ビジネスモデル構築の知識と事例を学ぼう!
【第1章 ビジネスモデル構築の知識】
Ⅰ.ビジネスモデルをデザインする際の4つのパターン
ビジネスモデルデザインにおいて、大雑把にどの方向性で行うかをデザインするために、ビジネスモデルをデザインする際の4つのパターンを見ていきます。
・新規ビジネスを作る
・変革する
・模倣する
・移植する
①新規ビジネスを作る
これは、ゼロベースでの起業、新規ビジネスのデザインの段階における方法です。
新規でビジネスを起こす際は、業界ルールを変革するような、驚くようなモデルを考えると大きな成果があげられますが、このような事が出来るのはごく限られます。
通常は3番目の既存のビジネスモデルを模倣するところから、始まるのではないでしょうか!?
この場合でも、他社と少しでも差別化や低コストを実現することで、革新的とは言わないまでも、新規ビジネスを作ることは出来ます。
実現可能性をもったストーリーが最も重要であり、そのストーリーがどれだけ顧客を驚かせて喜ばせることが出来るか!
また、それによって利益を上げることが出来るか、という事をシュミレーションしなければいけません。
②変革する:ビジネスの停滞時
うまくいっていたビジネスでも、永久に続くことはほとんどありません。
形を変えながら、臨機応変に変革することが求められます。
具体的には、時間経過による顧客満足の低下や、競争相手の出現による価格競争により利益が出なくなった、顧客のライフスタイルの変化などが考えられます。
そのため、経営者は絶えず世の中の動きを察知して、ビジネスモデルを変革していくことが求められます。
特に市場が飽和状態になると、顧客はいるが利益は出ない、といった事が良く起こりえます。
③模倣する:ベンチマーキング
他社のビジネスモデルを分析して、どのような仕組みで顧客に価値を提供して利益を生み出しているかを把握出来れば、後はそのビジネスを行うことに対する参入障壁が高くなければ
模倣することが出来ます。
新規参入する業界で、既にビジネスモデルが確立されており、現時点では利益を生むことが出来る場合、またノウハウがないために、まずは既存のビジネスを模倣する場合、などが考えられます。
新規でゼロからビジネスモデルをデザインすることは、業界ルールを覆すような発想が必要となるために難しいですが、模倣するところから始め、徐々に差別化するという方法も考えられます。
ただ、このように模倣できるようなビジネスモデルは参入障壁も低いために、数多くの競合がいることは覚悟しなければいけません。
④移植する:異業種からの参入
業界の垣根を越えてビジネスを行う際に、ある業界で昔から使われている方法を別の業界に移植する、という方法です。
実は、この方法が最も有効な方法です。
ある業界では当たり前のことも、他の業界では当たり前ではなく、業界のルールを変革するようなビジネスモデルをデザインすることが出来ます。
第2章でご紹介しますが、異業種のモデルを別業種に適用させている事例が多々あります。移植するためには、移植する前の業界において相当の深い見識と経験がなくては出来ません。
4つのパターンをご紹介しましたが、どのパターンでも、
・どのような顧客に対して、
・どのような価値を
・どのように提供して、
・どこで儲けるのかという、
ビジネスモデルのデザインが最も基本であり重要な点です!
Ⅱ.ビジネスモデル構築で利益を創出するための4つの方法
ビジネスモデルにおいて利益をどのように創出するか!
ビジネスモデル構築で、顧客価値の提供に重きが置かれており、
利益創出を論理的にどうやるか考えられていない場合が多いと感じています。
まず、利益をどのように生み出すかの基本的な4つのパターンを書いていきます。
①規模の経済
これは、大量生産・大量販売のモデルです。
大量に販売すればそれだけ1個あたりのコストが安くなります。
ここで気をつけなければいけないのはコスト構造で変動費と固定費の割合です。
規模の経済では、仕入れに係る1個あたりの変動費も大量仕入れで削減することが出来ます。
しかし、変動費よりも劇的に効果があるのは固定費の削減です。
固定費とは家賃・人件費など、販売数量が変動しても変わらない費用です。
規模の経済では、大量に作れば作るほど、1個あたりの固定費が少なくなり、コストを抑えることが出来ます。
そのため利益を一定と仮定すると、1個あたりの利益額を多くすることが出来ます。
ただ、このビジネスモデルはある一定の販売量を持っている業界の上位企業でなければ実現出来ないモデルです。
②範囲の経済
範囲の経済とは、同じ企業が複数の事業を行うと、別々の企業が事業を独立して行うよりも、コストが割安になるモデルです。
どうしてコストが割安になるかは、2つの要因があります。
1つ目は異なる事業であっても、事業所を共有したりして資産を共有化出来ることでコストを抑えられる点にあります。
これは相補効果といいます。
2つ目は企業が持っている情報システムやブランド価値を、複数の事業で使用するなど、情報システムや無形の価値をそれぞれで利用できる点にあります。
これはシナジー効果、相乗効果などといいます。
このように範囲の経済では、経営資源を複数の事業で使用することにより、投資やコストを抑えることが出来ます。
③速度の経済
速度の経済とは、資産回転率・現金回転率を上げることによって、効率化して高い回転率により利益を生み出すモデルである。
ただし、顧客に提供する価値によって、速度の経済を取り入れられるかが決まります。
例えば、お店の雰囲気により1人あたりの売上を高く設定している、フランス料理などのお店にとっては、回転率を高めると顧客にとっては居心地が悪くなり、顧客に価値を提供することが出来なくなります。
速度の経済の最も良い点は、資産回転率が高いために在庫をあまり持つ必要がなく、それだけリスクを抑えられる点にあります。
しかも、キャッシュフローの回転も速いため、それだけ儲けが多くなる傾向があります。
このビジネスモデルは、業界の上位企業ではなくても参入できる方法であり、様々な会社がこの方法を利用しています。
例えば、「1,000円カット」や「俺のフレンチ」などの形態です。
詳しくはまた別の機会に書かせていただきます。
④集中化と外部化の経済
集中化の経済とは、ある特定事業に特化することであり、外部化の経済とは、自社では出来ない部分を他社に任せることで全体として最適化を行うことです。
集中化の経済では特定分野に特化することで、他社にはマネ出来ない価値を生み出し、競争優位の源泉とすることができます。
外部化の経済は業務提携やジョイントベンチャーなど様々な方法があるため、また別の機会に書かせていただきます。
これら4つの方法は基本的な利益創出のモデルであり、ビジネスモデルの利益をどのように生み出すかと言うよりも価値の提供との関係で決まります。
