なめらかスムースなルイ・ジョーダンが好き
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Louis Jordan / Let The Good Times Roll: The Anthology 1938-1953
ジャイヴやジャンプの話をしなくなりました。当然ですよ、もはやレトロ・ジャズ・ポップスなどあっさり淡白な薄味音楽こそ最愛好品になったんですから、濃厚なブラック・ミュージックを聴く気にあまりなりません。
ちょっと「ジャンプ」というワードでブログ内検索をしてみたら、2022年5月21日づけクーティ・ウィリアムズ楽団の記事が最新になっています。あれっ、わりと最近じゃん。でもずっと前はこれでもかと続々書きまくっていましたから。
常に最新型のものがどんどんリリースされるという世界ではなく、ジャイヴなら1930年代、ジャンプは40年代と、限られた作品点数しか存在しませんから、いったんひととおり書き終えてしまうと題材がなくなってしまうというのも理由でしょうけど。
そんななか、いまだくりかえし聴き続けている代表がルイ・ジョーダン。ルイの音楽もジャンプに分類されているわけですが、そのへんは、なんというかジャズでもブルーズでもなんでもいいじゃん、それらまぜこぜ一体化したあたりに真骨頂があった音楽家だというのは意見の一致するところでしょう。
約10年後のチャック・ベリーにダイレクトにつながっているということを考えたら、ロックンロールの先駆者でもあるわけで、ってことはビートルズもローリング・ストーンズもルイ・ジョーダンがいなかったら誕生しなかったと、ルーツをたどればそういうことになります。
ルイ・ジョーダンの歴史的重要性をいくら強調してもしすぎることはないゆえんですが、しかしその音楽に決してとんがった激しさはなく、奇妙奇天烈でもありません。どっちかというとむしろ丸くてなめらかで、聴きやすいスムースさがあると思いませんか。
この点こそぼくがルイ・ジョーダンを聴き続けている大きな理由。最高に楽しいんですけど、決してエッジが鋭くない。きょう最初に書いた「あっさり淡白な薄味音楽」とは言えないですが、それに近い質感がその音楽にはある、そういう印象というか肌心地がするっていうのがですね、いまのぼくにはちょうどいいんです。
これはむかしから感じていたことで、であるがゆえにかつてルイ・ジョーダンのことはイマイチに感じていました。アルト・サックスもヴォーカルも曲調もなめらかで、決してハード・ブロウしないそんなルイの音楽は、要するにガツンとこないんです。だからブラック・ミュージックとしてちょっとものたりない面があると感じていたかも。
1940年代にいっぱいあったジャンプ系バンドはほとんどが大人数編成でしたが、ジャズでありながら強いビート感とブルーズ・フィール、メインストリームからハミ出すキテレツさ、日常的で卑近で猥雑な表現など、どこをとってもおよそ「上品さ」からは程遠い内容を展開していました。
しかしルイ・ジョーダンだけはその音楽のなかに一種の育ちのよさっていうか、クラッシーさ、おだやかなまろやかさをたたえていたよなあっていうのが、だからむかしはそこがイマイチだったけど、いまとなってはちょうどいい、これぐらいが心地いいんだよと感じられるようになりました。
(written 2023.1.23)
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