「名言との対話」1月6日。越智直正「いい靴下は噛めば分かる」
越智直正(おちなおまさ 1939年6月2日ー2022年1月6日)は、経営者。タビオ創業者。享年82。
愛媛県出身。中学卒業後、大阪の靴下問屋に丁稚奉公。1968年に28歳で独立し、ダンソックス(現タビオ)を創業し、靴下の卸売りを始め、オリジナルの手作りの靴下を開発した。1982年に小売りに進出し、1984年に「靴下屋」1号店をオープンし、フランチャイズチェーン展開を始めた。
高い品質と独自の生産・販売管理システムを構築し、タビオは靴下のトップブランドとなった。靴下製造協力工場から店頭までのサプライチェーンマネジメントのシステムを構築し、高品質と低価格を実現した。
2000年に靴下専業として初めて大証2部に上場し、その後に東証2部上場。2006年にタビオに社名を変更。Tabioは「The Trend And the Basics In Order(流行と基本の秩序正しい調和)の頭文字をとって命名。
2008年に長男に社長を譲り会長に就任。2022年1月6日に妻と一緒に交通事故で死去した。
タビオは2002年からイギリスのハロッズを皮切りに、フランス、アメリカにも出店し、国内外で280店舗を擁すまでになっている。9割が女性向けの商品で、2019年の売上高は163億円の企業に成長している。
経営についての言葉。
経営者は困らないといけません。困らない経営者に進歩はない。
流行を追うと、流行に捨てられる。
我がタビオは、世界一の靴下総合企業を目指しています。売上基準ではありません。一流の商品で一番になるための創意工夫を重ねての世界一を目指しているのです。
越智直正は、経験から教訓を引き出す人だった。小学校の先生、丁稚奉公の大将から学んだことを生かしている。
私には、何事も体で覚えないとつくれない、という思いがあります。「手を使って、よく学べ」と小学生のときに言われたことはありませんか?それこそ、職人の技につながるものと思っています。
丁稚時代、大将からは「売れすぎても失敗」「売れなくても失敗」と怒られ続けました。在庫が足りなくなっても、余っても、それは商売として間違っていると、叩き込まれたわけです。
靴下専門店の全国チェーンを一代で築いたのだが、経営は順風ではなかった。資金繰り、営業不振、、。上場後の利益重視方針による低迷による危機など、波乱万丈の生涯だった。
13年という長い丁稚奉公時代は、過酷な労働環境の中、長時間労働、低賃金で働いている。その間、「靴下を履く・手や頬で触る・全身を使って肌触りを確認・噛むなどをして品質確認」などを実践し、商売の勘所を身に着けたのだ。「靴下を噛む」という行為は、靴下の弾力を確かめるためだ。「靴下の神様」と呼ばれただけのことはあると感心した。