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ジャズとアフロビートとヒップ・ホップ 〜 トニー・アレン

(3 min read)

Tony Allen / There Is No End

ブルー・ノートから発売されたトニー・アレンの遺作『ゼア・イズ・ノー・エンド』(2021)は今年五月のリリースだったもの。ゆっくり楽しんでいるうちに書くのを忘れていて、夏を越え、もう深秋となってしまいました。が、やっぱりちょこっとメモしておきましょう。

どんなアルバムで、どういう経緯でどうやって制作され、一曲一曲だれが参加しているか、みたいなことについては、すでに多くのテキストがネット上にあるので、ぼくは個人的な印象だけをちょちょっと短く記せばいいかと思います。

『ゼア・イズ・ノー・エンド』、ヒップ・ホップ作品だと思うんですが、トニーのドラミングだけに耳を傾けていると、柔軟に、ジャズ〜ファンク/アフロビート〜ヒップ・ホップを縦断する自在でしなやかな叩きかたをしているなという印象があります。

ラップにあまり興味のない人間としては、どうしてもバックの演奏を聴くんですが、このアルバムはどうやらあらかじめドラムスとベースだけのベーシック・トラックから録音した(時点でトニーが亡くなった)らしいので、その意味でもいっそうこのドラミングのしなやかさに耳が行くというもの。

それで、トニーのスタイルってずっと前からこんなだと思うんですよね。ジャズをやっていたころから変わっていない。アフロビート・ドラマーの代表のようになっても同じで、この遺作でヒップ・ホップに挑戦しても特に変わらない叩きかたをしているように聴こえます。

だから、音楽としてチャレンジングということはあると思いますが、ドラミング・スタイルはもとからいろんな音楽、それこそ現代的な先鋭にも対応できる柔軟性を最初から身につけてきていたひとだよなあというのが率直な感想ですね。ヒップ・ホップをやっても、ジャズをやるときと同じ叩きかたで対応できている。

特にそれがよくわかるのが、アルバム8曲目の「One Inna Million」で、ここで聴ける独特のスネアとベース・ドラムスの細かなパターンを、たとえば2017年のアルバム『ア・トリビュート・トゥ・アート・ブレイキー・アンド・ザ・ジャズ・メッセンジャーズ』2曲目の「ナイト・イン・チュニジア」でのそれと比較してみてください。同じパターンを使っているのがわかるはず。

つまりこういうのがトニーならではのスタイル、独自色で、どんな音楽をやるときでも一貫してこういう叩きかたをしているんですよね。それでジャズにもアフロビートにもヒップ・ホップにも対応できて、違和感がないっていう。驚きですよねえ。

だから、ある意味、おそるべき柔軟性、しなやかさです。そんなドラマー、ほかにいるとは思えませんから。

(written 2021.10.31)

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