TOKYO PRO Marketの概要

先日、C Channel社がTOKYO PRO Marketに上場申請したことが話題になった。

C Channel社は、元LINE社長の森川亮氏が2015年に創業し、動画メディアの雄として多額の資金調達を行ってきた。いわゆるExitとしての株式上場の形態としては珍しく注目された。

今回は、TOKYO PRO Marketの概要についてまとめたい。
やはり、東証1部/2部/マザーズに上場するだけが手段ではない、という前提のもと幅広く知識を蓄えることも大事だと思う。

はじめに

TOKYO PRO Marketは、東京証券取引所が国内外のプロ投資家に新たな投資機会を提供することを目的に運営する成長企業向けの市場である。

他の証券市場との大きな違いは、2008年12月12日に施行された改正金融商品取引法に盛り込まれたプロ向け市場制度を活用した制度設計である点だ。

制度概要

制度概要は以下の通り。

申請・開示書類:日本語または英語
上場基準:株主数、株式数、時価総額、売上、利益、成長性等についての証券取引所の基準無。J-Adviserが上場適格性を評価
内部統制報告書:任意
四半期開示:任意
監査証明:最近1年間
会計基準:日本基準、国際会計基準、米国会計基準、その他
投資家:プロ投資家(特定投資家及び非居住者)に限定
流動性プロバイダー:証券取引所の取引参加者を指定

上記の通り、財務諸表に対する監査証明が、マザーズ等への市場では最近2年間について必要とされているのに対し、TOKYO PRO Marketでは最近1年間とされているほか、上場後の四半期開示や内部統制報告書の適用を任意としている。
私は東証一部上場企業で開示実務を行っているが、上場しているのに、四半期開示や内部統制報告書が不適用というのは何とも不思議な感じがする。

裏返しになるが、このように金融証券取引法で定める開示規制の適用を免除されるのは、TOKYO PRO Marketがプロ向け市場であるからだ。

J-Adviserの採用

J-Adviserとは、東京証券取引所の承認を受けた上場を希望する企業のアドバイザーのことだ。
TOKYO PRO Marketに上場するに当たり、企業はJ-Adviser1社と担当契約を締結する必要があり、J-Adviserは企業が上場するまでのプロセスを統括するとともに、上場適格性について調査・確認を行わなわなければならない。上場後も継続して上場企業としての義務を履行するよう、上場企業はJ-Adviserから助言・指導などのサポートを受けることになる。

J-Adviserは、SMBC日興証券株式会社など大手証券会社、株式会社OKINAWA J-Adviserなどである。

新規上場基準

先述の通り、株主数などの基準はなく、事業の成長性についての要件も設けられていない。

①J-Adviserを1社確保している
②上場申請に際して提出する特定証券情報、コーポレート・ガバナンスに関する報告書等を規制に従って作成し、上場申請日に申請会社及び証券取引所で公表すること
③特定証券情報等に添付する監査報告書等は、監査法人によって作成されており、無限定適正意見またはこれに準じるものであること
④財務諸表は、日本基準、米国会計基準、国際会計基準のいずれかに基づいて作成すること
⑤株式の譲渡に制限がないこと
⑥取引参加者を流動性プロバイダーに指定すること
⑦株式事務代行機関に委託すること
⑧指定振替機関の振替業における取扱の対象又は対象の見込

また、証券取引所規則では、上場の実質基準に該当する適格性要件として、次の5点を定めている。

①上場するに相応しい会社である
②事業を公正かつ忠実に遂行している
③コーポレート・ガバナンス及び内部管理体制が、企業の規模や成熟度等に応じて整備され、適切に機能していること
④企業内容、リスク情報等の開示を適切に行い、規則に基づく開示義務を履行できる態勢を整備していること
⑤反社会的勢力との関係を有しないことその他公益又は投資家保護の感てkんから必要と認める事項

上場申請

新規上場申請者は、上場承認を希望する10営業日前までに、証券取引所所定の「有価証券新規上場申請書」を提出しなければならない。なお、「有価証券上場申請書」の添付書類として、①特定証券情報、②新規上場申請に係る宣誓書、③コーポレート・ガバナンスに関する報告書、④定款その他証券取引所が必要と認める書類等、が必要となる。

上場後の開示義務

詳しくは割愛するが、TDnetを通じて開示が義務付けられている。

上場廃止

J-Adviserとの契約を維持しなければならないため、契約関係がなくなると監理銘柄に指定され、新たにJ-Adviserと契約できない場合は、上場廃止となる。

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