「名言との対話」3月20日。伊奈長三郎「土は水を得て形となり、火を通してやきものになります」
伊奈 長三郎(いな ちょうざぶろう、1890年3月20日 - 1980年10月10日)は、日本の実業家、政治家。伊奈製陶(のちのINAX、現LIXIL)創業者。
愛知県常滑市出身。東京高等工業学校(現、東京工業大学)卒。1918年、帝国ホテル煉瓦製作所技術顧問。1924年、伊奈製陶を設立。1939年代表取締役社長。1951年、常滑町長に当選。 1954年合した常滑市の初代市長に当選。1972年、常滑市名誉市民第一号。
伊奈家は常滑の陶工の家系である。フランク・ロイド・ライトの帝国ホテル旧舘の外装タイルを成功させたが、その時働いた社員を雇い、伊奈製陶を設立し。
創業の地・常滑には、体験・体感型の「INAXライブミュージアム」がある。「世界のタイル博物館」「窯のある広場・資料館」「建築陶器のはじまり館」「土・どろんこ館」「陶楽工房」「「やきもの工房」「ミュージアムショップ」「レストラン」などがそろった本格的なミュージアムだ。また、長三郎を顕彰した「長三賞」は陶芸作家の登竜門となっている。
私は東京・京橋の「LIXIL ギャラリー」には何度も訪問した。優れた企画、と書店の品揃えが素晴らしい。以下、私がみた企画展。
2012年「鉄川与助の教会建築」展。長崎・五島に生まれた鉄川与助(1879年ー1976年)は、大工棟梁の家系に生まれ、生涯に100ほどの建築物を設計している。そのうち教会は30棟に及ぶ。
2015年「伊東豊雄 ライフスタイルを変えよう--大三島を日本で一番住みたい島にするために」展。10年くらいは小さなことを積み重ねて、若い人と一緒に21世紀を考えていきたい」その小さいことの一つが「日本一美しい島・大三島をつくろうプロジェクト」だ。
2018年「ふるさとの駄菓子--石橋幸作が愛した味とかたち」展。石橋幸作は1900年生まれ。1976年没。1885年(明治18年)創業の仙台の飴屋「石橋屋」の二代目。1930年頃より駄菓子研究に着手。戦後、家業は子に譲り、駄菓子と庶民生活や食文化史を求めて夫婦で全国を旅する。東北を皮切りに、北海道から九州まで日本の主要都市の実地調査に半世紀をかける。絵と文の詳細な記録、パルプにニカワを混ぜた紙粘土で、駄菓子特有の色とかたちを再現した。
のべ40年にたって977回の展覧会を開催。建築ややきものという独自の路線で存在感を示してきた。このギャラリーも、2020年秋に閉じた。400点にのぼる建築関係の本を出してきたLIXIL出版も終わった。とても残念だ。
INAXライブミュージアムのHPにある「土は水を得て形となり、火を通してやきものになります」を名言として採用した。焼き物は、土と水で形を作り、炎で焼いて出来上がる。それは水と炎と対話して、土の力を引き出す作業なのだ。伊奈長三郎はやきものをつくる陶工という長い伝統のある家業を、「製陶」という産業に発展させた。「伝統と革新」という言葉が思い浮かぶ。そして公的な仕事もしながら、よって立つ歴史を大事にし、文化への貢献を形にした偉人である。