ジャズやラテンなブルーズもいい 〜『イン・ザ・ルームフル・オヴ・ブルーズ』
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Roomful of Blues / In A Roomful of Blues
萩原健太さんのブログで教えていただきました。
1977年レコード・デビューのベテラン白人ブルーズ・バンド、ルームフル・オヴ・ブルーズの2020年新作『イン・ア・ルームフル・オヴ・ブルーズ』に、いまの時代の音はありません。2020年ならではっていう新しさ、革新性などはまったく聴きとれませんよね。当然です、ブルーズ・バンドなんですから。むかしから変わらない路線をずっとひた走っているんですね。前から言いますように、ぼくもこういった相変わらずのブルーズ・ミュージックのことが大好き。
健太さんに言わせれば白飯と味噌汁の味わいということで、まさにそうですよね。むかしからなにひとつとして変わらない、というところにこういった音楽の美点があるんで、一部の音楽評論家のみなさんはそこんところ勘違いなさっているのでは?という気がしますよ。ぼく自身は自分の好きな音楽、自分が楽しいと感じる音楽だけをひたすら聴き続けていきたいと思います。
アルバム『イン・ア・ルームフル・オヴ・ブルーズ』ですと、前半はわりとストレートなモダン・ブルーズだなと思うんですけど、ちょっと感じが変わるのは6曲目「シー・クイット・ミー・アゲン」からですね。ムーディなジャズ・ブルーズなんです。ちょっと古めかしい、しかし心地いい、こんな雰囲気がやっぱり好きですね。ジャズ・テイストのブルーズはこのアルバムにほかにもあります。
7曲目「シーズ・トゥー・マッチ」も、なんだか1930年代後半のスウィング・ジャズ系ビッグ・バンドがよくこんな感じの曲をやっていたと思いますし(ベニー・グッドマン楽団の「シング、シング、シング」にちょい似)、っていうかブギ・ウギを土台にしているということなんでしょうけどね。ブギ・ウギはこのアルバムのなかでも血肉となっていたるところに溶け込んでおります。
タイトルもそのまんまの11曲目「トゥー・マッチ・ブギ」なんかもそんな一曲で、完璧なブギ・ウギ・ベースのジャンプ・ミュージックとなっていますよね。バンドのホーン陣もいきいきと活躍していて聴きものです。この曲もビッグ・バンド・スウィング〜ジャンプ系のジャズ・ブルーズ・チューンだとしてさしつかえないでしょう。
アルバム・ラスト13曲目「アイ・キャント・ウェイト」もジャズ・チューンですが、これはどっちかというと「ルート 66」みたいなポップ・ソングに寄っていっているものだとするべきかもしれません。それも楽しいですね。そうかと思うと、このアルバム後半にはジャズ・ブルーズだけでなく、アメリカ南部や中南米ふうのラテン調ブルーズだってけっこうあるんですね。
8曲目「ハヴ・ユー・ハード」がなんとザディコですし、アコーディオンまで使ってあります。ピアノの弾きかただってルイジアナ調に合わせてあるんですね。9曲目「ウィード・ハヴ・ア・ラヴ・サブライム」もリズムの跳ねる感じやホーン・リフの入りかたがラテンっぽいですが、ド直球のストレート・ブルーズである10曲目「カーシノーマ・ブルーズ」(アルバート・キングっぽい)を通過した、12曲目「レット・ザ・スリーピング・ドッグ・ライ」がこれまたラテン・ブルーズなんです。
やはりアルバート・キングの、「クロスカット・ソー」に似ていると思うんですけど、このリズム・パターンといい、ホーンズのリフもラテン・タッチでスタッカート気味に入りますし、いいですよね、こういったラテン・ブルーズ。今日話題にしたアルバム『イン・ア・ルームフル・オヴ・ブルーズ』では、後半にあるこんな要素も楽しく聴けました。
(written 2020.4.20)