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しんどいとき助けになる音楽(64)〜 クリフォード・ブラウン with ストリングス

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Clifford Brown with Strings

駄盤の代表のようにむかしは言われた『Clifford Brown with Strings』(1955)。そう、駄盤っていうことばがかつてはありました。ひどい言いかただよねえ。いまでも使うひといるのかな。名盤の反対語みたいな感じでジャズ評論の世界では存在していて、その影響で一般のファンも使ったりして。

音楽家がていねいにつくりあげた作品を駄盤なんてことばで一刀両断するとはとんでもない話ですよ。そもそもジャズにおけるウィズ・ストリングスものはそういうふうに言われることが多く、どれも大好きだったぼくなんかずいぶんつらい思いをしたもんです。

そんなのは(フュージョン否定ともども)きわめて20世紀的な言説であって、いまやきれいで楽しいものは素直にそう言えばいいという時代になってきたと思いますから、ブラウニーのウィズ・ストリングス作品もそろそろ正当に評価されてほしいです。

いつものクインテットにニール・ヘフティ・アレンジのストリングスが参加して、バンドの音はほとんど目立たず、美しいストリング・アンサンブルに乗せてひたすらブラウニー一人が淡々ときれいに吹き上げるだけっていう世界は、一般のポピュラー・ミュージック・ファンのあいだでなら賞賛されるものでしょう。きれいだもんね。

ジャズもポピュラー・ミュージックの一員であるならば、辛口でハード・ボイルドな世界ばかりが高く評価されるのみではちょっとね。本作のようにもともときれいなメロディを持つ有名スタンダードをどこまでも甘く美しく演奏するといった音楽だって評価されてほしいと切に願う次第であります。

こうしたどこまでもおだやかに、ただただ淡々と、きれいなメロディをそのままつづるのみっていうようなものは、心身ともに傷つき弱っている立場にとっては格好の癒しになるんですから。

駄盤とか、あんまり否定しないでいただきたいなと。

(written 2023.12.18)

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