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【服部奨学生紹介】第16期服部奨学生/岡本 隣(東京大学)

第16期服部奨学生で東京大学大学院の岡本隣さんを紹介します。
自身の研究に大きな影響を受けた研究者が来日した際に、シンポジウムへの登壇や通訳などを務めたそうです。
事前準備から来日中の行動などとても興味深い文章です。是非お読みください。


第16期服部奨学生の岡本隣です。現在は東京大学大学院の科学史・科学哲学研究室に所属しています。主な関心は、ジェンダーと科学的知識の関係です。

学部の頃から私の研究関心に多大な影響を与えてきたのが、スタンフォード大学で科学史を教えるロンダ・シービンガー教授です。シービンガー先生は、「ジェンダーと科学」に関する学問領域を、歴史学におけるトップ・ランナーの1人として切り拓いてきました。

シービンガー先生は、2024年11月に東北大学と東京大学の招聘によって来日されました。先生がコメンテーターを務めた日本科学史学会・生物学史分科会のシンポジウムへ私も登壇したほか、イベント・取材などでの通訳を拝命し、数日間先生と行動を共にしました。

シンポジウムへの登壇

2024年7月に開催された歴史家ワークショップ主催「リサーチ・ショーケース」の研究発表で審査員賞をいただいたことをきっかけに、シンポジウムへ登壇者として声をかけていただきました。
シービンガー先生が提唱したフレームワークの一つである「コロニアル植物学」の中で、オランダではじめてパイナップルを育てた白人女性の取り組みを検討した内容です。
憧れの研究者から直接、内容に関するクリティカルなコメントをいただき、今後の研究の方針を決めていく上で大変参考になったとともに、とても贅沢な経験ができました。
実はこのシンポジウムにあたっては、ポスターのデザインもさせていただきました。

岡本さんがデザインしたポスター。"Women in Colonial Botany: From the Case of Agnes Block"のパートに岡本さんが登壇しました。

通訳

シンポジウムの翌日、シービンガー先生の翻訳書『奴隷たちの秘密の薬』の出版を記念したトークイベントが紀伊國屋書店新宿本店で開催され、通訳を務めました。
このような場での通訳は人生ではじめての経験だったため、理論に関する参考書で勉強し、先生の過去のインタビュー動画などを探して1ヶ月間練習を重ね、当日に臨みました。
会場は満席で立ち見の方も多く、大変緊張しましたが、聞き手役の先生方にもフォローをいただきながら、盛況のうちに終えることができました。

トークイベントの様子。写真右から2人目がシービンガー先生、右端が岡本さんです。

シービンガー先生は、歴史研究のほかに、性差をはじめとする様々な交差性の観点を科学研究や製品開発に組み込む「ジェンダード・イノベーション」の普及にも長年取り組まれています。近年日本でもますます注目を集めていることから連日取材があり、そのうちのいくつかでも通訳を務めました。

今回、世界的に活躍する研究者であるシービンガー先生の姿を間近で見ることができ、今後の研究に向けて大変刺激になりました。また、通訳の練習や登壇に向けた準備にはかなりの時間を要しました。その間金銭面に不安なく準備に打ち込むことができたのは、服部財団からの奨学金のおかげです。

私は引き続き博士課程への進学を志望しています。今回の経験を広く社会に還元するため、「科学」という営みを批判的に検討しつつ、公正な社会を作る上でいかに活かせるかということを、引き続き歴史の観点から考えていきたいと思います。


服部国際奨学財団 note では、さまざまな分野・領域で活躍する服部奨学生を「服部奨学生紹介」記事で紹介しています。ぜひご覧ください。

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