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おっそろしく速いフレーズを弾きまくってあっという間に終わってしまう 〜 ウェイン・クランツ

(4 min read)

Wayne Krantz / 2 Drink Minimum

この音楽家のことは bunboni さんに教えていただきました。

いやあ、もう惚れちゃいました。あまりにもカッコイイ。ギターリスト、ウェイン・クランツ(Wayne Krantz)のことで、1995年録音・発売のライヴ・アルバム『2 ドリンク・ミニマム』があまりにすばらしく、大好きになっちゃいましたね。ニュー・ヨーク・シティにあるウェインの拠点 55・バーが舞台で、リンカーン・ゴインズ(ベース)、ザック・ダンジガー(ドラムス)とのトリオ編成。ウェインはギター・トリオでわりと作品を出しているみたいですね。

このアルバムでは、なんといっても1曲目の「ウィッパースナッパー」があまりにもカッコよすぎて、ウェインのことをそれまでまったく聴いたことなかったぼくが、一発でこのギターリストに惚れちゃったくらいの魅力的な弾きっぷりじゃないかと思うんですね。とにかくちょっと聴いてみてください。かっ飛ばす爽快感にノック・アウトされるんじゃないですかね。

「ウィッパースナッパー」では(ほかの曲でも)主役のギター演奏だけをフィーチャーしていて、ベースとドラムスのソロみたいな時間はありません。けれども特にドラムスのザック・ダンジガーはかなり活躍していると言っていいんじゃないですか。手数の多いにぎやかなドラミング、大のぼく好みです。シンバルの使いかた、スネア・ワークなどカッコイイし、そのほかドラミング全体で演奏を牽引しています。ファンキーですよね。

そんなドラミングに乗ってウェインが超快調に弾きまくり爽快感をふりまいています。とにかくぼくが惚れちゃった「ウィッパースナッパー」では高速で難度の高いフレーズをいともたやすく弾きこなし、弾きこなしすぎるからどのパッセージもあっという間に通り過ぎてしまい、流れはスムース。しかしギターならではのフレイジング、演奏だなということはとてもよくわかります。骨の髄までギターリストなんでしょうね。

「ウィッパースナッパー」では、出だしから中盤、終盤と快調すぎるほど快調にかっ飛ばすウェイン。なめらかな弾きこなしながら、強調するところはそれでもちゃんと聴かせどころをつくりアピールしています。アウトバーンを高速でぶっ飛ばしているような、全体的にこの曲はそんな演奏ぶりですけど、たとえば終盤の 5:00 〜 5:08 あたりでは客席から思わずの歓声が漏れるのでもわかるようにションベンちびりそうな快感ですね。な〜んてカッコイイんだ!

6分48秒の演奏ですけど、気持ちよすぎて、目が点になりながら聴き惚れているあいだに、あっという間に終わってしまう、まるで一陣の風のように吹き抜けて、聴き手の耳をとらえたままさわやかに行き過ぎる、それで絶対に忘れられない強い、香り高い印象を残す、そんなギター演奏ぶりじゃないですかね、この「ウィッパースナッパー」は。

ウェインのギターには、ジャズだとかロックだとか、なにか特定のジャンルの色を感じるようなところがあまりありません。こういったギター・トリオ編成でのインプロ・プレイは、あえて言えば「ジャズ・ロック」ということになるんでしょうが、どこにも分類できない、はまらない、ウェインだけの無色透明感、クリスタルのような輝きをぼくは感じます。ギター・インプロという一個のジャンルなんじゃないかと思えますね。

(written 2020.5.7)

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