
「名言との対話」1月4日。篠山紀信「ハッと感じたら、グッと寄って、バチバチ撮れ!」
篠山 紀信(しのやま きしん、1940年〈昭和15年〉12月3日 - 2024年〈令和6年〉1月4日)は、日本の写真家。享年83。
東京新宿区出身。篠山紀信は日大芸術学部写真科在学中から広告制作会社で仕事をし、第一回日本広告写真家協会展公募部門APA賞を受賞している。卒業後は、1966年26歳、日本写真批評家協会新人賞。1970年30歳、日本写真協会年度賞。1972年32歳、芸術選奨文部大臣新人賞。1973年33歳、講談社出版文化賞。1979年39歳、毎日芸術賞。1998年58歳、国際写真フェスティバル金賞。
こういう素晴らしい経歴であるが、時代の最先端を走るメディアで世間を驚かせてきた。シノヤマの名前は同時代を生きる私たちには馴染みが深い。アイドル歌手の南沙織と再婚した。私は南沙織のファンだったから恋敵的イメージを持っていた。
2012年に初台の東京オペラシティアートホールでで開催中の「篠山紀信展 写真力」をみた。
いきなり三島由紀夫の死の直前に撮った縛られて死を迎えた裸の写真と日本刀を持って構える三島の殺気溢れる大きな写真をが目に飛び込んできて驚かされる。大きい写真はやはり圧倒的な迫力で迫ってくる。篠山紀信は、50年に亘って衝撃的なメッセージを送り続けてきた写真家だ。回顧展を一切やらなかった篠山が初めて放つ美術館を使った写真展である。
テーマとなっている「写真力」について篠山はこう言っている。「写された方も、撮った者も、それを見る人々も、唖然とするようなスゲエー写真。、、時空や虚実を超えて、脳裏に強くインプットするイメージの力が写真力ってわけだ。、、、人知を超えた写真の神様が降りて来なくちゃ、すごい瞬間は立ち現れないんだもの。その為には、あらゆる努力をする。、、、、」
GOD(鬼籍に入られた人々):美空ひばり、三島由紀夫、大原れいこ、勝新太郎、武満徹、、、。
STAR(有名人):吉永小百合、澤 穂希、王貞治、。
SPECRACKLE(夢の世界):ディズニー、大相撲、刺青の男たち、歌舞伎、リオのカーニバル、、。
BODY(裸の肉体、美とエロスと闘い):宮沢りえ、ウラジミール・マラーホフ、、。
ACCIDENTS(東日本大震災被災者)。
生々しいメッセージ、大きな迫力で迫ってくる生き方、生命を感じる裸体、極限の筋肉の裸体、不動の伝統と歴史の力、、、。確かに「写真力」という言葉に納得する企画展だった。
ハッと感じたら、グッと寄って、バチバチ撮れ!ハッと感じる自分の完成を磨く。いい音楽を聴く、好きな芝居を見る、ふらっと旅に出る、いい女と付き合う、うまいものを食う、、、なんでもいいんだ、いいものに、敏感にハッと感じる感性を身につけよ!
仮面の上に仮面をつけることこそ、その人のリアリティを獲得することだと思っている。
2017年には5年前の2012年に東京オペラシティでみた「篠山紀信 写真力」展を横浜美術館でみた。内容は同じだった。篠山本人の言葉をピックアップしている。
「僕はその時代はその時代のカメラで撮るのが一番いいと思う」
「いや、芸術よりもっと上にあるものでしょう。写真の中に芸術的なものもあるというだけ。、、写真=芸術だったら写真に失礼です。、、、写真はもっともっと大きなものですよ。」
「嘘X嘘は本当になる。、、、、作られたフィクションを写真によってよりフィクションにする。そこに真実がある。、、、」
「ようはお座敷次第でね。、、、仕事が来るたび「それならばこういうふうにやったら面白いんじゃない?」というふうに考える。、、」
篠山紀信は人物写真では「仮面の上に仮面をつけることこそ、その人のリアリティを獲得することだと思っている」と語っている。そして「いや、(写真は)芸術よりももっと上にあるものでしょう、、写真はもっともっと大きなものです」と信じ現代を疾走する写真家・篠山紀信。嘘を承知で創るほうが、リアリティがでて本当になる。明治の木彫のトップ・高村光雲は同じことをいっている。
日経新聞の1月6日の記事では、篠山紀信の記事をみかけた。「風のように撮り、風のように去る」「いつも自分の気持ちを清廉潔白にして、一点の曇りもないように相手をちゃんと見る。澄んだ目を持って僕は撮るんだ」。
シノヤマは「ハッと感じたら、グッと寄って、バチバチ撮れ!」という。今まで写真家の言葉も拾ってきたが、この言葉が、一番ではないか。名言だ。そして「ハッと感じる自分の完成を磨く。いい音楽を聴く、好きな芝居を見る、ふらっと旅に出る、いい女と付き合う、うまいものを食う、、、なんでもいいんだ、いいものに、敏感にハッと感じる感性を身につけよ!」という。「ハッと感じる」感性を育てることが重要だというメッセージだ。