1920年代そのままに 〜 サラ・キング
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Sarah King / Tulip or Turnip
ニュー・ヨークはブルックリンの歌手なんだということ以外なにもわからないサラ・キング。名前をアルファベットで検索すると、ギターかかえてテンガロン・ハットかぶったカントリー歌手が出てきますが、別人だよなあ。ぼくがこないだ偶然出逢ったほうはレトロ・ジャズ歌手だもん。そっちは情報ほぼ皆無で。
でもファースト・アルバムらしき『Tulip or Turnip』(2021)はマジいいよ。なにも知らないけど惚れちゃった。ちょっぴりビリー・ホリデイちょっぴりブロッサム・ディアリーみたいなキュートなヴォーカルがいいし、なんたって20sディキシー/30sスウィング時代の知られていない隠れた宝石を、当時のスタイルそのままチャーミングに演奏するバンドも好み。
バンドはピアノ・トリオにクラリネットだけっていうシンプルな編成。このカルテットもサラも、おおむかしのジャズが心から大好きなんでしょう、ひたすら追求して2023年に再現しているっていう。レトロが流行りだからちょっとやってみたっていうだけだとここまでできないですよね。
とりあげられている曲はデューク・エリントンやティン・パン・アリーのソングライターたちなどが書いた、しかも忘れられてしまった小品ばかり。無知なぼくはなんと本作ぜんぶの曲を知りませんでした。クレジット見るまではオリジナルなんじゃないかと勘違いし、たいしたイミテイションぶりだと、そこに感心していたくらいですから。
と思っちゃうくらい、知らない曲+きわまったレトロ・スタイルの徹底ぶりで、古いジャズやジャズ系ポップスがお好きな向きには格好にかわいくキュートでチャーミングな一作。8曲目なんか必然性がないのにガーシュウィンの「ラプソディ・イン・ブルー」をクラリネットがイントロで引用しているほどで、要するにあの曲が発表されたあの時代(1924年)のムードがそのままここに活きています。
(written 2023.5.14)