いまだ健在、往時のままのメンフィス・ソウル 〜 ウィリアム・ベル
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William Bell / One Day Closer to Home
bunboniさんのブログで知りました。
オープニングの「I Still Go to Parties」には、まだまだ現役でやっているよっていう、つまり曲題からしてですね、そうしたベテラン・ソウル歌手ウィリアム・ベルの気概みたいなものが全編ににじみ出ている新作『One Day Closer to Home』(2023)がとってもいい。
「I Still Go to Parties」はどっちかというとファンク・チューンですが、アルバム全編ではまごうかたなき正統派メンフィス・ソウルが展開されていて、60/70年代の雰囲気。でもこれ、この歌手はずっとこういう音楽をやってきたのが83歳でもそのまま衰えず健在だっていうことなんですからね。
最近の新人じゃないんだし、いまどき流行のレトロ・ソウルとかではありません。個人的にはべつにレトロにネガティヴな感情など持っていないどころか大好きですが、ウィリアム・ベルの本作は味わいが違いますよね。
年輪を重ねていっそうヴォーカルに深みとコクと芳醇さを増しているし、しかもきわめて自然体でスムース。自分のなかにある歌がそのままストレートに表出されているのがわかって、それがここまで円熟したまろやかさをみせているのはすばらしいことです。
人力楽器演奏だけですべてを組み立てた伴奏陣といい、2023年でもこうしたアメリカン・ブラック・ミュージックは健在なんである、やろうと思えばやれるんであるという迫力をまざまざと示しているようで、さすがはベテランならではの境地だよなあと感心します。
(written 2023.5.27)