グルーヴの体幹 〜 ブッカー・T&ザ・MGズ『グリーン・オニオンズ』60周年
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Booker T. & The M.G.s / Green Onions (60th Anniversay Remaster)
ブッカー・T&ザ・MGズに説明など不要ですが、名作アルバム『グリーン・オニオンズ』(1962)の60周年記念リマスターが出たということで、あれっ、一年ズレてない?
ともあれサブスクにも入ったので、やっぱりもう一回聴きなおしてみました。この作品だってもちろんいまさら解説なんかいらないんですけど、個人的な感想をば手短に。
それで、昨年一月、MGズの一員スティーヴ・クロッパー(ギター)の最新作について書いたときの文章とまったく同じことがあたまに浮かぶんですね。
集団球技スポーツでは、華麗に技を決めるアタッカーにはたしかにみとれるものの、その実、守備でも攻撃でも堅実な組み立て役(井戸を掘る役、水を運ぶ役 by イビチャ・オシム)が必ずいて、真なるチームの軸として不可欠だったりしますよね。
MGズだと、バンド全体でそんないはばグルーヴの体幹を具現化しているようなもので、個人でもバンドでもそうした職人気質な音楽家にむかしから惹かれる傾向がぼくにはあります。決して華麗な技巧を披露するタイプではない存在に。
三振を奪うとかホームランを打ったりあざやかなゴールを決めたりで満場のスタジアムを沸かせる存在は、MGズのばあいフロントで歌う歌手であり、みずからはその伴奏に徹しているふだんの姿を、歌抜きインストルメンタルでも変わらずそのまま披露しているだけ。
そのぶん、グルーヴの体幹というか骨格みたいなものがかえってくっきりと伝わってくる音楽で、派手さなんかぜんぜんないんですけどエッセンスだけ演奏しているMGズには、ホンモノのミュージシャンシップみたいなものを感じます。
『グリーン・オニオンズ』から十数年以上が経過して、ジャズの世界でもブラック・ミュージックの歌伴バンドがそのまま独立したようなフュージョンの世界が出現しましたが、そっちでは技巧ひけらかし系みたいなのも混じっていました。そういうのも好きなんですけどね。
(written 2023.2.27)