いつだって音楽なんかもひとり聴き(川柳)
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Spotifyがないと、もはや生きていけない人間になっちまいましたが、このサブスク・サービスはときたまビックリするほどイヤなことをしてくれます。というのはちょっと前から宣伝されていたSpotify Duoのこと。
こういうプランができたというのをただ言っているだけだったから関係ないやと無視していたんですが、こないだなんかわざわざぼく宛のメールでお知らせしてくださりなさりやがったんですからね。日をおいて二通も。アホちゃうのんか。
いっしょに暮らす二人向けのプレミアム・プラン(プレミアムとはなんでもできる無制限のやつ、ぼくもこれ)というわけで、月額が¥980のままだから、バラバラに登録するより二倍お得というアピールなんですが、そんなもんねえ、こっちはず〜〜〜っとひとりだっちゅ〜ねん。だれかれかまわずこんなメールばらまかないでよ〜Spotify。
コミュ障でいつもひとりぼっちの人間をどうしてこんなふうにいじめるのか、神経をわざと逆なでしてくださっておられるんじゃないかと思うほど不快だったSpotify Duoプランお知らせの販促メール(二通)。二人住まいかどうかSpotify側は確認できないことだからしょうがないとは思いつつ、しかしこのデュオ・プランには重大な誤謬がふくまれているようにも感じます。
それは、音楽(映画でも絵画でも文学でも)ってものは基本「ひとり」でやる行為で、たとえだれかといっしょに暮らしていても孤独な営みなのだという根本が理解されていないかもと思えたこと。ふだんから熱心に音楽を聴いているリスナーには説明無用なことですね。
イベントやコンサートなどの会場で大勢のお客さんといっしょに一個の音楽を聴いているときだって、たしかにみんなで同じものを聴いてはいるものの、ひとりひとりがそれぞれバラバラでステージに正対しているわけなんですから。恋愛や性行為みたいな共同作業じゃありません。つまり、ライヴ音楽の観客は常に集団オナニー。
ここは音楽愛好において決定的な重大事項、本質です。そういえばずいぶん前、ぼくが大学生だった1980年前後あたりに大流行したソニーのウォークマンも、いまのSpotifyのデュオ・プランみたいに、一個の機械にヘッドフォン差し込み端子が二個付いているカップル用のモデルを宣伝していたこともありました。
なんかそんな映像というかテレビCMだったかもしれないんですが、当時見たようなかすかな記憶があたまの隅に残っています。仲のいいカップルが、一個のウォークマンで同じ一個のカセットテープ音楽を仲よく同時に聴ければ…、う〜ん、たしかに楽しいデートになるのかもしれませんけど。
この種の発想は、だからずっと前からあるにはあって、Spotifyが最近急にデュオ・プランを言い出したのだってべつに目新しい商売じゃないんでしょうけどね。どんなに仲のいい同居カップルだって、なにをどう聴きたいか?の好みはバラバラで、人間それぞれ志向性が千差万別だっていう、音楽聴きの根っこの原点を犯そうとするものではあります。
(written 2022.5.20)