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「名言との対話」6月7日。林周二「研究者には、定年はあっても、停年はない」

林 周二(はやし しゅうじ、1926年3月25日 - 2021年6月7日)は、日本の商学者経営学者統計学者。享年95。

東京生まれ。旧制福岡高等学校を経て、1948年に東京大学経済学部商業学科(現・経営学科)を卒業後、東京大学大学院経済学研究科特別研究生。東京大学教養学部につとめ1966年に教授。東大を定年退官後、1987年静岡県立大学で新設の経営情報学部の初代学部長に就任する。その後、明治学院大学経済学部教授、流通科学大学特別教授に就任する。

中央省庁審議会の委員や、日本国有鉄道の顧問に就任するなど、各種公職も歴任している。

専門経営学であり、特に流通論統計学に関する研究を行った。旺盛な著作活動で知られ、流通論や統計学に関する学術書を多数上梓している。さらに高等学校の教科書の執筆も行った。

日本経済における流通の重要性を早くから学問的に指摘した1人であり、1950年代から、推計統計学を駆使した科学的なマーケティングリサーチの手法の有用性と必要性を提唱。1970年代後半からは、経営組織論経営管理論情報管理論へと関心を拡大した。

流通革命――製品・経路および消費者』は、1960年代ベストセラーとなった予言書だ。大丸最高経営責任者J.フロント リテイリング社長を歴任した奥田務は、学生時代にこの本に感銘を受け、大丸への就職を決意するなど、大きな影響を与えた。

以下、林周二の言葉から。

・(よい)経営戦略には「バカな、なるほど」が必ず含まれている。

実学志向の強弱は、それに携わる人々の呼称に「ist」がつくか「er」がつくかでわかる。サイエンティスト、エコノミスト、、エンジニア、マーケター。

・小売業は立地産業だ。

時代や分野が違うこともあり、この人の本をうかつに手にしたことがなかったのは残念だ。以下、多数の著書の中から関心を持ったものを選び、「BOOK」データベースの内容説明を記す。専門分野の本以外の本も面白そうだ。

『現代の商学』(有斐閣)。流通研究のパイオニア:林教授が10年の沈黙を破って書き下ろした久々の意欲作!!21世紀へむけて実学としての新しい商学の理論体系を展開する。“商学総論”講義のテキストとして最適。

『明日の開拓者たちへ』 ( 流通科学大学出版)。「自らを磨かずして何も生み出すことはできない。学問の世界もビジネスの世界もデスマッチのリングだと思え…。明日の開拓者たちへ贈る想い」。大学の研究者たちへの熱いメッセージだ。

『智恵を磨く方法ーー時代をリードし続けた研究者の思考の技術』(ダイヤモンド社)。「自分で考える力」の鍛え方。「知恵」を語り尽くした一冊」。ベストセラーや名著を世に送り出してきた90歳の著者の知恵と思考についての方法論、技術論は興味深い。

『比較旅行学―理論と実際』(中央公論社)も林の著書である。「人生は一個の旅である。旅は比較体験の重ねと蓄積により効用を著しく累加させる。本書は、比較旅行へのいざない、旅行・比較旅行の効用、比較旅行のあれこれ、比較旅行のノウハウなどで比較旅行学の理論を示し、アジアとインド洋の国々の旅行録で実際を示す」と紹介されている。「比較」という方法を用いて旅行の理論に挑戦した本である。

『研究者という職業』(東京図書)を読んだ。「流行のテーマを追うのでなく、自身が本質的に考える主題に取り組むならば、研究者は生涯かけてその研究生活を楽しむことができる。問題は発想の泉を涸らさないことだ」と書いている。「実学志向の強弱は、それに携わる人々の呼称に「ist」がつくか「er」がつくかでわかる」とも言う。

・研究者とは「自分の頭脳を働かせることで、系統的な情報創造活動を営み、かつそれでメシを食っている各種の知的職業人たち」。

・研究のテーマを自分自身の手で掘り起こし、研究生活を楽しむ体験をもったタイプの研究者たちは、高齢に達してからも概して何がしかの研究業績を出し続けている。

・プロとは「上手になるほどお金を稼ぐことのできる者」。アマとは「上手になればなるほど出費が嵩む者」。

・発想の泉を涸らさないことだ。

・旗を振っておくこと。

林周二は、研究者には、「定年はあっても、停年はない」という。「生涯現役、生涯第一線」で生きるのが研究者なのだ。

林周二という学者は真正の知的生産者であり、その自覚が強い人だ。知識よりも知恵を獲得する工夫、自分で考える力の鍛え方、自分を磨く意識、新しい領域へ向かう勇気、発想の泉を涸らさない方法、実学の精神、高齢での出版を含む旺盛な発表活動など、95歳まで生きた林周二は人生100年時代の生き方のモデルとして励みになる。

私はビジネスマン時代から、郷里中津の横松宗先生から「研究者になりなさい」と言われていた。林周二のことを調べる機会をもって、生涯現役であるためには、研究者的生活が大事になると改めて思った。

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