさがなく悪しきことを言ひ聞かせれけば
昔のごとくにもあらず
おろかなること多くなりけり
この父 憎みて 今まで死なぬことと思ひて
よからぬことを言ひつつ
「もていまして、深き山に捨て給びてよ。」
とのみ責めければ
責められわびて
さしてむと思ひなりぬ。
月の綺麗な夜であった
私は繋いだ手を放して
星座を見て尋ねた
「痛くはないか」と
「このあたりで少し休憩しましょう」
私はいくつもの星座を失った
帰り道はまっくらであったが
月は世界を照らしていたが
私の進むべき道はどこにもなかった
暗闇の中、私の宇宙は散った
幼き頃
咳き込む背中をなでてくれたあたたかき
遠足のおにぎりをにぎってくれたあたたかき
洗濯物を畳んでくれたあたたかき
夢の中で頭を撫でてくれたあたたかき
あたたかき星座は
本当に遠くへと行ってしまった
私はその日から
ただ必死に宇宙の勉強をはじめた
星座の名前は何一つ覚えることができなかった
もっとも大事な星座失われたのだから