選択の先に待つものとは?/『飢えた子羊』長文感想
ネタバレ注意⚠
(未プレイの方はブラウザバック推奨)
『飢えた子羊』
――善人か、悪人か。
――生か、死か。
「自分で『選択』することができるのよ。」
本作について
明朝(中国)末期に起こった飢餓を題材にしたノベルゲーム。
今とは時代も国もあまりに違うその舞台。
干ばつ・洪水・虫害と災害が頻発するなか、ごく一部の"人間"だけが悠々自適に豪遊している地獄のような乱世。
"羊"や"狼"がどのように生き、苦しみ、死に至るのかがリアルに描かれていました。
平和な現代の世を生きる私には想像してもしきれないような悲惨な現実。
史実に基づき制作された本作は、物語としての面白さと理解しやすさのバランスが良くできており、おかげでこれまでにない貴重な物語体験をさせていただきました。
初プレイから展開に驚いたり感動しただけでなく、私の場合は再走しながら(音楽聴きながら・CGを見ながら)キャラの抱える気持ちや思いを想像したり読み込んで理解することで、じわじわと涙が出たり強く心動かされたりするタイプの作品でしたね。余韻が永遠に抜けません。助けて。
高評価ポイント
☆残酷でリアルな描写と没入感
「彼の肉塊は馬の動きに合わせて上下に飛び跳ね、うれしそうに俺と一緒に町を出た。」
生きているうちにこんな軽やかで狂気的な文章を拝むことになるとは思いもしなかった。
襲って、刺して、殺す。殺される。
人肉を切断し、茹で、そして食らう。
そこら中に転がる死体、飛び散った血液、そこに集うアリや飛び回るハエ、うじゃうじゃうねうねと動く蛆虫、吐き気を催す悪臭。
そして‥‥‥飢餓。
実際にどうかはわからない。
辛すぎて想像もしたくない。
そんなとてもリアルな迫力ある描写で溢れていました。
おかげで何度も吐きそうに‥‥‥笑
高品質な音楽やグラフィック、SE(効果音・環境音)と合わせて没入感が凄かったです。
さらには震えて動くテキスト、耳鳴りのようにキーンと脳に響く音、視界が霞む(ぼやける)などといった細かい演出の工夫も非常に素晴らしかった。
☆伏線と真実
読み返すことで至る所に伏線が張られていることがわかりました。
一見関係なさそうな影絵劇に注目すると、たとえば穂が良をモデルに武松を上手に描いた(お手本があれば似せて描くことができる)のは終盤の似顔絵への伏線だし、TRUEエンド”共に死す”で豚妖を殺すきっかけを作るために必要な要素でした。
さらに本作の冒頭をよく思い出してみると良が人を殺して埋めるシーンから始まっていましたが、その殺された人が穂の父だったのです‥‥‥。
ということでこの物語の裏にあった真実とは
穂の父を殺したのが良であり、
穂の目的が父の仇である良に復讐すること
そんな本心が垣間見えるときの彼女はいつも以上に魅力的に映りました。
復讐を果たすために噓と真実を混ぜて接している穂ですが、その境目はわかりづらく。
ただ真実は死の直前にこそ明確に現れます。
陝州の宿の風呂場で、舌に首を絞められているときの穂は良に助けを求めました。
死への恐怖。生への渇望。
それだけではないはず。
これまでのことが走馬灯のようによみがえってきていたでしょう。
涙を浮かべながら懇願する瞳に映るのは……
”父の仇である悪人、良”だけではない。
これまでしばらく共に過ごしてきた時間から”善人としての良”のことも心のどこかで期待していた。少しだけ信じはじめていた。
この人なら助けてくれるかもしれない、そんなささやかな希望を抱いていた……のかもしれません。
穂を信じない選択では、彼女はそのまま‥‥‥。
