ボードゲーム 「SCYTHE サイズ 大鎌戦役」の元ネタについて
はじめに
今日は友人たちとボドゲ会をしてきました。
その会で「SCYTHE サイズ 大鎌戦役」をプレイしているところを見ました。
大学生の時にやったなあ、と懐かしくなり調べてみると、1920年代頃の欧州情勢のオマージュであることに気づきました。これはびっくり。
ということで、元ネタについて調べてみました。参考文献は高校世界史教科書とWikipediaです。
国の一覧については以下のサイトを参考にさせていただきました。
なお、このボドゲは自分で所持していないため写真・画像なしの説明になります。
ラスヴィエト連邦
Russia+Sovietでしょうか。地域としてはロシアあたり、で合っているはずです。
テーマカラーも赤ですね(共産主義・社会主義のテーマカラーは赤です。元ネタと思われるソヴィエト連邦の国旗も赤です)。
説明書にも、西側諸国と対抗する旨が書いてあります。これも、ソ連=東側をイメージしているのでしょう。
オルガ・ロマノヴァ
オルガはスラヴ系(ロシアや東欧諸国に多い民族)の女性によくいる名前です。
ラテン文字表記ではOlga。オリガとも読みます。名前の由来までは分かりませんでした……。今後の研究課題にします。
追記(2023.7.19)
古ノルド語(北欧諸語の祖先)の「heilagr(聖なる)」から派生した名前のようです。
ロマノヴァはロマノフの女性形です。英語以外のヨーロッパの言語は男性形・女性形(・中性系)で語形が変わりがちです。
追記(2023.7.19)
ロマノフ自体の由来は、男性名「ロマン」から派生した名前です。「ロマン」は、ラテン語の「Rōmānus(ローマ人)」から派生した名前です。
ロマンがある、という時の「ロマン」も「ローマ」から派生した言葉なので、似た語源を持つ言葉になりますね。
有名どころだと、革命勢力に監禁・処刑されてしまったことで有名なロマノフ朝ニコライ2世の娘アナスタシアのフルネームに入っています。
彼女の名前は「アナスタシア・ニコラエヴナ・ロマノヴァ」。ロマノフ家の人だから名前にロマノフを入れて、それを女性形に変えているんですね。
チャンガ
シベリアタイガーです。アムールトラの方が一般的な名前ですね。
チャンガの名前の由来は出てきませんでした……。
ポーラニア共和国
ポーランド+ルーマニアあたりでしょうか?ポーランドは確定だと思います(理由は後述)。東欧のどこかであることは間違いないでしょう。
説明書には、独立と統一を固める旨が書いてあります。東欧は常に西欧とロシアに右往左往される歴史をたどっているので、そのあたりを踏まえているのではないのでしょうか。
アンナ
ヨーロッパによくある女性の名前です。
アンナは聖母マリアの母親の名前であることから、キリスト教圏で広く使われている名前です。
ヴォイテク
なんと元ネタがありました!!びっくりしました。
第二次世界大戦中にポーランド軍に所属した熊がいたそうです!このことから、ポーラニア共和国の元ネタの一つはポーランドで間違いないでしょう。
イランあたりで親を亡くして独りでいるところをポーランド軍に引き取られ、育てられたそうです。
名前はポーランドでよく使われている男性の名前ヴォイチェフの愛称から。
北方王国
ヴァイキングってそのまま言っているので、ヴァイキングが活躍した主に北欧(ノルウェー、スウェーデン、フィンランド、デンマークあたり)でしょうか。
説明書に書いてある油田とは、北海油田のことでしょうか?ノルウェーが北海油田開発に乗り出したのは2000年代に入ってからのことですが……。
ビョルン
北欧によくいる男性の名前です。語源は「熊」という意味だそうです。
今でもスウェーデンやドイツ、ノルウェーなどで使われている名前です。
個人的には、ビョルンというと『ベニスに死す』の美少年役を演じたビョルン・ヨーハン・アンドレセンが浮かびます。彼を知ったのは『ミッドサマー』ですが。『ミッドサマー』で彼がどんな役を演じたかは……実際に見てみてください。精神に余裕が無いときは絶対に見ないでくださいね。
モクス
ジャコウウシです。カナダやデンマーク(グリーンランド)で生息しています。
名前の由来は分かりませんでした……。
ザクセン帝国
ザクセンという州が実際にドイツにあります。
ドイツに統一される前は一つの王国でした。もしもプロイセンではなくザクセンがドイツ統一を成し遂げていたら、ザクセン帝国は実在したかもしれませんね(歴史にifはないとかは無しで)。
