「名言との対話」5月15日。岸井成格「たるんじゃったな、みんな」
岸井 成格(きしい しげただ、1944年9月22日 - 2018年5月15日)は、日本の政治部記者。
慶應義塾大学卒業後、毎日新聞入社。ワシントン特派員を経て、1991年論説委員、政治部長、編集局次長、論説委員長、主筆、特別編集委員等を歴任。2016年3月までTBS「NEWS23」アンカー。TBS「サンデーモーニング」コメンテーター。
第2次安倍政権の特定秘密保護法案や安全保障関連法案などを批判する論陣を張った。2016年2月、放送局に対する停波命令の可能性に言及した高市早苗総務大臣の「電波停止」発言には、田原総一朗氏ら他のジャーナリストとともに抗議声明を発表した。この会見で「権力が強くなれば腐敗し、暴走するのが政治の鉄則。そうさせてはならないのがジャーナリストの役割だ」と、訴えている。
佐高信との対談『保守の知恵』では、「保守とは解決できないことを両者がどうにか平和りに共有し合って、事態を乗り越えていくということ」と語っている。慶應でゼミ同期の佐高信は、岸井は保守だったが、時代が右になって今では左だと言われていると講演で語っていたのを私も興味深く聞いたことがある。
岸井の著書『議員の品格』を読んだ。政治の劣化は、小選挙区制と一票の格差にあるとしている。そして有権者に側にも品格が求められると言い、選ばれた議員は国民の鏡であり、国民にも、そしてメディアにも品格がもとめられると述べている。
「NEWS23」アンカーとしての最後の出演となった放送で、岸井は次のように述べていた。「報道は変化に敏感であると同時に、やっぱり極端な見方に偏らないで、そして世の中や人間としての良識・常識を信じて、それを基本にする。そして何よりも真実を伝えて、権力を監視する。そういうジャーナリズムの姿勢を貫くとうことがますます重要になってきているなと感じています」。
TBS「サンデーモーニング」の司会者・関口宏は見舞いの時の最後の言葉を紹介している。「何か言いたいことない」って聞いたら、一生懸命、彼は声に出そうとして、「たるんじゃったな、みんな」と言った。
岸井成格の遺言どおり、政界も、経済界も、官界も、学界も、メディア界も、すべてにおいて、「たるみ」があると感じる時代になった。そして岸井の死から6年経って、「令和」の幕が開いたのだが、ピンと張った緊張感がゆるみ、「たるみ」はさらに膨らんで、だらしなく、醜い姿をあらわしてきた感じがする。