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【服部国際奨学財団×鶴舞中央図書館コラボイベント】 「ビブリオバトル」 開催! 【名古屋市図書館・開館100周年記念】

 ビブリオバトルとは、参加者たちが自分のお気に入りの本を聴衆に紹介するイベント。本好きたちの熱い思いがぶつかり合う場であり、新たな本との出会いを楽しむ場です。今回は、服部国際奨学財団×鶴舞図書館コラボイベント「ビブリオバトル」開催の様子をレポートしたいと思います。

はじめに

 9月24日、名古屋市立鶴舞中央図書館の第一集会室を舞台に12名の服部奨学生が集まり、その中から5名がバトラー(発表者)として本の紹介を行いました。さらに、一般の方々にもご参加いただき、本の魅力に触れる機会を楽しんでいただきました。 

5分間のプレゼン、10分間の質問タイムで「読みたい1冊」を選ぶ

 バトラーたちは順番にスライドの前で、5分間で自分の選んだ本を紹介。本のタイトル、著者、あらすじ、出会ったきっかけ、おすすめポイント、印象的なシーン、などを自由に語ります。

 本の紹介後は、10分間の質疑応答タイムです。参加者たちは本の気になる箇所や、もっと詳しく知りたい点などを自由に質問し、その本についてさらに深く掘り下げていきます。

 そして、5名全員の推し本紹介が終了したところで、参加者による投票です。「一番読みたくなった本」を基準とし、最も多くの票を集めた本をチャンプ本として表彰します。

熱いバトルの幕開け

 トップバッターの樋廻さんが薦める一冊は、『キノの旅 Best SelectionⅡ』時雨沢恵一(著) 

「この本との出逢いは小学4年生の頃。姉が借りてきた本だったのですが、私の方がハマっていきました。
旅人キノたちが様々な国を巡っていくファンタジーです。短編集となっていて、1話あたりが10~15分で読める手軽さもおすすめ。
誰が読んでも楽しめる本ですが、特に思春期の子どもに読んでほしいなと思います。自己や社会に対する不安、アイデンティティの確立などに悩む時期に、寄り添ってくれるような本です。」

第14期服部奨学生・樋廻さん

Q.
 なぜ副題がbeautiful worldなのでしょうか?

A.
 キノたちが旅する国は必ずしも綺麗な国とは限らず、美しいとは言えないこともあります。しかしその中で、美しさを見つけるのがキノの旅であり、beautiful worldなのだと思います。

Q.
 どの国のお話が一番好きですか?

A.
 「嘘つき達の国」のお話が一番好きです。この国では、お互いのためを思って嘘をついている、相手の嘘をわかってその嘘に乗る、というような優しい嘘で溢れています。そんな歪だけれど美しいところに心を打たれました。

 続いて2人目のバトラー、中島さんのお気に入りの本は、『傲慢と善良』辻村深月(著)

「辻村深月さんは、私が特に好きな小説家の一人。その魅力は、物事を描くときの解像度の高さにあると思います。
この本は、恋愛や婚活をテーマとしています。現代の恋愛について考えさせられ、まるで人生のカウンセリングを受けているよう。これまでの人生や判断について、自分のここが傲慢だったな、善良だったな、というように振り返るきっかけになるような一冊です。」

第12期服部奨学生・中島さん

Q.
 物語の中で、どういった部分が傲慢で、どういった部分が善良だと思いましたか?

A.
 例えば主人公たちは、マッチングアプリで出会い婚約します。マッチングアプリではプロフィールの情報だけを見て、相手を物差しで測るような側面があると思い、そのような部分が「傲慢」な部分だと感じました。また、主人公の坂庭真実は、これまで親の言う通りに所謂「良い子」として生きてきました。これは、親から見れば「善良」であると言えると思います。

Q.
 辻村深月さんの作品で、他におすすめの小説はありますか?

A.
 『ツナグ』や『かがみの孤城』をぜひおすすめしたいと思います。  

 3人目のバトラー、深見さんのおすすめは『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』アダム・グランド(著)

「最近、読書をしてみようと思い立ち、アルバイト先の上司におすすめされたのがこの本でした。著者の周りの成功者の経験談が多く紹介されていて、実体験ベースで学べる点が推しポイント。
どうしたら自分も相手も幸せにできるのか?自分を犠牲にすることなく他人を幸せにするには…? ギバーになるための方法を知ることができます。」

第13期服部奨学生・深見さん

Q.
 この本での「ギバー」とはどのような人を指すのでしょうか?

A.
 パイがあったときに、それを半々(50%, 50%)で2人で分けるのではなく、パイを共同して今後どれだけ大きくできるか、を考えるのがギバーです。つまり、目先のことに捉われるのではなく、5年後、10年後を見据えたときに相手のためとなることができる人がギバーであると言えます。   

 続いて竹下さんのおすすめは『質問する、問い返す――主体的に学ぶということ』名古谷隆彦(著)

「この本は、質問の仕方や問い返す方法が書いてある、いわゆるハウツー本ではありません。現代社会を取材してきた新聞記者である名古谷さんの体験や、自身の取材を通して、質問することや問い返す大切さについて読者に教えてくれるのです。」