静かに瞳の光が薄れていくところを見ながら、なんともやるせない気持ちになりました。
結局穂は死んでおらず気絶しただけで済んだようですが、良は翌朝舌の雇い人に殺されてしまいます(BADエンド: 殺しの狼)。
そのとき"穂は自分を助けてくれなかった良の結末がわかっていて、復讐のためにあえて気絶したままの振りをしていた"のかなと。
これに気がついたときはゾクッとしました。
あーヤバいヤバい。
このように真相を知ったうえで各シーンを見返すと見えなかった事実がたくさん見えるようになりました。
穂が内心ではいったいどんなことを思い考えていたのだろうと想像が膨らみ、張り裂けるような胸の痛みに何度も襲われ、いつの間にか頬が涙に濡れていました。
☆マルチエンディング~『選択』の重さ~
ノベルゲームには選択肢が不要である。
私は日頃からそう考えているのですが、
よくよくその理由を考えてみたならばきっと選択肢の必要性を感じないからなんだろうと思います。
その選択肢で何がどれだけ変わるのか非常にわかりづらいし、ただただ面倒なだけ。
読む時の集中力を削ぐ要因でしかなかった。
しかし、本作の選択肢は一つ一つが重くて非常に重要なものでした。
ここはひとつ”選択”を誤れば死ぬ世界なんだと痛感することとなりました。
その一つ一つが穂の良に対する好感度(信用度)を変化させ、結末を大きく変えます。
良は善人か、悪人か。
その結末は生か、死か。
それを見極め、決めるのは穂。
特に心に残ったENDは以下の3つです。
・応報(BAD)
子羊たちを売り飛ばす選択による結末。
早朝に大金を受け取って急いで出発し、その理由を言わない良への急速に高まった不信感がトリガーとなったのでしょう。
……え?どういうこと?とすごく驚きました。
でも納得感もどこかにあって。
涙を流しながら小刀を首に差し込む穂と、結果的に抱きしめるように腕を穂の腰に回した良。
私は未だにこの最期を見たときの感情を上手く言葉にすることができません。
真実はいったいどこにあるのか。
ここから本当の意味でこの作品を面白く感じ始めました。
ちなみにこの日は”穂の誕生日”(農暦5月6日/誕生花はクチナシ)であり、ちょうど成人となって”お嫁さんにいけるようになった日”。
そして何の因果か、良を苦しめ続ける”天啓の大爆発が起こった日(6年前)”でもあります。
まさに生死を決める運命の日というわけですね。
意地が悪い‥‥‥(誉め言葉)。
・餓死(NORMAL)
鳶の宿屋に残される子供たちと別れてからも穂は悩み続けていました。たくさんの葛藤の末、もはや自ら良に手を下すことができない自分がいることに気づきます。
ここまでの選択による好感度で変わるのが4つのノーマルエンド。
餓死エンドは好感度が最大のときに見ることができ、TRUEエンドへの導入としての役割を持っていました。
本人の口から直接これまで隠されていた真実が打ち明けられるこのシーンに、その名演技に感情移入させられ、私の心は引き裂かれました。
好感度が一つ下の見えずENDでは穂は自死してしまいますが、それを思い留まったのがこの餓死END。
そして思い留まったのは何かしら未練があるからだろうと推測できます。
ここでの穂による告白は、良に自分のこと・これまでのことを知ってもらいたいという気持ちが込められており、そしてまだ良と共に生きていたいという自分でも気がついていない気持ちがもしかしたらそこにはあったのかもしれませんね。
