「名言との対話」1月27日。室伏稔「1つの目標 2つの信念 3つの基本姿勢」
室伏 稔(むろふし みのる、1931年9月22日 - 2016年1月27日)は、日本の実業家。伊藤忠商事社長。日本政策投資銀行社長、日本貿易会会長を務めた。享年84。
静岡県出身。東大法学部卒。伊藤忠商事で活躍した。日本経済新聞の室伏稔の「私の履歴書」は、ビジネスマンが共感を覚えたようでよく読まれた。
元大本営参謀で上司であった瀬島龍三から日常業務で指導されたのは、「報告書は必ず紙1枚にまとめる」「結論を先に示す」「要点は3点にまとめる」であった。「どんな複雑なことでも要点は3つにまとめられる」が瀬島の口癖で、物事の本質を見極め整理する習慣を身につけさせてもらった。そして「用意周到、準備万端、先手必勝」という姿勢で徹底的に準備をしてから事を始める、相手に先んじることが必勝への道という教えを受けた。
「企業は建物でも、決算書でもない。人である。人と人がつくる社風こそ企業を支える無二の資産でありそれが企業を発展させたり、衰退させたりする」という考えの 室伏は社長就任時には、「各人は必ず、Agenda(課題)を持ってほしい。すなわち、自らに課題を与え、Nothing is impossible の精神でやり遂げてほしい」と語り、「1つの目標。2つの信念。3つの基本姿勢」を打ち出した。
1つの目標とは「国際総合企業の実現」。2つの信念とは、「Why not ?」「Noting is impossible」(なせばなる))「More Like CI」(より伊藤忠らしく)。3つの基本姿勢とは「グローバルな視野に立った経営」「総合力を発揮する経営」「やる気の出る経営」である。
室伏稔はトップに立った時に、「1つの目標 2つの信念 3つの基本姿勢」というわかりやすいメッセージを発して現場を鼓舞した。用意周到に考え抜ういた上で、要点を3つにまとめる、というビジネスの修羅場で学んだ姿勢を貫いたのであろう。
後任社長の 丹羽宇一郎の「清く、正しく、美しく」、そして小林栄三の「Challenje,Create,Commit」も奇しくも3つの言葉を並べたものだ。小林の次の米倉功社長も、「二訓・三省・四革」という数字を連ねた考え方の表明はわかりやすい。二訓:1.現状維持はすなわち脱落である。2.稼ぎに追いつく貧乏なし。三省:1.損切りせよ。2.情報は活かして仕え。3.リスクに対しては計算して挑戦せよ。四革:1.意識改革。2.業務改革。3.制度改革。4.構造改革。
伊藤忠商事は2016年3月期決算で、当期純利益2404億円を計上し、伝統と実力のある三菱商事や三井物産を抑えて商社ナンバーワンになった。この快挙を率いたのは、2025年1月の日経の「私の履歴書」を書いている岡藤正広社長だ。この人も「か・け・ふ」経営を標榜している。『稼ぐ』『削る』『防ぐ』の頭文字。ここでも3つである。2021年3月。伊藤忠商事が、純利益、株価、時価総額の3つの指標で業界トップとなる快挙を成し遂げている。
企業にもDNAがある。伊藤忠兵衛が創業した伊藤忠商事は、忠兵衛が招いた瀬島龍三の影響を受けた歴代社長の織りなす、活性化した社風の継続によって財閥系の三井、三菱をしのぐまでになった。継続は一大勢力を形成していくのである。