「名言との対話」1月23日。坂本スミ子「感謝するとエエこと来るゥ」

坂本 スミ子(さかもと スミこ、本名:石井 寿美子、旧姓:坂本、1936年11月25日 - 2021年1月23日)は、ラテン歌謡曲歌手俳優。享年84。

大阪市出身。歌手となったが、1959年のトリオ・ロス・パンチョス日本公演でアイ・ジョージとともに、全国ツアーの前座をつとめ、一躍「ラテンの女王」として人気が出る。1961年からはテレビ『夢であいましょう』の主題歌を歌う。1961年からNHK紅白歌合戦に5回連続出場した。

1964年から女優業にも進出。1966年『エロ事師たち、より 人類学入門』(今村昌平監督)で、毎日映画コンクール助演女優賞を受賞。1982年にはミュージカル「キャバレー」で文化庁芸術祭優秀賞。

1983年には『樽山節考』で名演技を披露する。この作品は深沢七郎の小説を映画化したものだ。カンヌ国際映画祭でグランプリを受賞した。

1993年、50代後半からは義母のやっていた熊本の聖母保育園幼稚園・幼愛園の園長もつとめた。

気さくで明るい人柄で、「おスミさん」との愛称で親しまれた。歌手としてはエネルギッシュでパワーあふれる歌声で、「ラテンの女王」と呼ばれるなど、実力を認められた。

女優としての最大の評価は、『樽山節考』である。代役での出演であったが、坂本は自身より30歳年長の老女を演じるにあたり、当たりの演技をしたことが話題になった。

深沢七郎1956年姨捨山をテーマとした『楢山節考』を中央公論新人賞に応募し第1回受賞作となり、ベストセラーになった。深沢の処女作であり出世作だった。70歳になると「楢山まいり」(姥捨)を行わなければならない山奥の村に住む69歳になる母と息子が軸となるストーリーだ。1958年の木下惠介監督の映画『楢山節考』キネマ旬報で第1位になる。

今村昌平は、自分の撮るべき世界だと考え現場ロケで映画化する。息子・辰平の役は緒形拳だが、老母・おりんの役がなかなか決まらなかった。杉村春子清川虹子には断られ、二葉早苗は病に倒れる。そこで45歳の坂本スミ子に白羽の矢がたった。1ヶ月で10キロの減量、前歯4本をけずるという役作りをした。その後は、インプラントで40年ほど過ごしている。

NHK「あの人に会いたい」では、「嫁はん、お母さん、歌手、映画」、そして園長先生もやるなど満足している。坂本スミ子は最後に「感謝するとエエこと来るゥ」と語っている。縁のあった仕事に感謝し、全力投球をすると、次の世界がひらけてくる。そういう見事な生涯だった。


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