もともと復讐対象として寝ても起きてもずっと想い続けてきた良という人間が、家族をすべて亡くして一人で生きてきたさみしさを埋めてくれる存在になりつつあったから。家族以外で一番親しくなった人で、成人になって贈り物をくれた特別な人だから。TRUEエンド(ともに生きる)に分岐して別れた後の穂の涙などからも察せられます。
このときの穂の内心はそりゃあもうぐちゃぐちゃで。
良を殺せなくなって生きる意味・理由を失ってしまい。
復讐心以外の別の想いも抱えていたことでしょう。
でも子供らしく引っ込みがつかなくなり、お前を絶対に許さない、(できることなら)殺してやりたいと強く思っているという体裁を保つしかない状態にありました。
対して良はここでようやく穂という人間のことを理解できます。
穂の言い分はもっともだし、だからこそならば(罪悪感で苦しみながら生きていくのは辛いし)殺されてもいいかと本気で思います。
このとき良も穂と同じく生きる意味を失ってしまったんです。
死を覚悟していたものの、殺せないと言われた良。
この落ち着いた状態で死を意識しているうちに、良の中に眠っていた正義の気持ち、侠客になりたいと夢見ていたときの熱い気持ちが沸き上がってきました。
これこそが被っていた狼の皮を完全に脱ぎ捨て、真の意味で良が善人(侠客)となった瞬間です。
もうどうしたらいいのかわからなくて苦しんでいる穂に宣言します。
”多くの民が餓死してしまうこの世の元凶を互いの共通の敵として認識する”という流れになるのがこの餓死ENDでした。
はじめは唐突な展開のように感じていた(翻訳の影響が大きい気がする)のですが、いろいろと考えているうちにそんなことはないなと思うようになりましたね。
良はたとえ話を逸らそうとするわけでもなければ、責任逃れしようとしているわけでもなく。
穂の言うことも間違いではないから自分は殺されるべきだと思うけれど、どうせならば元凶も殺した方が良いだろう!と、死を意識(覚悟)することで元から備わっていた正義感が表面に出てきただけ。まぁそうやって興奮状態になってしまったからこそ、結果的に空気が読めてなさすぎて急展開に感じちゃったのかなと(笑)。でもきっとこれが本来の良なんだよな。
逃げろENDの展開はある意味では伏線とも言え、良が迫る死を意識し始めると正義感が表れて侠客らしく死んでやろうと思うようになるというのはごく自然な流れなのです。
穂視点の話をすると、何度も言うようですが殺せなくなっている時点でだいぶ良に絆されています。これじゃ家族に顔向けできない!お前が嫌い!お前が悪いんだ!などと言ってますが、今やただの建前でしかない。本音は言葉じゃなくて行動にこそ現れるものです。
穂の葛藤の中身がどうなってるかなんて説明するのは野暮であるがゆえに触れられておらず、だからそこを初見で正確に読み取れないこちらは混乱してしまうんですよね(笑)
良に絆されているとはいえ生きる意味を見出せなくなってるというのも事実で、どうすればいいのかわからず途方に暮れています。
そのため最後は良からの提案を納得して(?)そのまま受け入れることで、2つの未来に絞られることとなりました。
あくまでこれは私の考え。
ヘタクソな説明ですが伝わっていればいいなと思います。
‥‥‥ちなみに。
以上を踏まえると、
最後の提案(選択肢)により分岐する2つのTRUEエンドをこう解釈できるかなと。
生きる理由を新たに見出し、別れるときはまだ気がついていなかった互いの想いを伝えあうことができた”ともに生きる”エンド。
秘められた想いを互いに薄々感じとっていながらもそれを伝えることなく最期を迎える”ともに死す”エンド。
前者がハッピーエンドなら、
後者はビターエンドと言えるでしょう。
どちらが好きですか?