そのため、ビジネスモデルでは「顧客の価値」と「利益の創出」を組み合わせて考える必要があります。
ただ、これらは基本的なモデルとして理解しておいて頂ければと思います。
Ⅲ.ビジネスモデル構築で欠かせない、利益の方程式の4つの変数
ビジネスモデルの構想において、利益をどのように生み出すかを理論的に理解することは非常に重要です。
「Ⅱ.ビジネスモデル構築で利益を創出する4つの方法」での議論よりも、もっと突っ込んだ話を書きます。
利益を生み出すには方程式があります。
どのように顧客に価値を提供するかを、財務的視点で明確にしたものが方程式です。
学校で習う方程式には、x,y,z などの変数がありましたが、ビジネスモデルにおいても変数を定義することが出来ます。
下記の4つがその変数です。
①収益モデル
収益モデルは「価格×販売数量」で現されます。
価格は顧客への価値提供におけるとても重要な要素であるため、ここでは一定として取り扱います。
ここで問題になるのは以下の3点です。
・どれだけの顧客を獲得できるか。
・顧客が1回の取引で購入するにはどれくらいの数量か。
・顧客が何回の取引をしてくれるか。
これらを予測することで、利益予測をし、必要数量を購入してもらえるような仕組みを作る必要があります。
②コスト構造
コスト構造とは、変動費と固定費の割合です。
顧客へどのように価値を提供するかが決まったら、それを実現するための概ねの固定費は予測できます。
そうすると、コスト構造が決定し、利益を生み出すことが出来るかが判断できます。
③単位当たり目標マージン
単位当たり目標マージンとは、利益から変動費を引いた利益のことであり、単位当たり目標マージンの合計が固定費を上回れば利益を生み出します。
そのため、販売数量やコスト構造と密接な関係にあります。
単位当たりの目標マージンを決めておくことで、確実に利益をとれるようにすることが重要な点である。
④経営資源の回転率
目標売上を達成するために、経営資源をどのぐらい迅速に活用する必要があるのか、利益獲得のスピードを問題とします。
単位当たり目標マージンを低く設定して経営資源の回転率を高めて、必要な利益を生み出すことが出来るかを判断します。
これら4つは難しく書いているように見えますが、従来から存在するROI(資本回転率)を、どのように向上させるのかの議論に終着します。
さらに資本回転率は、売上高利益と資本回転率に分解出来ます。
①から③は売上高利益率、④は総資本回転率にあたります。
ビジネスモデルの構築では、顧客への提供価値に重きが置かれがちですが、このように財務的視点で利益が出るかをシュミレーションすることが非常に重要になってきます。
また今回のような財務的視点だけではなく、誰から(WHO)、何を提供することによって(WHAT)、どうやって(HOW)を考えて、利益を獲得するかのストーリーを作ることはとても重要です。
Ⅳ.必要な利益を算出するためのボトムアップアプローチ
顧客にどのようなものを提供するかが決まったら、それが利益を生み出すものなのか、ストーリー全体の中で、顧客価値の提供とともに利益の創出が実現できるかどうかを分析します。
これには大きくわけて、
①トップダウンアプローチ
②ボトムアップアプローチ
があります。
①トップダウンアプローチ
●損益分岐点分析
利益は、「利益 = 売上 - 費用」により計算されます。
そして、費用は「変動費」と「固定費」にわけられます
変動費とは売上によって変動する費用で、固定費は売上にかかわらず一定額がかかる費用をさします。
例えば、変動費は商品や製品の材料費で、固定費は家賃や減価償却費です。
簡単にいいますと、次の式を満たすことが出来れば利益を生み出すことが出来ます。
「売上 - 変動費 > 固定費」
売上に対する変動費率が分かっていれば、どのぐらい売り上げれば固定費を回収できるか、という計算が出来ます。
●感度分析
損益分岐点分析では、価格やコストを計算のために一定として計算しているが、実際にはそんな事はありえません。
そこで、利益を構成する様々な要素をストーリーに応じていろいろ変動させて分析する方法です。
これには次の5つの競争要因が大きく影響します。
・買い手の競争力
・売り手の競争力
・競争の激しさ
・代替品の脅威
・新規参入の脅威
これについて詳しくはまた別の機会にお話します。
このようにトップダウンアプローチは顧客に価値を提供するストーリーから、利益額を分析して、企業が必要な利益を超過しているかを分析する手法です。
そして、問題がある場合はストーリーを再構成する必要があります。
②ボトムアップアプローチ
上記に対して、まず必要な利益額がありきでスタートするのが、ボトムアップアプローチです。
予算での利益計画の作成に有効な方法です。
ボトムアップアプローチを始めるにあたり、まずは必要な利益額の算定が必要です。
・来期以降の投資計画
・人件費
・経営者の報酬
・借入金の返済
・税金
・株主への配当
など、これらの支出に必要な利益を確保したうえで、必要な利益額はいくらかを算定します。
資本提供者への利益の還元は不可欠であり、特に欧米ではビジネスモデルが魅力あるもので、それが利益を生み出すかということが資金調達にも大きく関わってきます。
こうして利益額を算定したら、最終的には必要な売上高のための価格と数量を算定します。
そして、財務諸表を起点として、その新規事業を行うことにより、どれだけ企業価値を高めることが出来るかを財務的な観点から明らかにします。
財務諸表からの分析を行うことにより、ROA(総資本営業利益率)やEVA(経済付加価値)などの指標がどのように変動していくかをシュミレーションすることが出来ます。
新規事業には少なくても、現在の指標を上回るようにしなければ全社的な業績が上向きません。こうして、利益から売上が決まり、許容されるコストも決まります。
そして、コストをどのように配分するか、また投資を行うにしても財務的な観点で、その投資は企業価値を上げるものであるかを分析出来ることになります。
トップダウンとボトムアップはどちらが優れているという訳でなく、顧客価値の提供と利益が創出されるように、バランスを取りながら行う必要があるため、相互に交えながら検証する必要があります。
Ⅴ.who,what,when,how から利益パターンの背後にあるロジックを考えよう
ビジネスモデルの構築には
・顧客価値の提供と
・利益の創出が
必要になってきます。
そのためには、
・顧客価値を高めて販売価格をあげる。
・必要な利益を達成するようコスト削減する。
を実行する必要があります。
しかし、このような努力を行っているのは競争相手も同じなわけで、努力をしても必要な利益を確保できないこともあります!
