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レイヴェイが好きというならベイカーも(チェット川柳)

(3 min read)

Chet Baker Sings

『Laufey Digs Jazz』プレイリストでいちばんたくさん選ばれていたのはチェット・ベイカーで五曲。レイヴェイは自分のアルバムでも「Just Like Chet」という自作曲をやっているし、間違いなくチェット・ベイカー好きでそれが最大のインスパイア源ですよね。こないだはエイモス・リーもチェット・ベイカーへのトリビュート・アルバムを出しました。

この事実、ほんとうはちょっとあれだったんですよねえ、ぼくには。大学生のころ最初に聴いたときからずっとチェットはどのアルバムもなんか苦手で、特にヴォーカルがどうしても性に合わないっていうか、長年ガツンとくるブラック・ミュージック・シンガーこそフェイバリットでしたから。

がしかしそれでも愛するレイヴェイが好きというのなら…と、使ったお箸まで舐めたいくらいな心情があるもんで、最近趣味も変化してきたしで、ちょっと気を取りなおして、まずは『Laufey Digs Jazz』に選ばれていたチェットの五曲を抜き出してまとめ、聴きはじめました。

なかでも二曲選ばれている1956年の名作『チェット・ベイカー・シングズ』がひときわ心地いいように聴こえました。約40年間なんど聴いてもピンとこなかったのに、推しの力ってホントおっきいですよ。オープニングの「ザット・オールド・フィーリング」なんて、いまやたまらない快感です。

こういったちょっと軽めのビートが効いた調子いいナンバーこそぼく的には本アルバムで最高の好み。でもたくさんはなくて、ほかに「バット・ナット・フォー・ミー」(これもいいね)と「ゼア・ウィル・ネヴァー・ビー・アナザー・ユー」「ルック・フォー・ザ・シルヴァー・ライニング」だけ。

こうした曲ではヴォーカルもいいし、薄味で涼やかな軽いオープン・トランペットもちょうどいい味つけに聴こえるし、全体的になだらかでおだやか。いまいち乗り切れない内気な恋愛をさっぱり淡々とつづっている様子は、まさにレイヴェイ的。スウィング、ドライヴしているというほどではなく、まったりもしすぎていない中庸さ、それが気分ですよ。

だからどっちかというと暗さ、沈んだブルーな色香がただよっているバラード・ナンバーは、いまのぼくにはまださほどでもなく。といっても曲によりますが、「マイ・ファニー・ヴァレンタイン」「ライク・サムワン・イン・ラヴ」「アイヴ・ネヴァー・ビーン・イン・ラヴ・ビフォー」あたりはもっと時間がかかりそうです。

(written 2022.12.23)

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