第15期服部奨学生・竹下さん

Q.
 本の中でどの部分が一番印象に残っていますか?

A.
 新聞記者であったことから、教育現場での取材が詳細で、それをもとにしたエピソードが印象的でした。

 最後にペンハオさんが 『タイミングの科学: 脳は動作をどうコントロールするか』乾信之(著)について紹介。

「人間は自分の身体をコントロールするにはどうすれば良いのでしょうか?スポーツの場面やピアノ演奏などで重要となる「タイミング」とは…?この本では、日常生活でたくさん見られる「タイミング」について、科学的に解説しています。」

第14期服部奨学生・ペンハオさん

Q.
 スポーツにおける「タイミング」の重要性について、具体的な例などはありましたか?

A.
 例えば、ハンドボールなどの競技スポーツでは、フェイント動作がオフェンスにおいて重要です。フェイントは相手のタイミングを外すために行われます。この時、フェイント動作の次の動作を素早く行うことで、相手のバランスが崩れている間に次の動作を行えるので、フェイントの成功率が上がる、とこの本では紹介されています。

チャンプ本決定

ビブリオバトルのクライマックスは、チャンプ本の選定です。
一番多くの票を集めたのは…中島さんのおすすめ本、『傲慢と善良』(辻村 深月)でした!

発表者の中島さんにインタビューしてみました。

──チャンプ本、おめでとうございます!

「選んでいただきありがとうございました。大好きな作家さんの本なので、多くの人に読みたいと思ってもらえたことが嬉しいです!また、本を読んだ人と、内容や考えたことについてぜひ語ってみたいです」

──発表をするうえで工夫したことはありますか?

「5分という限られた時間で、どうすれば本の魅力を伝えるのか、最初はとても難しく感じました。準備せずに人前に立つとあまり上手く話せないので、中学生のビブリオバトル大会の様子をYouTubeを見て、構成や言い回しを軽く考えていきました。また、紹介した本はミステリー的な構成になっているので、ネタバレにならないよう注意しました!」

特別表彰「ライブラリアン賞」

特別企画として「ライブラリアン賞」の表彰も行いました。鶴舞図書館の館長・司書の方々にご協力いただき、専門家の視点から選出していただきました。

見事、ライブラリアン賞に輝いたのは…
ペンハオさんおすすめの『タイミングの科学』(乾信之)でした!

ペンハオさんの喜びの声をご紹介します。

 司書賞に選んでいただき、ありがとうございます。正直なところ、他の奨学生が紹介した本もかなり面白くて、自分が選ばれるなんて、とてもびっくりしました。
 やっぱり認めていただけることは、とても嬉しいです。今回少し難しい本を選んだので、よりわかりやすく参加者に伝わるように発表できるように心がけました。
 今回が初めてのビブリオバトルでの発表でしたが、人の前で話すことがだんだん楽しくなってきて、緊張感なく発表する事ができました。次回もぜひ参加したいと思います。

ペンハオさん

最後に

服部奨学財団として初めて開催したビブリオバトルは、大盛況に終わりました。このようなビブリオバトルを開催できたことを、運営メンバー一同、大変うれしく思っています。

ビブリオバトル開催にご協力いただきました鶴舞中央図書館の皆さま、そしてご参加いただきました方々、本当にありがとうございました。

最後に、参加者から寄せられた感想を紹介します!

 本との出会い方はいろいろあります。私は、本のポップやテレビ、SNSで情報を手に入れることが多いです。そして、いつも似ている分野の本を読んでいます。ビブリオバトルで紹介される本は、多種多様で、自分が知らない世界との出会いの連続でした。人によって本とつながり、本によって人もつながっていく「ビブリオバトル」。次こそは、発表者で参加しようと思い、どの本をどんなふうに紹介しようか?と意気込んでいます。
 余談ですが、ビブリオバトルで紹介されていた本を翌日に買いに行きました。電車での移動時間など、隙間時間に読むようになって、読書をするきっかけとしても効果絶大でした!
 このビブリオバトルの面白さには、2つのポイントがあると思います。1つ目は、「内容を話さずして、面白さを伝える」ということです。まだ読んでいない人に手に取ってほしいから、熱意を込めて演説するのであり、面白かった内容を話すのとは違います。好きな本だからこそ、その魅力を伝えられるのだと思いました。また、魅力を知っている人の説明は、ひきつけられるものがありました。2つ目は、「その場にいる全員が参加する」ということです。5分間の本の紹介後、10分間の質問タイムでは、ディスカッションをすることも想定されており、発表者への一方向的な質問と応答だけではなく、参加者同士で意見交換したり、発表者から参加者に問いかけられたりするなど、自由度の高いものでした。実際、この10分間が、対話を生み、ビブリオバトルの質を高める効果があるそうです。聞くだけではないし、発表するだけでもないという全員参加型であるところが魅力的でした。 

第13期服部奨学生・高野さん

次回のビブリオバトルは、12月3日に開催予定です!

ビブリオバトルは読書の素晴らしさを伝え、多くの人々にとって新たな冒険への扉を開いています。ぜひご参加いただき、新しい本との素敵な出会いを楽しんでいただければと思います。

今回の紹介図書まとめ

  • 『キノの旅 The Beautiful World』時雨沢恵一(著)

  • 『傲慢と善良』辻村深月(著)

  • 『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』アダム・グランド(著)

  • 『質問する、問い返す――主体的に学ぶということ』名古谷隆彦(著)

  • 『タイミングの科学: 脳は動作をどうコントロールするか』乾信之(著)

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