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ハード・バップからヒップ・ホップまでひとまたぎ 〜 マカヤ・マクレイヴン

(4 min read)

Makaya McCraven / Deciphering the Message

新世代ジャズ・ドラマーにしてプロデューサー、DJのマカヤ・マクレイヴン。ビート・サイエンティストと呼ばれるマカヤの最新作はブルー・ノート移籍第一作。『ディサイファリング・ザ・メッセージ』(2021)。

このアルバム題と、同レーベル1950〜60年代のアルバムに多かったアルファベットを大きくあしらったタイポグラフィ・デザインでジャケットを飾ってあることは、マカヤのこの新作の内容を端的に描写しているものです。

このアルバムは、マカヤがブルー・ノートの過去音源を使い、それを大胆にリミックスしているものだからですね。ベースになっているのはハンク・モブリー、ケニー・ドーハム、アート・ブレイキーとジャズ・メッセンジャーズ、ホレス・シルヴァー、クリフォード・ブラウン、デクスター・ゴードン、ケニー・バレルら、錚々たるハード・バップ名作の数々。

そのへん、参考までにと思い、マカヤが使っている全13曲のオリジナル・ソースをプレイリストにしておきましたので、聴き比べてみてください。いちおうブルー・ノート公式がアルバム発売時に同様のプレイリストを公開したんですけれども、一部あれっ?と思うところがあったので。

これとマカヤのリミックスを比較してみると、オリジナル音源に大いなるリスペクトを払い尊重し原型をかなり残しつつも、ビート・ループなども多用しながらつくりかえているのがわかります。しかも今回マカヤは生演奏バンドを起用して、あらたに演奏しなおしてもいるんですよね。

そのメンバーは、ジョエル・ロス(ヴァイブラフォン)、マーキス・ヒル(トランペット)、グレッグ・ウォード(アルト・サックス)、デショーン・ジョーンズ(テナー・サックス&フルート)、マズ・ゴールド(ギター)、ジェフ・パーカー(ギター)、ユニウス・ポール(べース)。

新感覚を表現できるこうした若手ミュージシャンたちを使いながら、、マカヤみずからのビート・センスでもって、ハード・バップ・クラシックスの数々が生まれ変わっているのを体験することができますよね。重要なのはオリジナルではなく既存のハード・バップ・ナンバーを用いたということです。

このことにより、新世代の若いジャズ・ファンたちにハンク・モブリーとかデクスター・ゴードンとかホレス・シルヴァーとかアート・ブレイキーとかをみごとに紹介する機会になっているし、長年ジャズを聴いてきた中高年世代にはジェフ・パーカーとかグレッグ・ウォードみたいな21世紀の若手演奏家へのイントロダクションになっているのが大きなメリット。

ハード・バップ系のオールド・スクールなジャズ・サウンドを、新世代のヒップ・ホップ、コンテンポラリーR&B、ラウンジ系のビート感と合体させる試みは以前からあって、Us3やグールー、そしてマッドリブなどがやってきましたが、今回のマカヤのこの新作もそんな流れのなかにあるものだと言えるでしょうね。

(written 2021.11.21)

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