私は‥‥‥
・ともに死す(TRUE)
この乱世においては、
死こそ救いなのかもしれない。
良はこれからも大きな罪悪感に苦しみ続けるか、死かを選ばなければならず。
穂は復讐をやり遂げたなら、生きる意味(目的)を失ってしまう。
豚妖を殺した後、死を待つだけの二人。
その前後含め短い間のどのやりとりを見ても、互いに素を出し心から信頼し合っているように感じられました。
本編中でこのときが一番心が通じ合っていたように感じます。
良は包囲網から飛んでくる大量の弓矢から穂を咄嗟にかばい、穂は最期に良に抱きつく。わずかに残る暖かさを求めて‥‥‥。
きっとこれこそが一番美しい結末でした。
来世は平和な世で二人そろって幸せに生きてほしい。
そう祈るばかりです。
もう一つのTRUEエンド(ともに生きる)は史実に基づいており、すごく救われた気持ちになって嬉しいのだけれど都合が良すぎるというか上手くいきすぎてるのが逆に不自然というかなんだかなぁって思いました。
もちろん駄目とか嫌いってわけではありませんが。もっももももちろん穂の見た目が完全に大人になってしまっていたからとか、いやそもそも全く穂に見えないからっていう理由では決してないですよ?……うん。
”ともに生きる”エンドへの分岐直後の、もしかしたらあったかもしれない平和な世で2人が出逢うという良の幸せな想像、そして微笑ましい最後の2人のやりとりを先に見ることで、”ともに死す”エンドがより儚く美しく輝いて見えました。
○メッセージ性について
飢餓を強く押し出していた本作ですが、そこまで深く考える必要はない気がします。
飢餓の世は
死を選ぶ方が幸せなのかもしれない。
と、そう思ってしまうくらいに悲惨なものだった。
平和な世に生きる私たちにそのような過去の事実を知ってもらう。
そして、飢餓に関する(人それぞれ違う)何かを物語を通して感じとってもらうことができればよかったのでしょう。
私の感想としましては一言。
飢餓で苦しむ必要のない世界で生きられる私は幸せものだなぁ。
好きなシーン
基本重苦しく進むお話の中、砂漠のオアシスのようなシーンもちゃんとありました。
本編同様ちょっと読み疲れてきたと思うので気分転換にさらっと紹介します。
☆ぞんざいな扱い(?)
閿郷の宿屋、その風呂場にて。
「待ってろ!!!」
・・・・・・
「待ってろ!!!」
・・・・・・
「待ってろ!!!」
‥‥‥と、穂に言いくるめられ何度もこき使われてて笑いました。
その後↓
☆か わ い い (あ ざ と い)
愛嬌が良い!
これがまた、
演技も含んでいるのが(・∀・)イイネ!!
完全に無防備な状態での会話はいつも以上に踏み込んだ内容でした。
ここでの裸の付き合いで良の過去を知ることができ、穂にとって大きなものになったんじゃないかなと思います。
にしても、この死と隣り合わせな世界でロリを見ても欲情することは穂ちゃんかわいいねペロペロさすがにないんだろうな。きっと。
後に本当は13歳であった(馬車の荷台の中で靴をプレゼントした日に14歳になる)と判明しますが、飢えで痩せこけっているので体つきの見た目は10歳くらいらしいですし。
そういう問題ではない?あ、そう‥‥‥胸から腰回りの素肌を見れてないのでCG追加(場合によっては18禁)を求めます。
また、子供たちの中でのお姉ちゃん感も良いですよね。
実際に穂と他の子らは5歳くらいは離れているわけなのでそりゃそうなのだが。
(特に精神面の差はもっと大きいはず)
良は穂のことを”子どもの幼稚さと大人の成熟を兼ね備えている”と分析していましたがまさにその通りで。
良の前で時折見せる幼さとのギャップがまた私を強く惹きつけて離さなかった。
今もなお囚われ続けています。
☆惜しまれる別れ
影絵劇をしたり。
料理をしたり。
そうやってお互いの距離がどんどん近づき、情を移してしまっていた中での別れ。
今やもうかなり良に懐いているのがわかっているのでより辛さが増します。
子どもたちが渡された贈り物を持って良と穂を見送るシーンの切なさに、心が締め付けられるような痛みとそれを優しく包みこむような暖かさを感じました。なんでだろう。
もう二度と会えないかもしれない。
去っていく良のだんだん小さくなっていく背中は、残される彼女たちの目にどのように映っていたのでしょうね。
良と穂の生き様について
☆穂
これは2人の最初の出逢い。
良は穂のことを”猫”だと評していました。
まるでからかうかのように嘘と真実(本音)が見え隠れし、気分屋であるかのように突然現れたりいなくなったりする。
まさに”猫”です。
ただ猫は猫でも家族をすべて亡くして一匹で旅している”野良の子猫”であり、家族の仇を取ることを生きる意味(目的)とすることで生き延びてきました。
‥‥‥そして、そんな穂のことで頭の中がいっぱいになっている私がいました。
穂の態度や言葉の全てを、決してそのままの意味で受け取ってはいけない。
それはTRUEエンドの最期の最後までそうで。
だからつい気持ちを想像しながら嘘なのか本当なのかを考えてしまっていました。
いや、そんなどちらかだなんてそう単純な話だけではないだろう。
それはきっと、
ときに嘘でも本当でもあった。
事あるごとに良と手を繋ぐ穂。
幼いふりをしてお手手を繋ぐ可愛らしさと言ったらもう‥‥‥。
最初は良を騙すためだったかもしれないけれど、だんだん別の気持ちがその行動に含まれていってるだろうなとか思うとほんっっとにたまりません!!