参入障壁が低く、競争相手が多い場合にはこのようなケースは良くあると思います。
そうすると、どのようにして競争相手と差別化していくのか。
そこで少し視点を変えて、次のことを考えてみましょう。
「どこで利益を得て、どこでは利益を得ないのか!」
全ての活動から利益を得ようとするのではなく、ある活動では利益ゼロ(あるいはマイナス)であっても、他の活動で利益を得ることによってトータルで利益を得ることが必要です。
競争相手が多くても、人の数だけ悩みがあり、その悩みからビジネスは発生するわけですから、利益をどこから得るかということも無数に考えることが出来ます!
特に現在のように情報伝達が早く、価値観が多様化している状況ではロングテールを狙っていくことが出来ます。
どこで利益を得るのかというパターンが増えていくこと、それはすなわち、収益性を多様化していくことです。
第2章でビジネスモデルの事例を紹介していきますが、つまるところ、以下のパターンでほぼ全てが説明できます!
・誰から利益を得るか
・どこの場面で利益を得るか
・いつ利益を得るか
・どのように利益を得るか
これを言い換えると、
who,what,when,how
といった、いわゆる基本的な質問事項と同じです。
これを顧客が求めていることに合わせて、柔軟にビジネスに取り入れていくことが重要です。
そして、なかなか理解することが難しいことですが、
①全ての顧客が利益をもたらさないこと
②利益率が異なる商品をどのように組み合わせるか
を理解しなければいけません。
Ⅵ.価格設定を顧客思考のマーケティングから考え直しませんか?
ビジネスモデルの構築で、価格設定はとても重要で、どのぐらいの価格に設定するかで全く違うビジネスになります。
では、価格はどのように決めれば良いのでしょうか?
この話をするには、マーケティングに関する話をたくさんしなければならないのですが・・・
少しだけお付き合いください!
まず、マーケティングでは、対象とする顧客・その顧客の悩みを定義して
どのような商品やサービスとして顧客に提供するのか、を決める必要があります。
もう少し詳しく書きますと
・どの顧客を対象とするかを決めるターゲティング
・どのような商品を顧客に提供するかの自社のポジショニング
に関することを決めます。
そして、これらの決定をするには次の4つが重要になってきます。
・製品(Product)
・価格(Price)
・流通経路(Place)
・販売促進方法(Promotion)
英語の頭文字をとって、4Pと言われています。
これらは重要な決定事項ですが、全て企業が目線のため、顧客目線で定義しなおしたものが、次の4Cです。
・顧客にとっての解決策(Customer solution)
・顧客の支払い(Customer cost)
・問題解決方法の入手の容易さ(Convenience)
・顧客との双方向のコミュニケーション(Communication)
ビジネスモデルの構築においても、これらマーケティングプロセス全体を考えることが必要です。
しかし、4Cの中では「顧客にとっての解決策」の商品・サービスに関する話題が多く、他の意思決定はそれほど考えられていない事も少なくありません。
ここまでで長くなってしまいましたが、今回は「顧客の支払い」である価格についてお話します。
価格の決定方法については3つの基本的な方法があります。
①コストプラス法
企業が負担する全てのコストをカバーして、利益が出るように設定する価格決定方法です。
あらかじめ、利益率を決めておき、1単位あたりで確実に利益を得ることが出来ます。
コストプラス法が適しているのは、該当企業が市場リーダーである場合や、設定された価格が顧客にとって納得する価格以下の場合などです。
該当企業が市場リーダーである場合には、コモディティ商品では困難です。
コストプラス法は、1単位あたりで利益を取れるために企業にとっては安心感があります。
顧客目線で見ると、この決定方法は価格に対する価格の納得感を得ることは難しい場合が多いです。
しかし、顧客が納得する価格を事前にリサーチしておき、そこまでコスト削減することにより、顧客満足を得ながら利益も確保出来れば最も良いのですが、、
なかなか難しいですよね・・・
②他社類似法
マーケットに流通している他社と価格を合わせる方法です。
この方法はその市場に対する参入障壁が高くて、少数の企業で市場を独占している場合や、成熟した市場などで良く見られます。
言い換えれば、昔からの慣習でだいたいこのぐらいの価格だろう、というものが顧客にも広く認識されています。
③バリュー・プライシング
この記事の最初にも書きましたが、対象とする顧客・その顧客の悩みを定義して、どのような商品やサービスとして顧客に提供するのか!
これらを決定することにより、顧客価値をもたらす範囲内で価格を決定する方法です。
価格が決定すれば、最終的に提供するべきサービスが明確になります。
この対象とする顧客をどこに定義するかで設定する価格も大きく異なるのです。
Ⅶ.値下げ戦略のビジネスモデルが成功する2つの条件
マクドナルドは20年ほど前に、100円のハンバーガーを発売しました。
それまでは210円だったので、これは衝撃的な値段設定でした。
値下げ戦略が成功する条件とは何だったのでしょうか?
マクドナルドの価格戦略は妥当であったかを検証し、この値下げ戦略が成功した理由を明らかにします。
値下げによって大幅に利益が増加しましたが、これはどのようなビジネスモデルでしょうか?
赤字覚悟で集客し、利益率の高い他の商品を買わせるためでしょうか。
いえ、違います!
