多彩なゲスト参加で攻めるディオンの新作ブルーズ・アルバム
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Dion / Blues with Friends
萩原健太さんに教わりました。
80歳にして驚異的に声が衰えないディオン。今2020年の新作『ブルーズ・ウィズ・フレンズ』は、アルバム題どおり友人ミュージシャンたちを一曲ごとに替えながら迎えて行ったブルーズ・セッションズ。といっても必ずしもブルーズとはいえないものもふくまれていますが、大半がなんらかの意味でブルーズ・チューンと言えるもので占められているとしていいでしょう。
一曲ごとに替わるゲストがこりゃまた豪華で、ジョー・ボナマッサをはじめとして、ブライアン・セッツァー、ジェフ・ベック、ジョン・ハモンド、ヴァン・モリスン、サニー・ランドレス、ポール・サイモン、ブルース・スプリングスティーン、ローリー・ブロックなどなど、そうそうたる顔ぶれなんですよね。多くのばあいギターリストが招かれていますが、ハーモニカやヴォーカルのゲストもいます。
ディオンだからこそできたこんな贅沢な企画、アルバムの中身もその期待に反しない充実の内容になっているんですね。いちばんの聴きものはやはりディオンのヴォーカル。最初に書きましたが、ホント80歳でどうしてこんなに声が若いんだろう?と不思議に思っちゃいます。ゲストもベテランばかりですが、ハツラツとしていて、互いに刺激を受けあいながらセッションを進めていった様子が目に見えるようです。
1曲目の直球ストレート・ブルーズ「ブルーズ・カミン・オン」から絶好調ですが、ちょっぴりラテンなブルーズ・ロックの2曲目「キッキン・チャイルド」、ブライアン・セッツァーのギターが炸裂する3曲目「アップタウン・ナンバー 7」と快演が続きます。ヴァン・モリスンを迎えた6曲目「アイ・ガット・ナシン」も沁みますね。
それ以上に感心したのはジェフ・ベックがギターを弾く4曲目「キャント・スタート・オーヴァー・アゲン」です。ソウル・バラードだといっていいと思いますが、切々とつづるディオンの歌も最高だし、ジェフのギターがこりゃまたまろやかでコクがあって、最高の聴きものなんです。1960年代から活動しているクラシック・ロック系のギターリストのなかでは個人的にいちばん好きですね。この音色を聴いてほしいです。
ローリー・ブロックが参加してアクースティックなスライド・ギターを弾くデルタ・ブルーズふうの12曲目「トールド・ユー・ワンス・イン・オーガスト」もなかなかですし、さらにポール・サイモンが参加しているサム・クック・トリービュート・ソングの10曲目「ソング・フォー・サム・クック(ヒア・イン・アメリカ)」は2020年というこの時代に呼応した内容で、示唆深いものがあります。
(written 2020.7.15)