しんどいとき助けになる音楽(43)〜 サラ・ヴォーン
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Sarah Vaughan / Crazy and Mixed Up
ぼくが二十歳のときに出たサラ・ヴォーンの『Crazy and Mixed Up』(1982)では、やっぱりA面3曲目の「枯葉」でのスキャット炸裂がいちばんの話題ですよね、むかしもいまも。なんたって日本盤レコードのタイトルが『枯葉』でしたし。
それもいいと思うんですけど、そればっかりじゃちょっとね。全体的にレベルが高いこのアルバムでは、もっとほかの歌もののほうが聴きやすくていいんじゃないかと個人的には思っています。スキャット一本槍ではなく、適度にそれをおりまぜながらしっとりとした歌を聴かせるもののほうが。
A1「I Didn’t Know What Time It Was」もいいし、ちょっと元気な2「That’s All」も共感できます。ゆったりしたテンポでおだやかにつづる4「Love Dance」も好き。
そしてなんたってこのアルバムの白眉は、続くイヴァン・リンスのB-1「The Island」です。寄せては返す波のようなくりかえしでほんとうにゆっくりゆっくり徐々に熱を高めていきながら、最終的には大きなうねりのごときエクスタシーが来るっていう流れは、まるでセックスのメタファーであるかのよう。
その後の三曲も、有名曲やそうでないものなどさまざまなものをとりあげて、自分の世界へと仕立て上げていくサラの力量に脱帽します。ツヤとノビのある声がしっかり出ているし、文句なしですね。
(written 2023.10.10)