これは「変動費」と「固定費」の仕組みによるものです。
値下げ前の210円のとき、利益は5%です。
この時点で値下げ戦略を取ると逆効果と思われるかもしれません。
しかし、コスト内訳を見ると、原材料費が25%の58円で、これが変動費となります。
利益が12円であったため、残りは固定費(人件費・店舗の賃借料他)で140円となります。
そのため、ハンバーガーは固定費が多いビジネスモデルと判断できます。
この状況で210円から100円への値下げを行うと、どうなるでしょうか?
変動費の58円は変わりません。
しかし、値下げによる売上数の大幅増加により、1個あたりの固定費が大幅に減少しています!
何と、1個あたりの固定費は8円に減少しているのです。
それほど売上数の伸びが劇的であったと言えます。
これで、
・客数を大幅に増やし、ライバル社を圧倒した。
・ハンバーガーの利益率を大幅に増加させた。
このような値下げ戦略が成功する条件とは!?
値下げ戦略は、どのビジネスでも有効ではありません。
成功にはいくつかの条件あります。
条件①商品の変動費率が低いこと
マクドナルドは薄利多売の商売であり、たくさん売ることにより固定費を回収しています。
それを値下げすることにより販売数を増やすことで、1個あたりで回収するべき固定費を減らしています。
ハンバーガーの変動費率は25%であるため、1個あたりの回収するべき固定費を小さくすればするほど1個あたりの利益が増えていき、、
逆に変動費の比率が大きい場合、
値下げをすると1個あたりの固定費は小さくなるが、1個あたりの利益は値下げをした分だけ圧迫されます。
下手をすると固定費も回収できなくなってしまいます。
このように、一般的に変動費の比率が小さいビジネスモデルは他にもたくさんあります。
ホテル業・航空業界・語学教室などです。
これらは別の機会に話題にするとしましょう。
条件②値下げによって販売数量が大幅に増加すること
値下げによって客数が増えて、販売数が大幅に増加しないと、1個あたりの固定費を小さくすることが出来ません。
そのために販売数の増加が絶対条件です。
マクドナルドは食料品で身近であり、また持ち帰りも出来るものであるために、販売数の大幅増加が可能なビジネスです。
そのため、値下げをすることにより、販売数の増加が見込める商品が条件、ということになります。
この時のマクドナルドは、ハンバーガーが1個100円というインパクトのある数字をまず打ち出してから、広告宣伝費にいくらかけるか、販売数がどれぐらい必要かのシュミレーションを行ったものと思われます。
このあたりは、販売価格の決定方法を顧客思考にするかなど、マーケティングの分野にも繋がっていきます。
マクドナルドという身近なもので、ご説明しましたが、いかがでしたでしょうか。
この話は20年前の話題であり、その後、マクドナルドがどのような過程をたどったのか、皆様もご存じかと思いますが、また別の機会の話題とさせていただきます。
Ⅷ.値下げ戦略の結果、起こりうることとは!?
売価の決定方法はどうすれば良いか!?
これは、経営上の重大なテーマの一つです。
値下げをして利益を出すような売価は、どのように決定すれば良いのでしょうか!
基本は「費用」+「利益」=売価 です。
そして、費用の内訳は「費用」=「変動費」+「固定費」となります。
こうして決定された費用が、売価の最低水準となります。
今回の議論では簡潔にするため変動費は固有のものとします。
固定費は売れれば売れるほど、1個あたりの固定費が安くなるのでしたね。
この性質は少し考えればわかるのですが、多くのビジネスモデルで取り入れられている、とても重要な方法です。
ということは、いくら売れるかという販売数量が売価決定に大きな影響を与えます。
販売数量の見込みが大きければ、1個あたりの固定費は小さくなり、逆に見込みが小さい場合には1個あたりの固定費は高くなります。
固定費が大きいビジネスの場合、この販売数量の見込みが重要になります。
そして、販売する前に売価を決めなくてはならないため、難しいのです!
値下げ戦略をした後に、起こったこととは!?
20年前にマクドナルドが大幅値下げを行った結果、大幅な利益が出ました。
さて、本当にこれは良いのでしょうか。
値下げをした後の影響はどうなったのでしょうか!?
20年前、日本はバブル景気が崩壊して長期不況の真っただ中でした。
その経済状況であったことも手伝って、マクドナルドの値下げ戦略は成功した側面があります。
この低価格戦略は儲かる、とマクドナルドが示したので、他の企業もこの値下げに追随していきました。
すると、値下げにも目新しさがなくなり、ただ値下げをしただけでは販売数量の増加に繋がらない事例が多くなっていきました。
「Ⅶ.値下げ戦略のビジネスモデルが成功する2つの条件」の記事の中の、値下げ戦略が成功する条件②で「値下げにより販売数量が増加すること」と書きましたが、この条件を満たせなくなるケースが増えていったのです。
業界全体が値下げ競争になると、1個あたりの利益が小さくなるため会社の儲けが少なくなります。
販売数量の増加が見込めないことから、「変動費」にも手をつけなければいけなくなります。
変動費を少なくするために、正社員リストラ、パートの増加、製造の海外移転などが起こることになります。
これが、社会全体がデフレスパイラルに陥った要因のひとつでもあります!
変動費を少なくすることは経営者にもっとも手をつけやすい場所なのです。
現在では、この低価格の流れを引きずっている企業もありますが、高価格戦略(ブランド戦略)を取っている企業も多くなってきています。
Ⅸ.企業と顧客のライフサイクルを同期させると、ビジネスモデル構築のヒント・アイデアが湧いてくる!
企業の目的を「販売」で終わらせない!
他社と同じ商品やサービスを販売していて、価格競争に陥ってしまい、利益が出ない…
そんな悩みを抱えている業界は多いと思います。
このときに有効な方法が、商品やサービスそのものの特徴を取り上げて他社製品と比較するのではなく、顧客の活用方法を提案して、これまでとは異なる場面で儲ける方法です。
企業の商品販売のライフサイクルと、顧客の日々の活動のライフサイクルは本来異なっているのですが、これを同期させると驚くほど色んなアイデアが出てきます!
