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歴史を学ぶ意味なんて、勉強してみないとわからない

社会人になって、

もっと歴史を勉強しておけばよかった

という人、たくさんいますよね。
何事もそうですが、必要にせまられたときか、魅力を感じたときぐらいしか、人間は「知りたい」と思わないものです。ひたすら藤原◯◯が何人も出てこられてはたまらない。魅力を感じない人にとっては、顔も知らないおじさんの名前をただひたすらに覚えさせられているだけですから。


今回は歴史を学ぶ意義について、高校生の方にも社会人の方にも読んでいただけるような内容で書いていきたいと思います。


私は、職業上、歴史を学ぶ意義について常に考えています。正確には、常に考えなければならない立場に立たされています。


歴史は社会人としての「武器」の一つ

 歴史というのは、「あらゆる現象に対して評価を下すための判断材料」だと考えています。特に選挙権が引き下げられた現在は、高校生に歴史的素養があることが絶対不可欠だと思います。日本の近現代史を知らずして、どうやって投票するのでしょう。疑問です。責任ある社会人として、現在あるいは未来に関する判断を迫られる場面は必ずやってくるはずです。その際、歴史的事実をどのように評価し、現在をどのように捉えるのか。そのような「社会を見る目」、「社会について考える力を養うために、「歴史」を勉強するのです。

すると、「『歴史を学ぶ』とはどのようなことなのか?」が分かってきます。
高校生の段階では次のようなことを意識してほしい。
①正確な歴史事項の理解
②体系的な知識の整理
③歴史的思考力を鍛える


①正確な歴史事項の理解

 まずは、事実を正確に捉えることです。高校生の段階では、教科書の記述の中から、「事実」だけを抜き出してそこを正確に捉えることが大切です。教科書の記述には、「事実」以外に「評価」が含まれています。まずは、「事実」を正確に捉える訓練をすることです。
 事実というのは、「いつ、誰が、何をした」というような5W1Hで表されるようなことがらだと考えてください。一方、評価というのは、ある事実や人物などがもつ、歴史的評価や歴史的意義、有力な学説といったものになります。
 例としては、
 事実:推古朝において、603年に冠位十二階が制定された。
 評価:旧来の世襲に基づく氏姓制度から、律令的官僚制へと移行した。
 ということです。


②体系的な知識の整理

 歴史事項は、政治・経済・文化・外交など、社会を構成するあらゆる要素から成り立っています。それぞれの要素と時期に注意して、体系的に歴史事項を整理する必要があります。私はよく授業で、

「タテとヨコを意識しなさい」

と言っていますが、時代・年代という縦軸と、時代ごとのあらゆる要素のつながりという横軸とを常に意識しながら、平面的に歴史事項を整理していくことが必要だと考えています。現代の社会も全く同じです。政治・経済・外交・文化・生活ありとあらゆる要素が複雑に絡まって社会が構成されています。それを時代・年代という縦軸(=時間軸)で繋げていく作業をする。これが2番目のステップです。


③歴史的思考力を鍛える

 事実を把握し、それを体系的に整理できると、やっと、それをもとに思考、判断ができるようになります。歴史的事実からその意味や意義を考えること、複数の歴史的事実をもとにその共通点や相違点を見出すこと、ある歴史的事実の原因や背景を捉えること、あるいは、ある歴史的事実が与えた影響や結果を捉えることなどです。これは①や②と大きく性質のことなる学びです。この段階では、あくまでも歴史的事実に基づきながら、「自分で考える」ことが必要不可欠だからです。
 そして、私が考えるに、歴史の面白さというのは、この③の部分にあると思っています。多くの生徒は、①や②で歴史の勉強をやめてしまう、あるいは、①や②が歴史の勉強だと思っているのではないでしょうか。
 しかし、歴史を学ぶことは、「社会を見る目」と「歴史的思考力」を鍛えることなのです。
 歴史的事実について、自らで評価を下せるようにならなければいけません。あなたが歴史について評価を下したとき、現代の社会がどのように見えるかが規定され、あなたが歴史についての評価を変えたとき、現代の社会の見え方が変わってくるのです。あなたが、現代の社会を見ているその目は、あなたの歴史に対する評価の仕方に影響されているのです。

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