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ルイーザ・ソブラルがお気に入り(2)
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Luísa Sobral / Luísa
すっかり気に入ってしまったポルトガルの歌手ルイーザ・ソブラル(Luísa Sobral)。昨日も書きましたように快活で歯切れよくリズミカルにというより、ふわっと漂うような雰囲気、それからおだやかさ、芯の強さ、しなやかさといったあたりが声に聴きとれるのがこのひとの大きな特色でしょう。2010年代以後の新世代女性ジャズ・シンガーと呼んでさしつかえないと思います。
今日はこれも好きな2016年作『ルイーザ』の話題ですが、やはり前作『Lu-Pu-I-Pi-Sa-Pa』同様アクースティックな楽器演奏サウンドが中心です。レトロでノスタルジックな香りが強くただよっていた前作に比すれば、『ルイーザ』のほうはまだちょっとだけモダンなのかも。それでもやはりオールド・ジャジーなポップ・ソング・スタイルだというのは同じですね。こういった古風でジャジーな感じでちょっとキュート&ユーモラスにやるのがいまの流行なんでしょうか。
前作と大きく異なり英語で歌うものがわりとあるアルバム『ルイーザ』にもストレート・ジャズみたいな曲が複数あります。4曲目、8曲目なんかはメインストリームのジャズ・ビートを持っていて、曲、演奏、ヴォーカル・スタイルもジャジー。後者ではヴァイブラフォンが控えめに聴こえるのも効果的にムードをかもしていますよね。アクースティック・ギター(マーク・リボー)が効いているのは今作ならではの特徴でしょう。
そうかと思うと9曲目はなぜだか三連のサザン・ソウルふうバラードで、こういったのはルイーザの前作には聴けませんでした。むろんこんな音楽だってじゅうぶん古風ですけどね。エレキ・ギターの三連リフ反復と、間奏ソロもレトロなオルガンで、というこの曲は、アルバム中それでもやはり異色。そういえばアメリカのダヴィーナ&ザ・ヴァガボンズの初期アルバムもそんな感じで、全体的にはオールド・ジャズっぽいレトロ・ポップスを志向しながらそのなかにちょっぴりサザン・ソウル・バラードがまじりこんでいましたよね。
アルバム『ルイーザ』では、しかしそんなのはこれだけ。10曲目からまたふたたびレトロ・ジャズ路線に戻ります。その10曲目もクラリネット(とギター)が活躍するもので、ビートもストレートな2/4拍子。これもこのアルバムにあるメインストリーム・ジャズ・ソングのなかの一曲でしょうね。ここで(だけ?)は、ふだんと違ってルイーザもなかなか小気味よく歌っているのが印象に残ります。
その後はまたジャズ・ベースのキュート・バラードみたいなものに戻り、そういうのがルイーザの本領だろうなと思うんですね。やさしくやわらかく声を乗せていくルイーザのヴォーカルのおだやかさと、それからなんといってもこんな歌を書けるっていうソング・ライティングに好感が持てます。アルバム・ラストの12曲目は、3曲目同様ほぼマーク・リボーのギターとのデュエットで。
(written 2020.3.14)