しかし、どうしても企業の商品販売のライフサイクルは「販売」で終わることが多いです。
これを顧客の日々の活動を想像して、ライフサイクルを同期させると、商品の購入の前後にも大きなビジネスヒントが隠されています。
例えば、商品購入の前には、
・どんな商品を購入しようかといった悩み
・遠隔地でしか購入できない
・病気などで外出できずに商品を購入しに行けない
などが考えられます。
そして、商品購入の後には、
・購入した商品の使用方法が故障した
・商品を使わなくなったから売りたい
などが考えられます。
このように、その商品がどのようなライフサイクルかを考えると、いたるところに儲けるビジネスは考えることが出来ます。
そして、売り切りの商売をするよりも、顧客との長い付き合いをする企業の方が必ず儲けることが出来る、ということを忘れてはいけません。
ここで、重要なことが2つあります!
①どこで儲けるかを意思決定すること
商品のライフサイクルのどこで儲けるかを考るには、例えば商品販売では利益を出さなくて良いから、他のサービスで利益を出す、などの意思決定が必要です。
その意思決定は、決定権がある人にしか出来ない仕事です。
意思決定がないと新たなビジネスモデルも作ることが出来ません!
②ライフサイクル全体でシュミレーションすること
商品のライフサイクル全体で利益が出るかどうかをしっかりとシュミレーションすることが必要です。
シュミレーションを行うことにより、例えば、商品販売では利益を出さなくても良いという事が分かり、他社との価格競争に参入するかどうか、またどこまで価格を値下げしても良いかなどが分かります。
Ⅹ.投資から現金回収までの会計の仕組み
投資から現金回収までの仕組みは、「現金」から「現金」を生み出すという「現金製造機」と言えます。
利益を生み出すには、この現金製造機をいかに効率良く回転させるかにかかっています。
これから、そのことについて詳しくお話しますね。
①投資から現金回収までの流れ
まず、現金は投資することにより、次のようなものに変わります。
・商品を購入する
・材料を購入して製品を製造する
・固定資産を購入する
・有価証券を買う
・商品や製品を売って、売掛金となる
商品や製品は売ることで現金として回収でき、固定資産はそれを使うことにより現金を生み出しています。
この流れが1サイクルとなり、回収が投資額を上回った場合に、その差額がお金の儲けとなります。
この流れは、現金を投資して現金を回収する「現金製造機」とも言えます。
会社が儲からないのは「現金製造機」のどこかに問題があるためです。
現金を回収するまでのボトルネックがあると、資産が滞留したり廃棄することにより、現金をすぐに回収できなくなります。
そして、次の投資に回すことが出来なくなり、儲けのチャンスを逃すことになってしまいます。
これがお金の回転率であり、会社が最も重視するべき点です。
さらに言うと、投資したものを現金として回収出来なければ、会社は損失を負うことになります。
「現金製造機」に問題があるとは、例えば以下のような感じです。
・材料を購入して長い間滞留している。
・製品が売れないで残ってしまう。
・ある製品の製造ラインのために機械を購入したが売れなくなったため製造ラインが稼働していない。
・株やゴルフ会員権を購入したが損失を抱えている。
・社宅や保養施設を抱えている。
・売掛金が回収されずにいる。
これらの問題を解決するためには、現金を生み出さない資産を処分したり回収することで、現金に戻してまた別の投資を行う。これがリストラの本質です。
②投資から現金回収までの会計の仕組み
次に、これらを会計の仕組として説明しますね。
貸借対照表(Balance Sheet)には、左側に資産、右側に負債と純資産があります。
資産・負債・純資産の関係は、簡単に言いますと次のようになります。
・資産 →投資先と投資金額が示されている。
・負債純資産 →投資をするためにどういう方法でお金を調達したか。
今回の記事では負債純資産の議論ではないので、資産側だけのお話です。
資産の中には、下記のようなものが含まれます。
・現金及び預金
・売掛金、受取手形
・材料、仕掛品、製品
・商品
・建物、器具及び備品、ソフトウェアなどの固定資産
・有価証券
・ゴルフ会員権
1.まず、現金を100円投資して商品を買った場合は、
「商品 100 / 現金及び預金 100」
となります。
そして商品をお客さんに120円で売った場合には
「現金及び預金 120 / 売上 120
原価 100 / 商品 100」
となります。
この100円を投資して、120円を回収する流れが現金製造機となり、差額の20円が儲けとなります。
ここで、現金で売らずに、掛けで売り上げる場合には
「売掛金 120 / 売上 120」
となります。
売掛金の状態ではまだ現金として回収していないので、現金として回収するまでが問題です。
売却先の倒産などにより回収出来ない場合には
「損失 120 / 売掛金 120」
となります。
この場合には現金製造機に問題があることになり、現金が回収できていません。
2.次に、自社で製品を製造するために、
10,000円で機械設備の固定資産に投資した場合を見てみましょう。
「機械設備 10,000円 / 現金及び預金 10,000円」
この機械設備を使って製品を製造していきますが、製品が流行しなくなったために、この設備を使わなくなったとします。
その場合にはこの設備を廃棄しなければならないので、下記のように損失となります。
(減価償却は無視します)
「損失 10,000円 / 機械設備 10,000円」
固定資産は投資額が大きいため、意思決定に誤ると多額の損失となってしまいます。
