ギリシアン晩夏 〜 オレスティス・コレトス
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Orestis Koletsos / Me Plimmirizei Fos
その後もときどき思い出して聴いているギリシアのブズーキ奏者、オレスティス・コレトスの『Me Plimmirizei Fos』(2013)。このころまだサブスク・サービスはなかったし、ぼくも14年にエル・スールでCD買いました。ブログで一度書いたのは16年のこと。
季節に応じ表情を変える深い音楽で、冬には冬向けのいい感じになってくれるし、ちょうどいまの晩夏時期にもぴったりくるフィーリングをかもしだすので、このところまたくりかえしかけていたっていうわけ。ちょっと思い出して手短にメモしておこうかな。
このちょっとうらぶれた感、翳りでもって、終わりゆく夏を惜しむ寂寥がよく味わえるアルバムで、特に1、3、4、5、7、8、10曲目あたりかな、暗めで哀しげな地中海世界の退廃みたいなフィーリング、元気だった夏が去りかけて夕陽が傾いてきたような、そんな世界観に聴こえなくもありません。
アクースティク・ギター&ブズーキの音色と参加歌手(オレスティス自身も二曲歌う)の声が、そんな哀感を増強しているように思うんですよね。ラテン・テイストも加味された曲のメロディ・ラインがそもそもそんな動きで、最盛期は古代だから国家として日が傾いて長いギリシア独特のメランコリアみたいなものが、知らず知らずと音楽にもこうして表出されるのかも。
特にアルバム終盤二曲ではオレスティスがブズーキ演奏のみごとな腕前を披露しているような部分もあったりもします。哀感強めといっても、全体的に重くもしつこくもなく、不思議にさっぱりした聴後感を残すさわやかな風味もあるアルバムで、いまは晩夏だからこんなふうに聴こえますけど、秋には秋、新緑の春にはこれまたふさわしく鳴る音楽。だれもそんなこと言わないけどひそかな傑作かもしれませんよ。
(written 2022.9.10)