例外的なみごとさがあたりまえの日常となったソナ・ジョバーテの最新作
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Sona Jobarteh / Badinyaa Kumoo
待ったよ〜、ソナ!ガンビアのグリオにルーツを持つロンドナーのコラ奏者、ソナ・ジョバーテ最新作『Badinyaa Kumoo』(2022)がようやくリリースされました。デビュー・アルバムだった前作『Fasiya』(2011)に惚れ込んだものの、次がなかなか出なかった。首を長〜くしていましたよねえ。
今作は前作ほどのさわやかな衝撃はないものの、それはこっちがソナの音楽にすっかり慣れ親しんだがゆえであって、内容としては前作を凌駕する傑作といえるでしょう。72分という長さはいまどきの新作として例外的ですが、ずっしりした手ごたえを残す充実のアルバムで、待った甲斐がありました。
音楽性そのものは一作目から変わっておらず、1曲目からフル・パワーで疾走しています。アルバムの山脈はやはりユッスー・ンドゥールをむかえた3、親交の深い同じ楽器奏者バラケ・シソコとのデュオで美しく魅せる4あたりからでしょう。特に後者なんか静かでクールだけど息を呑むような輝きがサウンドにあります。
西アフリカらしい柔軟でしなやかなポリリズムで乗る5もみごと。11年のキャリア経過で呼べるようになった大物ゲストのたぐいはいませんが本作最大の白眉かもといえるノリいい痛快でグルーヴィな一曲ですね。7、8もいいな。8は前からシングル・リリースされていたもの。
アルバム収録曲はすべてソナの自作で、コラとヴォーカルだけでなく、ギター、ベース、パーカッションなど多くの楽器を一人多重録音でこなしています。前作の『Fasiya』にノックアウトされていたぼくは、反応が薄いとみるやブログでなんどもくりかえし賞賛しましたが、音楽的なスケール感では今作のほうが上。
でもソナのすばらしさ、音楽の強靭な美しさ、コラ演奏のきわだった腕前など、よく知るところとなりましたから、「な〜んてカッコいいんだ!」と驚いてひっくり返るなんてことはもうありません。なにより心地よく快感だし、毎年三冠王をとっている野球選手みたいなもんで、音楽の例外的なみごとさがあたりまえの日常となってしまったくらいなソナ・ジョバーテであります。
(written 2022.10.6)
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