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奇跡の生命力 〜 オマーラ・ポルトゥオンド最新作

(2 min read)

Omara Portuondo / Vida

キューバの歌手オマーラ・ポルトゥオンドの新作『Vida』(2023)が出ました。しかもねえ、ワールド・ツアーまでやるっていうんだから、この92歳はどないなっとるんやぁ。ぼくの母親よりずっと歳上なんですけどね。

この最新作を聴いたって、重ねた年輪で枯れて渋淡くなり味わいが出てきたとか歳のわりにはがんばっているとか、そういう世界じゃないんですからね。現役最前線のハリとみずみずしさで、92歳でここまでノドが衰えないのは奇跡と思えてきます。

年寄りでも歌えるゆったりしたボレーロやバラード系が中心じゃないかと指摘する向きがあるかもですが、オマーラは若いころからずっとそう。たしかに今作も美しいボレーロは多く、しかもその美しさにはいっそう拍車がかかっていて、生命力に満ちあふれた歌唱は、アレンジ・演奏のすばらしさもあいまって、聴く者の胸を打ちます。

さまざまな(主に)ラテン系ミュージシャンとの共演が多くを占めていて、なかにはなぜかのケブ・モもいたり(ほんとなぜ?)、英語で歌うジャズ・ナンバーとかあったりしますが、多くはオマーラの音楽性をふまえた起用になっているかなと思います。

個人的に大きく感動したのは、特に4「Duele」(with ゴンサロ・ルバルカバ on piano)と9「Honrar La Vida」(with ルベーン・ブラデス)の二曲。ナイロン弦ギターとストリング・カルテットの伴奏で歌う後者は説得力に満ちているし、ピアノ伴奏だけでしっとりつづる前者も落ち着いていてマジきれい。

1「Bolero A La Vida」(with ギャビー・モレーノ)、名曲の2「Silencio」(with アンディ・モンタネス)なんかもすばらしいとしか言いようがないし、共演歌手よりオマーラのヴォーカルのほうが圧倒的にパワフルなのにはことばがないです。

伴奏サウンドも細部まできわめてていねいにつくりこまれていて、名作が誕生したとの思いを強くします。

(written 2023.5.21)

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