『ママのピアスと朝月夜』ヒスイの秋俳句+ほんわか410字⑨
「出張に出る夫送りて朝月夜」
(しゅっちょうにでるつまおくりてあさづきよ)
季語:朝月夜
『ママのピアスと朝月夜』
久しぶりに実家で眠った。
朝六時半、車が戻ってくる音が聞こえた――こんな時間に?
寝ぼけてリビングへ行くと、姉が入ってきた。
「あら、おはよう翠(みどり)」
「どこ行ってたの?」
「今日はパパが出張でね。始発の新幹線に乗るから、
駅まで送ってきたの」
「……へえ」
姉はそのままキッチンに入る。姪の弁当と朝食の支度だ。
ぼんやりと見ていて、驚いた。
「おねえちゃん。ピアス穴あけた?」
「そうよ」
「なんで今更?」
姉は手を止めずに答えた。
「先週、あんたと澄(すみ)はお揃いのピアスを買ったでしょ」
「うん」
「うらやましかったのよ――ねえ、あの子を起こしてきて」
階段を上がりながら、つい笑ってしまった。
優等生の姉は40歳を過ぎて初めて、ピアス穴をあけた。びっくりだ。
いろんな面で、あたしは姉に絶対に追いつけない。
でも、それでいいんだ。だって姉は姉で、あたしは妹だから。
姪の部屋を開けて叫んだ。
「澄! 今度の休み、ママと3人でピアスを買いに行こう!」
【了】(改行含まず410字)
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