最近の事例で言いますと、シャープやパナソニックの工場投資の失敗です。
ここでも、機械設備に投資したのに、投資額を上回る現金の回収が出来なかったことになり、現金製造機に問題があることになります。
3.最後に人件費を見てみましょう。
従業員は会計上は資産としては扱われず、資産としてはあらわれません。
そのため良く分からないかも知れませんが、毎月の人件費が発生します。
さらに、商品や製品などの資産が現金を生み出すのと同様に、従業員も現金を生み出しています。
従業員が多すぎて、効率が良くないということは現金製造機に問題があるという事になります。
この場合に、現金製造機が効率良くまわるために、従業員のリストラを行うことになります。
【第2章 ビジネスモデル構築の事例】
Ⅰ.金融業の仕組みを不動産業に適用したビジネスモデル
不動産業スターマイカという会社のビジネスモデルについて紹介します。
この会社は不動産業ですが、異業種である金融業のモデルを、不動産業に適用させて成功しました。
スターマイカの業態を簡単に書くと、賃貸に出されているマンションを買い集めて、賃借人が退去した後でリフォームしてから、それを売却して利益を得ています。
賃貸している間は賃貸収入が入り、退去しても売却収入が入ってきます。
日本では賃貸中の物件は空室物件に比べて、25%ほど安く購入することができます。
そして、賃借人が退去したら、空室物件の価格に戻ります。
そこで確実に利益を得ることが出来るのです。
ここで次のような問題が起きてきます。
日本では賃借人が法律に守られているために強く、強制退去される事が難しいのです。
そのために、賃貸中の物件を購入してもすぐに売却することは出来ないのです。
この問題を解消するために、多くの物件を保有することにより、確率論により一定の退去者を予測することが出来ます。
さらに、様々な物件を購入してリスク分散しています。
これは金融業界でいう「ポートフォリオ」の発想と似ています。
しかし、物件購入から売却までの時間が長いことで、資金回収までに時間がかかるため、多くの物件を保有するためには、多額の資金が必要です。
この資金を用意するために、海外の投資ファンドを使って資金調達しています。
まとめると、次のような流れになります。
①物件購入
②賃貸中は賃貸収入
③退去後はリフォームして物件売却
このビジネスモデルでは賃貸中の物件を購入するため、賃貸中は賃貸収入が入り、退去しても多額の売却益が入ります。
賃貸収入だけでも運転資金には困らないため、儲かる仕組みが出来ているといえます。
賃貸中の購入物件が値下がりするリスクもありますが、値下がり率と賃貸収入を比べると、賃貸収入の方が大きく上回っているのでリスクはほとんどありません。
このように、不動産の値上がりや値下がりに依存していないため、質の良い物件が集めることが出来ればほぼ確実に儲けることが出来るのです。
メモ:裁定取引とは?
商売の原則は価格差があるものを、仕入・販売することにより利益を得ていますが、今回のケースでは、不動産業でこの価格差を利用しています。
金融業のモデルで言うと「裁定取引」です。
裁定取引は、どの業種でも応用できる、最も基本的なモデルです。
その代わりに誰でも情報を知っていれば模倣することが出来るために、模倣困難な方法を見つける方法が必要です。
方法としては、、
・入手困難な情報を利用して裁定取引を行う
・大規模で行い模倣を難しくする
などがあります。
Ⅱ.顧客の再定義の重要性
「自分の親を安心して預けられる施設をつくる」
このようなコンセプトで、東京の青梅に高齢者専門病院を営んでいる「青梅慶友病院」という病院があります。
ビジネスモデルを考える際に、
「顧客をどのように定義するか」
という視点は、とても重要な点になってきます。
通常ですと、病院の顧客は患者ですが、この病院は患者だけではなく、患者の家族にまで広げています。
高齢者自身が認知症を患っている場合など、高齢者が意思決定をすることは難しく、家族が意思決定を行うことになります。
また、施設に預けることで、介護から解放される家族にとってもとても救われることになります。
さらに、高齢者の家族に良いサービスだということを広めることが出来れば、そこから口コミで広がっていきます。
その証拠に、入院患者の8割超が口コミでこの病院を訪れているという、調査結果があります。
この事例はビジネスモデルで考えてみると、「顧客の定義」が重要になっています。
介護施設の顧客は入居者である、という従来の考えから入居者である高齢者の家族にまで範囲を広げてサービスを展開しています。
これと同様のことは、生命保険の販売や相続税のコンサルティングなどにも活かせます。
現在の日本では、高齢者が圧倒的にお金を持っているので、そのお金を子供たちに多く残したいと思う人が少なくありません。
そのために、生命保険の販売や相続税のコンサルティングサービスの顧客として、高齢者の家族に広げることが考えられます。
高齢者の家族も、お金はたくさん相続したいと思っていますから・・・
特に現在は相続税の法律が平成27年から変わって、相続税が増えるためこのようなサービスが増えています。
高齢者では難しい意思決定は難しいため、家族と一緒に話を聞いて、意思決定は家族が行う。
実際に私も生命保険会社が主催する相続税セミナーに行ったのですが、高齢者の親を連れてくる子供がたくさんいました。
他にも、旅行会社や結婚式場など、いろいろ同じような事例がありますが、長くなりますので、また別の機会に。
顧客の再定義を行うと思いもかけない効果があると思いますので、是非、考えてみてはいかがでしょうか!?
Ⅲ.IBMのビジネスモデル変革の変遷
IT企業のIBMと聞くと、みなさんはどのような印象は持たれますか?
