「名言との対話」。6月6日。根岸英一「底上げよりもトップクラスを引き上げる、出るくいを伸ばしていく方が全体を引っ張る力になる」
根岸 英一(ねぎし えいいち、1935年(昭和10年)7月14日- 2021年(令和3年)6月6日)は、日本の化学者。ノーベル化学賞受賞者。
満州新京(現・長春)出身。1958年東大工学部を卒業し、帝人に入社。1968年ペンシルベニア大で博士号取得。のち帝人を退社してアメリカのパデュー大学で学び、有機亜鉛をつかい、より効率的なパラジウム触媒クロスカップリング(根岸カップリング)を開発した。1979年パデュー大教授。1996年に日本化学会賞。
2010年「有機合成におけるパラジウム触媒クロスカップリング」の業績で鈴木章、リチャード・ヘックとともにノーベル化学賞(東大工学部出身者としては初)を受賞。同年文化功労者と文化勲章を受章した。
以下、根岸英一の言葉から。
自分のやりたいことができなければならない。「できる」というのは資質が半分、とことんのめり込んで努力することが半分だ。
へこたれずに、崇高な夢を求めなさい。
一つの目的を考え、時に挫折してもへこたれないこと。プラス思考で最後まで頑張る。あきらめないことが重要。
50年その道を歩き続けると結果が出る。
自分は科学者だが、中小零細企業の社長と同じです。
セレンディピティというのは必ずありますよ。ありますけどね。気がつく「元」がなければできませんよね。運がいい人は次から次へ運がよくて、セレンディピティ(にょる発見)を何度も何度も経験してですね。それはセレンディピティ(による発見)を引き寄せる基礎がある。力がある。
日経新聞の「私の履歴書」にノーベル化学賞受賞の根岸英一先生の記事の中に「発見のための10箇条」というものが紹介されていて図解がついていた。私はその図解を材料に大学の授業で修正図を考えてもらい、私の修正図を見せました。すると学生たちが言い出した感想が愉快だった。
「ノーベル賞をとった人でも図解は上手ではないんだな」「先生に図解の描き方を学んだ私たちはノーベル化学賞ととった人よりも図解による伝達力がうまい」「根岸さんの図解はおそらく久恒先生の講義を受講する前のレベルだな」「ノーベル賞をとった人でも図解を描くのが下手なのに驚いた!」「自分で考えた図解が先生が考えた図解に似ていたので考える力がついているのかと嬉しくなった」「ノーベル賞受賞者よりも久恒先生の方が凄いと感じました」。これだけで学生たちに自信がついた。面白かった。
底上げか、トップ集中の育成か。これについては、「トップを引き上げるという戦略は、ボトムアップよりも意外にやさしいんではないですかね。だから競争で選んできて、そういう人をなんとかこうグンと引き上げる。だいたいいつの時代も本質的に大きなことをやっているのは10%以下、いや5%以下かもしれない。そこらへんがガーッと出れば、あとが潤うというか、ついてくると思います」と解説している。
根岸は「出る杭をのばせ」というメッセージを放っている。同じことを語っている人々を探してみよう。平賀源内「良薬は口に苦く、出る杭は打たれる習ひ」。佐治敬三「出る杭はのばす」。堀場雅夫「出る杭は打たれるが、出すぎた杭は誰も打てない。出ない杭、出ようとしない杭は、居心地はよいが、そのうちに腐る」。大山倍達「出る杭は打たれるものさ。それが嫌なら何もしないことだ 」、、、、、。
科学者、経営者、起業家、格闘家など、生死を賭けた激烈な競争の中にある人たちは皆同じことを言っている。「出ない杭、出ようとしない杭は、居心地はよいが、そのうちに腐る」と堀場がいうように、また「全体を引っ張るために」と根岸がいうように、さまざまな場面で「出る杭」をのばすことが大事な局面を迎えているのではないか。