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「名言との対話」10月31日。桜井長一郎「上見たって何もないですよ、あたしが口でやってるんだから」

桜井 長一郎(さくらい ちょういちろう、1917年(大正6年)10月31日 - 1999年(平成11年)3月4日)は、日本の漫談家、声帯模写芸人。享年81。

東京都出身。素人時代より物真似を得意としていた。軍隊を経て東宝演劇部の社員になる。1948年にNHK素人のど自慢演芸会の演芸部門で優勝し、1952年にプロとなる。

「声のスタイルブック」と自称する声帯模写と漫談で寄席、テレビ、ラジオで活躍。モダンな語り口の漫談を交えながら、政治家、映画スター、女優、落語家、楽器、動物まで、幅広いレパートリーの物真似を披露し人気を博した。

1990年より東京演芸協会会長に就任するが、1999年に会長在任のまま死去した。享年81。後任には牧伸二が就任した。

桜井長一郎の動画を何本かみてみた。歴代総理の声帯模写では、「咳払い」の三木武夫、「あー、ウー」の大平正芳、「だみ声」の田中角栄、福田赳夫、、。俳優では、大河内伝次郎、坂東妻三郎、「おのおの方」の長谷川一夫、三船敏郎、渥美清、森繁久弥、石坂浩二、芦田伸介、宇野重吉、田村正和、、。女優もあった。セリフの前に「ひっ」というクセのある山本富士子、淡谷のり子である。そして金さん・銀さんも、、、。実に面白い。観客の様子をみるとみんな楽しそうに笑っている。いい仕事をしていると感心した。

「声帯模写」という言い方は最近は聞かなくなった。この言葉は、大正末期に古川ロッパという喜劇俳優の造語である。戦前は歌舞伎俳優が中心だったが、戦後は政治家、芸能人など、人々がテレビ、ラジオで接することのできる人が多くなった。

声帯模写師とまで名乗った川上のぼるもいた。歌謡声帯模写という歌まねは今でも人気がある。人以外にも、動物の物まねをするのが得意なのは、江戸屋猫八で4代続く家業になっている。久しぶりにコロッケの物まねもみたくなった。そういった芸のパイオニアが桜井長一郎である。

舞台、映画の時代は、スターの数も少なく、声を聞いたらすぐに誰かわかったらしが、ラジオ、そしてテレビの時代になって、スターも拡散してやりにくいとも語っていた。いずれにしても、声色(こわいろ)の物まねタレントの第一号にして第一人者であった。

桜井長一郎が舞台で琴の音色を真似ながらでてくると、あまりにもそっくりだったことから客席にいたお婆さんは、隠したスピーカーから本物の琴の音を流していると思い込み、天井を覗き込んだ。その様子を見て、「上見てたってダメですよ、あたしが口でやってるんだから」と声をかけたのが大ウケとなった。それ以来、馴染みのフレーズとなって観客をわかせた。

私もこの動画をみたが、「チュワーン、チュワーン」といういきなりの琴の音色を聞いたと思ったら、桜井長一郎の口から出た音で驚いた。芸の力である。

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