ちなみにwikipediaでIBMを調べると、1911年に設立され、あの有名なワトソンも社長になっています。
1960年代にメインフレームとして歴史的な製品である、「System/360」を開発します。
その流れは現在は「System z」に受け継がれています。
このように、IBMはハードウェアの会社というイメージが強い方が多いかと思います。
その一方でパソコン開発では乗り遅れてしまい、マイクロソフトやインテルに実権を握られてしまいます。
1990年代に入るとダウンサイジングの潮流になりメインフレームの業績が悪化していき、IBMは大幅な赤字を出すこととなりました。
1993年、ルイスガートナーが社長に就任し、これまでの独自OSでのメインフレーム提供から、オープンシステムによるシステムインテグレーターへと戦略を変換させました。
1990年代後半からは、運用管理ソフトウェアのTivoliなどソフトウェア事業を買収していく一方で、従来のハードウェアを売却していくことで事業の選択と集中を進めていきました。
2002年にハードウェアドライブ事業を日立に、2004年にはパソコン事業をレノボに売却しています。
他にもタイプライター事業やプリンター事業からも撤退しています。
このように、IBMはハードウェア事業から基幹となるソフトウェアを持ちながらも、各社のアプリケーションと連携したシステムを構築するシステムインテグレーターとなったのです。
さらにIBMはコンサルティング事業を強化するために、2002年にプライスウォーターハウス・クーパースからコンサルティング事業を買収しています。
ただのシステム構築だけにとどまらず、ユーザー企業の業務分析から始まり、企業に則したシステム提案及び構築を行い、さらにアフターサービスまで行うような企業になっています。
数字でこの10年間の売上高の違いを見てみると、
2000年には、
ハードウェア事業・・・48%
ソフトウェア事業・・・14%
サービス事業・・・37%
2010年には、
ハードウェア事業・・・21%
ソフトウェア事業・・・25%
サービス事業・・・54%
と、なっています。
この数字からも、IBMのビジネスモデルの事業変革の変遷が分かります。
製品の販売だけの商売から、ワンストップ型のトータルサービスに変わっています。
トータルサービスが提供できるようになると、競争相手との競争においても優位にたつこが出来ます。
その証拠にここ最近のIBMの利益率はどの事業でも高い利益率を確保しています。
これはトータルサービスを提供することで顧客の囲い込みをしているからです。
昔は、独自技術で顧客の囲い込みをしていましたが、現在はトータルサービスによる顧客の囲い込みを行っています。
さらに現在ではクラウドコンピューティングを提唱して、この事業に力を入れています。
クラウド事業での業界標準はどこが握るのか、今後が楽しみです。
Ⅳ.1000円カットが儲かる仕組み(ビジネスモデル)とは!?~マイナスの差別化と回転率~
ここ最近、駅前などで1,000円カットのお店を見かける機会が増えてきました!
1,000円カットと通常の美容院・理髪店の違いは何でしょうか?
1,000円カットでは以下の特徴があります。
・洗髪や髭剃りは行わず、カットのみ。
・タオルは使い捨ての安物。
・チケット販売機、電子マネーのみでの取り扱い。
・予約を受け付けない。
・電話は置かない。
この特徴がある1,000円カットにおいて2つの重要な観点があります。
①マイナスの差別化を行っている
②回転率が重要
順番に見ていきたいと思います。
①マイナスの差別化を行っている
通常の美容院や理髪店では、様々な施設を整えてサービスを提供しています。
特に美容院では雰囲気も重要であるため、お金をかけて内装しなければいけません。
また、店内も余裕を持った作りにする必要があります。
そのために、多くの経営資源を揃える必要があります。
1,000円カットでは、サービスをカットだけに絞って顧客も雰囲気などは求めていないため、経営資源はあまり必要としません。
このように、サービスを出来るだけ絞り込むことで経営資源が減るために固定費が減ります。
さらに、それだけではなく、業界の上位の会社は経営資源をたくさん持っているため、その経営資源を充分に活用出来ない商売にはなかなか参入しにくいのです。
②回転率が重要
美容院の回転率は悪く、1,000円カットの回転率は良い!
という事は誰でも分かることだと思います。
美容院は1人あたりにかける時間がどうしても長くなってしまい、回転率が悪くなります。
さらに、美容院は予約制がほとんどであるため、予約と予約の間の時間が無駄になっています。
それに対して、1,000円カットでは予約制ではないため、無駄な時間がなくなります。
こういう無駄な時間をなくすために、1,000円カットでは駅前など人通りが多い場所に出店しています。
1,000円カットで1時間にカット出来る人数は、仮に座席が4席で、1人あたりにかける時間を片づける時間や待ち時間も考慮して15分と見積もると、
4席×60分÷15分=16人となり、売上にすると16,000円となります。
対して美容院では、同じ4席でも、1人あたりに2時間はかかると仮定すると、
4席×60分÷120分=2人となります。
そして、単価を8,000円ほどと仮定すると、売上は16,000円となり、1,000円カットと同じになってしまいます。
しかし、美容院は内装や店舗賃貸料、人件費など1,000円カットの数倍はかかるため、費用は多くなり、利益ベースでは1,000円カットの方が儲かる場合もありえます。
ここまで1,000円カットの儲かる仕組みについて書いてきましたが、経営資源があまり必要なく参入できるため、その分、競争相手も多くなります。
1,000円という売上単価はほぼ決まっているため、他の部分でどう儲ける仕組みを作るかが重要になってきており、1,000円カットの顧客は男性客がほとんどでしたが、若い女性や高齢者などに、顧客層を広げる努力をされています。
Ⅴ.中古車のガリバーのビジネスモデルとは!?
ビジネスの世界において、
「B to C」
などという言葉があります。
これは一般に広がっているので、ご存知だと思いますが
Bは法人、Cは消費者であり
消費者に販売するビジネスモデルであることを意味しています。
これは、顧客をどう定義するか!ということに繋がります。
分かりやすい例として
中古車のガリバーのビジネスモデルをご紹介します。
①従来のビジネスモデル
中古車業界のビジネスモデルは、従来は「C to B to C」で行われてきました。
車を売りたい消費者から安く買い付けた中古車を、車を安く買いたい消費者に転売します。
このビジネスモデルは、買い取った車を展示場などで展示して、消費者に販売します。
販売価格には、買い取った価格から、販売コストとリスクを上乗せして販売します。
そのため、どうしても買取価格が安くなってしまい、そこが車を売る消費者にとっては満足出来ない価格になってしまいます。
さらに、どうしても販売されるまでの期間が長いため、資金の回転期間が長くなってしまいます。
このようなビジネスモデルを 中古車のガリバーはどのように変えたのでしょうか!?
