ゆったり流れる静かな時間 〜 以莉.高露
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以莉.高露 / 尋找你
Música Terraで知りました。
台湾はアミ族のシンガー・ソングライター、以莉.高露(イリー・カオルー)の最新アルバム『尋找你』(2021)がとってもさっぱりしていておだやかで、時間がゆっくりゆっくり流れていくみたいな自然のおおらかさがあって、最高に好み。
イリーはみずからナイロン弦ギターも弾いています。アミ族の音楽家ということで、その伝統要素も色濃く感じさせながら、さらにややカリブなクレオール・ミュージックの色がやわらかくただよっているのもいいですね。アフリカンなオーガニックさも感じます。
もう1曲目からそんな感じで、お聴きくだされば、この緑と花でかこまれ蝶や小鳥がひらひら舞っているなかをゆっくりのんびりお散歩しながら小川のせせらぎをながめ音を聞いているっていうような、そんなおだやかムードはどなたでも感じていただけるはず。
音楽だからオーガニックといってもあれなんですけども、このアルバムにかんしてはことば本来の農業的な意味でオーガニックな色彩感があるぞという、そんなことまで言いたくなってくるような、そんな天然コットン100%っぽい肌心地のよさがあります。
3曲目まではずっとそうで、控えめに控えめに、そっとフェザー・タッチでやさしく触れてくるみたいなヴォーカルとサウンドなんですけども、4曲目に香る官能的退廃は、ほぼアルゼンチン・タンゴのそれじゃないかって思うくらい。だからどこまでも洗練された音楽なんですね。
かと思うと次の5曲目は先住民音楽を活かしたようなトラディショナルなもので、都会的洗練より野卑さを、というのは違うか、つまりちょっと自然の森林や海を強く感じさせる音楽で、素朴な音楽だとの印象を持ちます。
その後アルバム・ラストまで純朴さとソフィスティケイションが共存するようなフィーリングで曲が進み、ジャズがかなりベースになっている部分もある音楽家だと思わせつつ、民族の音楽伝統をうまくソフトな衣でつつんで当たりをやわらかくした手法は、やっぱり高度に洗練されたものに違いありません。
(written 2022.10.10)