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歴史に洗われた洗練 〜 アラトゥルカ・レコーズの新作

(3 min read)

Alaturka Records / Seyir

カラン配給、オスマン古典歌謡を21世紀に復興しているレーベル、アラトゥルカ・レコーズ(トルコ)の三作目にあたる新作『Seyir』(2021)は、今年六月にデジタル・リリースされたもの。そのときさっそく聴いてツイートしましたが、どこからも反応は皆無。

そこから約三ヶ月が経ってCDがエル・スールに入荷したということで、いまごろようやくちょっとブログにメモしておこうという気になりました。

今回は、歌い手のヴァラエティに富んでいた前二作と大きく異なり、単独の歌手一人をフィーチャーした内容。それがアイリン・センギュン・タシュチュ(Aylin Șengün Taşçi)。トルコ古典声楽界ではややベテラン寄りの中堅どころでしょうかね。

オスマン古典歌謡、大のお気に入りなんですが、21世紀に、現代演奏とはいえ古典をそのまま復興させただけの音楽のどこがそんなにいいのか?いまの時代に訴求力があるのか?みたいなことは、まったく考えたこともありません。ただ、聴けば気持ちいい、それだけです。

今回もアラトゥルカ・レコーズを主宰するウール・ウシュクが音楽監督を務めウードとチェロを弾いています。そのほかネイ、カーヌーン、ケマンチェ、レバブ、ヴァイオリン、チェロ、クラリネット、ダルブッカ、デフなど、オーソドックスな編成である模様。

それでもって、アイリン・センギュン・タシュチュのヴォーカルをフィーチャーし、20世紀初頭ごろのオスマン古典歌謡(トルコ共和国の成立は1924年)のSP音源を模範として再興しているわけです。3、10、13曲目には男声ヴォーカルも参加。

古典そのままといっても、しかし聴いているとなんだか新鮮な気持ちになってくることもたしかで、たぶんこういった音楽は時代の流れに関係なく、いつでも変わらぬ味わいを持ち魅力を放っている、決して古くも(新しくも)ならない、っていうことかもしれません。流行ポップ音楽じゃありませんからね。

しかもいまごろの晩夏〜初秋ごろにピッタリ似合う雰囲気を持っていて、日が暮れてからの夜、この音楽が鈴虫の鳴き声と混じったりなんかすると、も〜う最高なんですよ。優雅であり深みもありながら、みずみずしさを失わないアイリンの歌声も、この季節にまったくふさわしいものです。

オスマン古典歌謡はなんでも500年の歴史があるそうで、そんな長い時代の経過に洗われて洗練を重ねてきたコクのある味わいは、21世紀になっても不変であるということでしょうね。アラトゥルカ・レコーズがあるおかげで、現代の好音質でそれを聴くことができて、幸せのひとことです。

(written 2021.9.26)

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