②新しいビジネスモデル
まず、「C to B to C」というビジネスモデルを、「C to B to B」に変更したのです。
従来は消費者に販売していたものを、中古販売業者にオークションで売る形式にしたのです。
そして、車の車種・年代・走行距離など査定の根拠を明確にし、どこのお店に行っても査定価格を同じになるようして、データベースを構築しました。
買取価格は、オークションでの売却価格にマージンを載せた形式に出来るので、従来のビジネスモデルよりも買取価格を高く設定することが出来て、顧客の満足度も高まります。
このように、買取価格を明確にして迅速に査定するシステムにすることで、消費者も安心して売ることが出来るようになります。
オークションでの販売も、買い取ってから1ヶ月もおかずに実施するため、資金回転率も高めることが出来ます。
中古車の販売では、従来型の消費者から購入して消費者に売る方が利益率は良いのですが、、
あえて、その大きな利益を取らずに、中古販売業者にたくさんの車を転売することで業界1位になったのです。
利益よりも回転率を重視して、顧客重視の姿勢でビジネスを行ったと言えます。
Ⅵ.カーシャアリングとレンタカーのビジネスモデルの比較
車を持つにはこれまで、購入するかレンタカーかの2つの選択肢しかありませんでした。
それぞれに対して利用者が負担するコストを見ていきます。
①車を所有する場合
・車の購入費
・毎月の駐車場代
・税金
・車検
・整備
・ガソリン
②レンタカーを利用する場合
・レンタカー代
・ガソリン
車を所有する場合とレンタカーとでは、単純に比較は出来ません。
なぜなら、利用者がどのように利用するか、という観点が重要だからです。
では、次にレンタカーの不便なところがあるか検討していきましょう。
簡単にあげてみると、次のような点でしょうか。
・事前予約しなければいけない。
・レンタカー店までの距離が遠かったりする。
・返却方法が面倒。
・短時間での利用は出来ない。
そのため、1泊2日の旅行などのケースでは、レンタカーはとても便利です。
しかし、利用者の利用方法は次のようなケースも多いと考えられます。
・近場まで重たい荷物を運ぶ
・病院や施設までの送り迎え
・短い距離のドライブ
このようなケースはレンタカーを利用すると、高くついてしまいます!
利用者が負担するコストはカーシェアリングの方が安くなるため、そういう利用者にはカーシャアリングはとても魅力的です。
しかも、カーシェアリングは、上記で書いたレンタカーの面倒な点や、不便な点を解消させる特徴を持っています。
コストという観点でいうと、カーシェアリングはガソリンを入れて返却しなくてもOKです。
これは貸出コストに含まれているとは言え、利用者からすると大きな点ですよね。
大手のレンタカー会社がカーシェアリングに参入していますが大手の駐車場の会社も参入しています。
都内では「Times」など良く目にされると思いますが、車の貸出・返却をそこで行うなど、既にある施設をうまく利用しています。
自社の経営資源を有効活用している事例ですね。
このように、カーシェアリングはトータルでのコストを下げて、顧客への提供価値を上げていくビジネスモデルです。
少し専門用語で言うと、トータルでのコストを下げることを顧客の経済性といいます。
顧客の経済性とは、製品やサービスを購入することによって、顧客が負担するコスト面でどれだけ価値が上がるかということです。
顧客の経済性には2つの側面があります
・顧客のトータルコストが安くなること。
・顧客のコストが固定費から変動費に変わること。
カーシャアリングはまさに、トータルコストが安くなるとともに、自家用車で固定費がかかっていたものをその都度支払う変動費に変えています。
さらに、カーシャアリングを提供する会社にしてみると、
車を自社で保有するというのは初期投資が必要であるため、従来のレンタカー会社以外はなかなか参入しにくい業態です。
これを解消するために自社で車を保有しないでフランチャイズ展開するなどの形態が出てきています。
Ⅶ.リクルートとリブセンスのビジネスモデルの違いとは!?~掲載課金型と成功報酬型~
「リブセンス」という会社をご存知でしょうか!?
アルバイト情報サイトのサービスで2006年に設立して、2011年にマザーズ市場へ、当時最年少社長として上場した会社です。
サービスの内容は
アルバイト求人サイトの「ジョブセンス」
転職求人サイトの「ジョブセンスリンク」
派遣求人サイトの「ジョブセンス派遣」
を始め、他に賃貸情報サイトなどを運営されています。
サービスの特徴は、掲載費無料で、採用されてから初めて費用が発生する「成功報酬型」で、さらに、採用された求職者には祝い金を贈呈するというものです。
成果を得られてから利用料(報酬)が発生するというのは、インターネットと親和性が高いものだとホームページでも書かれています。
「成功報酬型」ビジネスモデルに対して従来は、
リクルートを中心として「掲載課金型」型のビジネスモデルが展開されていました。
掲載課金型のビジネスモデルでは、取引が成立しなくても利用料が課金されてしまいます。
そのため広告を掲載して成果ゼロでも費用が掛け捨てになっていました。
リブセンスは成功報酬型のビジネスモデルを導入することで、成果ゼロの場合は費用もゼロ、成果に応じて課金する方式にしたのです。
このようなビジネスは、普通に考えるとベンチャー企業なら参入しやすいと考えられますが、リブセンスはどこで差別化を図っているのでしょうか。
インターネットという性質上、誰でも技術があればこのようなサービスを作ることは出来ます。
しかし、リブセンスではウェブ検索で上位に来るようにSEOという技術をコアコンピタンスとしている。
そのために、社長はもちろんですが、優秀な人材がコアコンピタンスということになります。
そして、リクルートなどの人材マッチングの大企業が、このようなビジネスモデルに参入してくれば、とても強い競合になってしまいます。
しかし、リクルートの経営資源は強力な営業マンであり、営業活動により広告掲載企業を発掘して広告収入を得ています。
それだけ高い人件費をかけているため、成果ゼロの場合に収益が発生しないというのでは、人件費などの固定費を回収できるだけの売上を上げることが難しい場合もあります。
そのため、リクルートが従来の掲載課金型のモデルから成功報酬型に変更するのは、逆に売上が減少する可能性があるため、なかなか同じようなモデルにはしにくいです。
一方、成功報酬型のビジネスモデルがまだ業界内での標準ではないため、リクルートは従来型のモデルでも収益を上げることが出来ているということも、成功報酬型への参入をためらわせている要因でもあるかと思います。
ただ、このようなマッチング型のビジネスでは、最終的にはマッチングの結果の口コミが重要になってきます。
そのため、どれだけ質の良いマッチングを提供出来るかが、これからリブセンスのサービスが広まっていく鍵となります!!