かつては東ドイツに属していました。この時代のザクセン州で生まれたのが、ジャイアンの声優で有名な木村昴さんです。
ギュンター・フォン・デュースブルク
名前がめっちゃドイツっぽい~。ドイツっぽい名前ってなんとなく分かりやすいイメージがあります。一つずつ見ていきましょう。
ギュンター…ドイツ人の男性名にも姓にも使われます。英語読みだと「Gunter(ガンター)」になります。
由来をたどると、昔のドイツ語で「戦う」と「軍団」にあたる言葉を組み合わせた名前らしいです。
フォン…ドイツ人の貴族やユンカーの姓のはじめに称号として使われます。
「個人名 + 爵位・封号 + フォン(ツー) + 姓」と名乗るそうです。
つまり、彼はデュースブルク家のギュンター君、ということになるのでしょう。
「フォン」と付く名前だと、ゲームオタクの私はすぐに『テイルズオブジアビス』の主人公が浮かびます。彼の名前は「ルーク・フォン・ファブレ」。さっきのルールとゲーム内設定を組み合わせると、ファブレ公爵家のルーク君、ということになります。
デュースブルク…名前では出てきませんでした。現実では、ルール川とライン川の合流地点にある工業都市がデュースブルクという名前になります。この地は古代から現代まで交易の要所となっています。
ナハト&ターク
ナハト…ドイツ語で「夜」を意味します。「Good night!」は「Gute Nacht!」です。
私はナハトという言葉を、ナチスによるユダヤ人迫害事件「水晶の夜(Kristallnacht)」で知りました。名前だけはかっこいいですが、実際はユダヤ人の店舗を破壊して散ったガラスがクリスタルみたいということが由来です。胸くそ悪……。
ターク…ドイツ語で「昼」を意味します。ナハトの対になりますね。「Guten Tag(グーテンターク)」のタークです。
クリミア・ハン国
そのまま、存在した国の名前を使っています。教科書ではクリム・ハン国と表記されがちです。「クリミア」は英語圏での呼び方、「クリム」は現地での呼び方みたいです。研究中です……。
場所はクリミア半島、つまり今のウクライナやロシアのあたりですが、この国はモンゴル系の国です。辿ればチンギス・ハンに辿り着く国です。チンギス・ハンの子孫って合わせるとかなり広大な範囲を治めているんですよね。
説明書に書いてある「タタール族」はモンゴル系の民族です。日本では「韃靼」とも呼びます。ちなみに私はJR東日本の駅構内にある自販機で売っている韃靼蕎麦茶が好きです(隙あらば自分語り)。
宗教はイスラームになります。
現実のクリミア・ハン国は1783年にロシアに併合されてしまいます。SCYTHEの時代は1920年代なので、現実の時間軸では存在しない国になります。
ゼーラ
今ひとつ由来が出てきませんでした……。オスマン帝国やイスラームの影響下にあった国の女性名のようです。現実のクリミア・ハン国もイスラームの国なので、ゼーラさんは存在していたかもしれませんね。
カー
鷲であることは分かりますが、名前の由来が分かりませんでした……。
アルビオン氏族
アルビオンはイギリス(ブリテン島)の古名になります。よって、元ネタはイギリスになるのでしょう。
アルビオンそのものの由来はラテン語albus(白い)から。崖の白亜層・石灰岩地層の白さからこう呼ばれたそうです。
albusというと、ハリー・ポッター世代の私はダンブルドアのファーストネームだなあと思い出しました。彼はなぜ「白」なのでしょう……?正義のイメージの白か、彼の髭の色なのか。
コナー
イギリスやイギリス人が入植した地域(アメリカ・カナダ・オーストラリアなど)に多い男性名・姓です。古英語の「知る」から来ているそうです。
マックス
人間の名前としてヨーロッパによくいる名前です。そのまま、「マキシマム」の短縮形から来ています。
戸川幕府
江戸幕府でしょう。川は江戸川から……?
日本なので省略でいいですか……?
おわりに
大学時代にプレイしたSCYTHEでしたが、世界史の知識が付いた今改めて調べてみるとたくさんの発見がありました。
特に名前は地域性が出るのでとても面白いです。私はスポーツを見るときによく選手の名前を見て地域性を感じて楽しんでいます。
ボドゲは世界史の知識が頭に入っていると背景知識を知ってさらに楽しめることがよく分かりました。今後も、世界史に関連するボドゲを研究していきたいです!!
みんな、世界史沼に入ろう!