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すばらしいキレ味のギター・サウンド 〜 ミス・テスのパーラー・ミュージック

(4 min read)

Miss Tess, Thomas Bryan Eaton / Parlor Sounds

萩原健太さんに教わりました。

ミス・テスというシンガー・ソングライター。メアリーランド育ちのアメリカ人で、いまはナッシュヴィルを拠点にしているみたい。ヴィンテージなジャズ、ブルーズ、カントリーを混合折衷したようなおだやかな室内音楽をやっています。

その最新作『パーラー・サウンズ』(2021)をとりあげた健太さんのブログ記事でぼくは出会ったわけですが、これがなんともいえずぼく好み。フィジカルはBandcampか本人の公式サイトで売っていて、ぼくはもちろんサブスクで楽しんでいますよ。

『パーラー・サウンズ』というアルバム題は、まさに応接間でやるような音楽だということと、ミス・テス&トーマス・ブライアン・イートン(プロデューサーも兼)の二名ともパーラー・サイズのヴィンテージ・ギターを弾いているというところから来ています。

パーラー・ギターとは通常のアクースティック・ギターよりもワン・サイズ小ぶりのものを言い、まさしく応接間など小さい空間でちょうどよく響くもの。携帯用のいわゆるトラヴェル・ギターよりはちょい大きめですね。

ミス・テスが1940年のレコーディング・キング社製、トーマス・ブライアン・イートンが1951年のハーモニー・ステラをそれぞれ演奏し、楽器伴奏はそれだけ。ヴォーカルはもちろんミス・テスで、それらスタジオでの一発ライヴ収録だったそう。曲によりかすかにバック・コーラスが聴こえるのは同時収録かダビングかわかりません。

曲はオープニングの「シュガー・イン・マイ・ボウル」を除きすべてミス・テスのオリジナル(ライター・クレジットはTeresa Reitz名)で、もちろんそれがいいんですが、アタックと切れ味の強く鋭い二名のギター演奏が最高にぼく好みなんです。

まるで滑舌がすばらしくいいアナウンサーの実況を聴いているかのようなハキハキしたキレのいいサウンドで、ピッキングが鋭強で明快なおかげなんでしょう。聴いているだけで気持ちよくて、たとえば 1曲目「シュガー・イン・マイ・ボウル」では間奏で二人が順にソロを弾いていますが(どっちがどっちかはぼくには聴解できず)そこからして惚れちゃいました。特に後半の二人目。ほんとどっち?

この二人目のギター・ソロで聴けるとても強くてシャープなアタックとなじみのいい歌心は、ヴォーカルのオブリガートで聴こえるスタイルと同じものだから、トーマスのほうなんですかね?大の好みです。だれかわかるかた、教えて!

レトロな味をたたえるミス・テスのソングライティングとヴォーカルはもちろんすばらしいです。このアルバムだと伴奏が二名のアクースティック・ギターだけですから、それでもってグルーヴをつくっていくその様子に自然と耳がいくと思うんですよね。

そんなギターだけでのアクースティック・サウンドに乗せて、ゆったりジャジーな曲から、ブルージーなミディアムもの、ぐいぐいロールするアップ・テンポものまで、ミス・テス自身の人気レパートリー(を再演したものらしいです、このアルバムは)をひょうひょうと聴かせてくれています。

シンプルでキレ味があまりにもいいギター・サウンドが快感なのと、そもそもこういったヴィンテージなジャジー・ポップが大好物なこととで、ぼくなんかにはこたえられないアルバム。いい音楽家に出会えてうれしいです。

(written 2021.12.5)


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