これほど一人のキャラに思いを馳せたのは初めてかもしれないです。
彼女の言葉にできないような複雑な感情の移り変わり、葛藤を考えると辛くて辛くて。
ギュッと抱きしめてあげたい。心から。
☆良
”良”の夢は正義の味方になることだった。
好きで見ていた劇によく出てくる、
弱きを助け、強きを挫く侠客に。
その夢を諦めて盗賊になった理由は言うまでもない。
”侠客は盛世に生きて乱世に死し、悪人は乱世に生きて盛世に死す”
この乱世では心優しい善人は死に、身勝手な悪人が生き延びるのだから。
この世だからしょうがない、俺は羊じゃなくて狼なんだと言い聞かせたり。
これは”いいこと”なんだと自分を誤魔化す。
そうやって生き延びてきた良ですが、やはりその心根(本質)は善人のものなんですよね。
俺には俺のやり方があり、それに背くようなことはしないと。
例えば、女・子供は絶対に殺さない。
生きるためとはいえ殺すことへの罪悪感は捨てきれずに、最初の頃は殺した人の遺物を手元に置いていたくらいです(フラグ)。
裸を見ないよう目を背けたり、美味しくない料理を美味しいと言う気遣いだってできる。
相手がどう感じたり思っているのかをちゃんと考えられる、配慮ができる男なんです。
そして甘ちゃん。どこか抜けていて。
影絵劇の人形を作るため二人きりなのに刃物(小刀)を穂に握らせたりしますし‥‥‥(笑)
乱世において、
善行とは自分を犠牲にすること。
良は狼の皮を被りながらも自分の中の良心との葛藤に苦しむ善人でした。
☆2人の関係
孤独で似た者同士な一匹狼と野良の子猫。
大切な親猫を殺した狼に復讐したかった。
でもその狼は、狼のように振舞うことで必死に生き抜こうとしている善人でした。
悪人なら何も気にせず噛み殺せたのに。
共に過ごしていく中で互いの過去を知り、
そのたびに同情と想いを重ねていく。
そうしていつの間にか、その関係性は予想もしないものへと変化していきました。
良だけが知る穂の本名は”満穂”。
これはいわゆる真名(諱)です。
家族などの血縁の近い、つまり”大切な人のみが知ることができる”真の名前。
(※諸説あり)
その特別感。
2人の間に生まれた見えない絆。
重ねられてきた嘘は真実となり、
2人の幸せな道へと続きますように。
(TRUEエンドを思い浮かべながら)
惜しいなと思った点
ほぼ文句なしに良かったのですが、
やはり日本語への翻訳精度がなぁ。
致命的というわけではなく話の流れ、意味を理解する分には問題ないのですが、日本人にしかわからないであろう不自然に感じる翻訳(例えば教科書的な硬い言い回し)が多くてすごく目につきました。
日本語って難しいですよね。
些細な事かもしれませんが、これさえちゃんとしていればもっと大きく心が揺さぶられただろうに‥‥‥と思う場面ばかりで。
改善されるといいな。
(本記事で高評価ポイントとして挙げてるように、テキスト面は翻訳がおかしいと思うところ以外めちゃくちゃ良い。丁寧で細かい描写がすごく好きです。中国語の原文が素晴らしいからこそなんでしょう。)
総評(まとめ)
シナリオ・音楽・グラフィック、
それら全ての完成度が非常に高い。
特にシナリオの無駄のなさに美しさを感じました。
また穂の嘘と本音が入り混じる態度や言葉。
こういった”含み”がある作品は
”深み”があって良いですよね。
人の数だけ解釈(正解)があって、
ずっと楽しめる。楽しみすぎて胃が痛い‥‥‥。
そしてこの舞台だからこその選択の重み。
ひしひしと味わわせてもらいました。
