ブルーズ界の次世代キング 〜 クリストーン・キングフッシュ・イングラム
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Christone “Kingfish” Ingram / 662
これこれ、これですよ、こういう音楽こそ好きなんですよ、ぼくは。
アリゲイター・レコーズからデビューして三年、ブルーズ界の超新星ともいえるギター&ヴォーカル、クリストーン・キングフッシュ・イングラムの二作目『662』が昨2021年に出ました。デビュー作同様トム・ハンブリッジがプロデュース。
“662” とはキングフィッシュの出身地ミシシッピ州クラークスデイルの電話市外局番で、だからある意味ルーツ回帰宣言みたいなものなんでしょうか。といってもデルタ・ブルーズをやっているわけじゃありませんが、もちろん(歌詞には出てくる)。
こってりとヘヴィ&タイトにドライヴするファンク・ブルーズをやるのがキングフィッシュの持ち味で、ちょっぴり往年のプリンスを思わせるところもあります。ロウダウンなダーティさはほぼなく、都会派ですね。
タイトル・トラックの1曲目からパワー全開で突っ走るキングフィッシュ。聴きどころはひととおり歌が終わってバンドの演奏が一瞬止まり、あいだをおいてから敢然とはじまる弾きまくりギター・ソロ。いやあ、こういったファンキーなブルーズ・ギター・ソロを2022年のリアルタイムな音楽として聴けるなんてねえ、感無量です。
2曲目以後もさまざまにグルーヴのタイプを変えながら、ジミ・ヘンドリクス、エリック・クラプトン、バディ・ガイらの衣鉢を受け継ぎ、現代のホワイト・ストライプスやブラック・キーズとも呼応しながら、ひょっとしたらジョージ・クリントン、ブーツィ・コリンズなんかとも共振できるような音楽がこれでもかと展開されています。
ブルーズはもうすっかり「過去のもの」だみたいなとらえられかたをするようになっているかもしれませんが、それでもいまだにときおりこういう大型新人が出てくるあたり、アメリカン・エンタメ・ミュージック界の健全さ、ふところの深さを感じずにはいられません。
(written 2022.3.14)
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