見出し画像

『半笑いの・うんこ』ヒスイの鍛錬・100本ノック⑮

 私は海を漂っている。もうずっと漂っている。
 以前はもっと暗いところにいた気がするのだが、こうやって陽の光を浴びていると心地よい。
 ふ、と半笑いが浮かんでくる。

ふ。
ふ。
ふ。

 やがて私は浜に打ち上げられた。波が私を洗ってゆく。あちこちから、なにかが匂う。
 土のような香り。
 甘い香り。

ふ。ふ。ふ。
 私自身が香っているのだ。たまらぬ芳香だ。
 人が駆け寄ってくる。私を取り上げる。笑いがこぼれる。
ふ。ふ。ふ。は。は。は!!!

 半笑いが、大笑いに変わってゆく。
 なんという幸せ。私自身が幸せを運ぶものになっている。
 あんなに暗いところに何年もいたのに。
 すさまじい勢いで、海中に脱糞されたのに。


 私は龍涎香(りゅうぜんこう)。
 マッコウクジラが未消化のエサを分泌物で包み、体外へ排出したものが海面を漂ううちに固形化したと言われる。
 圧倒的な香りは、高級香水の原料に使用されている。
 超・高額な。

 うんこ。

《了》



こちら、コジ部長の『半笑いのうんこ【ショートショートnote_13/創作】』に ヒスイが勝手にコラボしたものです。
コジ部長。ありがとうございます(笑)

「ヒスイの100本ノック」。基本的には女子高生・高野澄が主人公なのですが。
今回お題が「半笑いのうんこ」だと知った瞬間、澄(姪)がすごい勢いで

「ヒスイちゃん、あたし、うんこは嫌だからねっ!!」
といったので。あえなく「私」としました。

が。
読者の皆様におかれましては。
ぜひ脳内で「あー。澄ちゃんね。でっかいウンコだったのね」と変換してお読みください(笑)

なお、次回の100本ノックは、ちゃんとした澄の短編をお出しする予定です。
年明けになりそうです。

ではまた。明日の夜、2021年最後のヒスイ日記でお会いしましょう!!

#NN師匠の企画
#ヒスイの鍛錬100本ノック

100本ノック お題
ゴーヤ←岐阜県関市←日向ぼっこ←薬草←関市←ワイン←ジェンダーバイアス←サウナ←温熱ソックス←昔話

いいなと思ったら応援しよう!

ヒスイ~強運女子・小粋でポップな恋愛小説家
ヒスイをサポートしよう、と思ってくださってありがとうございます。 サポートしていただいたご支援は、そのままnoteでの作品購入やサポートにまわします。 ヒスイに愛と支援をくださるなら。純粋に。うれしい💛