この動画は残念ながら本編で流れませんが、穂のCVを担当しているhanserさんが歌っています。穂の心情を表しているようですごく好きです。映像(編集)も綺麗。変わらず翻訳は雑だが。
過去のプレイ作品を振り返って。
幼女~中学生くらいの年の子が辛い境遇のために正常でない精神的な成長を遂げ、でもその奥にはちゃんと子供らしさが残っていて‥‥‥ひたむきに幸せを求める話(伝われ!!!笑)に私は弱いみたいです。
あとそういう子が内心いろいろ抱えていて、最後に明かされるパターンとか。
本作はどっちの要素もあったので、そりゃ刺さるわ。
短編ノベルゲームには限界があると思っていてほとんど期待していなかったのですが、『飢えた子羊』は心からやって良かったなと思えた数少ない作品の一つです。
長編ノベルゲームに匹敵するくらい(もしくはそれ以上に)心に残りました。
10時間以内でプレイできるノベルゲームの中で一番好きな作品となりました。
「Meet」をはじめとしたBGMのリピートも確定だな。
(聴きながら執筆してる。steamで無料でダウンロードできます)
出逢ってくれてありがとう。
ここまで読んでくださり
ありがとうございました!!!
おまけ
(本作の基となった中国の史実に関して)
・天啓の大爆発
・豚妖
・李闖将
天啓の大爆発に巻き込まれて父を失い、生きるため盗賊になるしかなかった良や、飢餓が原因で全滅した農家の娘である穂。
『飢えた子羊』の良さはこれら史実があくまでもベースにあるだけで、歴史として詳しく残っていないであろう”飢餓で苦しむ一般の民”にスポットライトをあてて描かれている(歴史的に重要な人物が主役ではない)ことかなと思います。
あとがき
初めて”本格的な感想”を書いてみました。
ちょうど他の長編作品の感想も書いているのですがなかなか上手く書けずに困っていたので、本を読んで書き方を勉強してみました。
その本に書いてあったのが、
”自分の感想を書く前に他人の感想を読まないように”
なぜなら他の人の感じたことや考えたことに無意識に引っ張られてしまうから。
いずれ飢えた子羊の感想を書きたいなと思っていたのですが、これじゃあ書くまでは他の方の感想が読めなくなってしまうぞ!となりまして。
それで思い立って書き始めることに(笑)
本格的な感想を書いてみた感想としては、
すごく楽しい!
作品への理解が深まると同時にモヤモヤが解消されていく感覚がありました。
ただ自分の感じたことや考えたことを言語化することは大変で、慣れないことなのですごく頭を使いました。
プレイした作品一つ一つに対して感想を書くのはさすがに私にゃ無理そうだ‥‥‥(笑)
モチベを保てるくらいには心動かされて好きな作品だったからか、なんとか書き終えられてホッとしています。
私の力不足で書きたくても書けなかったことがまだまだまだまだたくさんある(正直いくらでも掘り下げられそう)ので、もしかしたらいつか「飢えた子羊」感想記事第二弾を執筆することになるかもしれません(笑)。というか情報量が多すぎるかつ頭の中で充分に整理されてないのでわかりづらくなっていた気がしますし、今後は1つ1つのお題について改めてしっかりとした考察をしていきたい。今のところは書く気満々だったりして
今回は短編だからこそ(これでも)ある程度はまとめられましたが、本命の長編作品の感想は変わらず苦戦中。
たぶん上手くいかないけれど(笑)、とにかく書き終えることが大事だと思うので頑張ってみます。
という長々とした独り言でした!
(改めて最後まで読んでくださりありがとうございました!)