トラベルボイスで学ぶ観光経営学Vol.5「愛知県の休み方改革「県民の日学校ホリデ-」、名鉄が子どもの旅行割引、地域の魅力や歴史を学ぶ契機に」その1
「有給」っていつ知りました?
皆さんは有給休暇の存在っていつごろ知りましたか?
我が家は自営業だったので有給なる概念とは無縁の家だったもんで、親は土日が休みという概念がなかったのでまったく知らないまま育ちました。
そういえば、小学生のころ、映画三国志の特別試写会チケットを手に入れた母親が「学校休んで見に行こう」と言ってくれたことがあります。いま思うとこれは有給みたいなもんですが、当時三国志に完全に心を奪われており、全てのお年玉を横山光輝三国志にぶちこんで貧困にあえぐ息子を喜ばそうとしてくれたんでしょう。
学校をさぼって母と2人で映画を見に行ったのは、何か特別な感じがしてまして、今でもよく覚えています。平日に親と出かけるなんて、なんか不思議な感じがしたものです。
そんな私が有給を知ったのは大学生のとき。バイト先の学習塾で有給制度があったんですね。自営の家に生まれた感覚として「えっ、なんで休んだのにお金もらえるの?凄すぎじゃん!」と思ったものです。と、共にこうも思いました「なんで学校は有給がなかったんだろう」
ただ、最近はどうも色々と変化が起こっているようです。
本日はそんなニュースです。
ということで、今回取り上げるトラベルボイスのニュースはこちらです。
ニュースの概要
ニュースの概要について見てみましょう。
今回のニュースですが、ぱっと見ると良く見るようなキャンペーンのように思えます。ですが、これ愛知でやっているとなると話は変わります。非常に多くのトピックを含む記事なので、2回に分けて考えてみたいと思います。
観光経営学を学ぶための背景
「ラーケーション」
新しい用語として、「ラーケーション」という言葉が出てきました。聞きなれない言葉ですね。別のニュース記事によると以下のような意味だそうです。
ざくっとまとめると、愛知県が独自に実施している学生向け有給みたいな制度です(ただ、学習活動なので遊んでいいよということではない点は少し違います)この制度、いわゆる働き方改革の一環で出てきているようなのですが、観光経営という視点で見ると実に興味深いものがあります。なぜなら、この施策は複数の効果を持つ施策だからです。
今回の事例で学ぶ観光経営概念「観光の分散化」
この事業でまず観光経営学的に気になるのは観光の分散化でしょう。これは広くはシーズナリティ―概念に含まれるような考え方です。シーズナリティ―については、以前にも下記で別の事例を紹介しています。
ただ、この連載では分かりやすさを優先して次のように言葉を定義します。
「シーズナリティ―」・・季節の影響を受ける観光地が閑散期にも集客をするための取組
「観光の分散化」・・観光活動が集中してしまっている場所や時間を分散化させることで軽減させるための取組
観光の分散化の代表例は最近大きな課題になっているオーバーツーリズムです。京都などの有名観光地に人が集中しすぎるので、別の観光地への誘客や特定の時間に集中させないようにする取組ですね。
ニュースによると愛知県の場合は
と記載されており、平日や閑散期への観光需要のシフトも進めていくとのこと。閑散期についてはシーズナリティ―の考え方ですが、混雑を回避した旅行を促すキャンペーンとありますので、分散化の事例として考えます。
観光の分散化のメリット
ちなみに、観光の分散化は何がいいのでしょうか?混雑を回避するというオーバーツーリズム対策という側面はもちろんありますが、それだけではありません。実は労働問題の側面も持っています。混んでいる時と暇な時があるという落差が激しい仕事、特に観光業は土日に集中するシステムになっています。こうなると、経営者としては正社員ではなくバイトで何とかしたいというインセンティブが働いてしまいます。正社員で雇用したら、月曜から金曜の暇な時間にも費用が発生してしまうからです。しかも土日だけ忙しいのは他も一緒ですから、土日だけ労働人口の奪い合いが起きてしまいます。さらに、非正規の人しか雇えないという産業としては労働者にとって魅力的な状況にはなりにくくなってしまいます。
これがある程度分散化して平日も仕事があるということになれば、正社員として雇用しようとする事業者ができるかもしれません。そして、平日に働きたいという労働力とのマッチングも上手くいきます。
つまり、分散化することで仕事量を平準化できれば正社員雇用に繋がる。そうなれば、労働者にとっては魅力アップ、企業にとっては優秀な人材確保に繋がる、地域にとっては産業強化となるわけです。
こうやって書くと、良い事しかなさそうです。じゃあ、やればいいじゃんとなるわけですが、それができない理由があるから困っているわけです。
では、なぜそれができないのか。そして、それを解決するためにはどうすればいいのか。その突破口になるかもしれないのが、実は今回のニュースなのです。
というわけで、次回に続きます!