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1971年の成分 〜 ダニー・ハサウェイ『ライヴ』

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Donny Hathaway / Live

今2021年は1971年からちょうど50年。ジャズやロックやソウルなどアメリカン・ポピュラー・ミュージックがほんとうに豊穣だったあの71年からぴったり半世紀という節目の年だったということで、それをふりかえる内容の記事を書いたことがありました。

マーヴィン・ゲイ『ワッツ・ゴーイング・オン』、キャロル・キング『タペストリー』、スライ&ザ・ファミリー・ストーン『暴動』、ジョニ・ミッチェル『ブルー』、オールマン・ブラザーズ・バンド『アット・フィルモア・イースト』などなど、どれもこれもぜんぶ1971年のリリース作品だったんです。

それで、アルバム・リリースは翌1972年だったんですけども、やはりあの時代を同じように生きた音楽家であるダニー・ハサウェイの『ライヴ』。大好きなんですけど、よく考えたらこのライヴ・アルバムは<1971年の成分>とでもいうものでできあがっているようにも思えます。

まずこのダニーの『ライヴ』は1971年のライヴ収録なんですね。A面は71年8月のハリウッドはトゥルバドゥール録音、B面が同年10月ニュー・ヨーク・シティはビターエンドでのライヴなんです。71年の空気をたっぷり吸い込んでいるっていうことは、聴いていても感じるところ。

さらに演奏されている曲に71年のものが多いです。このアルバムはおおまかに分けて、ポップな歌ものとインストルメンタル・ソウルみたいなフュージョンっぽい演奏中心ものとの二種類が並列しているんですけど、前者、歌ものの三曲、「ワッツ・ゴーイング・オン」(マーヴィン・ゲイ)、「ユーヴ・ガット・ア・フレンド」(キャロル・キング)、「ジェラス・ガイ」(ジョン・レノン)は、すべて71年発表の名曲です。

つまり1971年というあの時代にリリースされたその年を代表する名曲をダニーはとりあげて自己流に解釈して歌ったということです。もちろんそれら三曲が時代を象徴する名曲とされるようになったのはもっとのちのことで、『ライヴ』でダニーが歌った時点でならまだできたてほやほやの流行歌だったでしょうけど。

でもここにダニーの一種の嗅覚みたいなものが表れているようにも思えます。まだどうなるともわからないそれらの流行曲をライヴでとりあげてみせるというところが、それをアルバム収録したというところが、間違いなくあの時代を呼吸していたんだなとわかる大きな要素だと思いますね。

そんなわけで、1971年にリリースされたどの名作よりも、ある意味かえって71年成分を煮詰めたようになっているとも思える72年リリースのダニーの『ライヴ』。あの豊穣の年からぴったり半世紀後の今年を締めくくるにあたり、聴きなおし、あの時代がどんなだったか?をふりかえるには格好の音楽かもしれません。

(written 2021.11.7)


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