爽快な演奏を聴かせるマルチニーク・ジャズの新星ピアニスト 〜 グザヴィエ・ベラン
(3 min read)
Xavier Belin / Pitakpi
マルチニーク出身の若手ジャズ・ピアニスト、グザヴィエ・ベラン(Xavier Belin)のデビュー・アルバム『Pitakpi』(2021)。本年リリースのジャズ作品のなかでは(ジャズに入れていいなら)パトリシア・ブレナンのソロに続くカッ飛んだ傑作でしょう。
2021年ジャズ上半期のクライマックスかもしれないこの作品、グザヴィエのピアノのほか、ヴァイブラフォン、エレキ・ベース、ドラムスのカルテット編成。大半がマルチニークにゆかりのあるミュージシャンたちです。
それなもんで、アフロ・カリビアンなマルチニークのリズムを大胆かつ濃厚にとりいれたジャズをやっているのが印象深いところ。といっても、カリブ音楽をまったく知らないファンが一聴して、じゅうぶんオッ!と思える清新な音楽性を発揮していますけれども。
特に耳をひくのがピアノとヴァイブの音の粒立ちがクッキリしていること。ここまで粒立ちがよくて太い音でスピード感満点に弾きまくられると、もうそれだけで圧倒されそうな感じですが、特にテンポのいいアップ・ビート・ナンバーなんかでは特に爽快に感じます。
バンブー・フラペ(竹筒打楽器)をチブワ(スティック)で叩くサウンドで幕開けする1曲目の「イントロ」からそのまま切れ目なくメドレー形式でなだれこむ2曲目「Bagay cho」の快感なんか、マルチニーク・リズムの活用とあいまってピアノのサウンドの粒立ちのよさがきわだっていて、もうホ〜ント気持ちいいったらありゃしない。
3、4曲目なども、特に4「Mz4」かな、ヴァイブとピアノの合奏でやるキメがカッコよくて、豪快で壮観。うねるエレベのグルーヴも気持ちいいですよね。ドラマーもふくめ四人が一体となって演奏するこのアンサンブル/ソロのキメのすばらしさに鳥肌が立つ思いです。
ちょっとした聴きものは9曲目のセロニアス・モンク・ナンバー「エヴィデンス」。これをグザヴィエらはマルチニークの伝統リズムであるベレを活用して、完璧なるカリビアン・ジャズにしたてあげているんですね。冒頭から「イントロ」と同じタッ、ピ、タッ、ピ、タッというチブワで奏でるリズム・パターン(がアルバム題のゆえん)が鳴っているでしょう、一曲とおしてそのリズムが維持されています。
数曲あるゆったりめのナンバーでは、ときどきデューク・エリントンが聴かせたようなフランス印象派ふうのピアノ演奏も聴けますが、それらでもグザヴィエのきびきびしたサウンドの歯切れと粒立ちのよさは活きています。
(written 2021.4.11)
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?