マイルズ60年ライヴの「ソー・ワット」でのトレインにしびれる
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Miles Davis / Kind of Blue (Legacy Edition)
『サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム』を聴いていたら、この時期にこのマイルズ・バンドで吹きまくるジョン・コルトレインをもっと楽しみたくなってきて、『カインド・オヴ・ブルー』レガシー・エディション(2009)をピック・アップしました。
それのラストに1960年欧州ツアーからのオランダ公演「ソー・ワット」が入っているんですよね。かの『ファイナル・ツアー』と同時期の録音ですが、あのボックスにその「ソー・ワット」は(なぜか)収録されていません。
トレインをたっぷりっていうんならそのリーダー作を聴けばいいじゃないかと思われるかもですが、あのときのマイルズ・バンドでの60年欧州ツアーほど吹きまくっているものってあんがい少ないんですよ。それくらいあのツアーでのトレインは苛烈。
それになんたってぼくはウィントン・ケリー、ポール・チェインバーズ、ジミー・コブのリズム・セクションが大好きで、この穏当なリズムに過激なトレインのあまりにも過剰なソロが乗るっていう構図がですね、もうたまらないわけです。
くだんの「ソー・ワット」におけるトレインのソロ長は8分以上。ボスのトランペット・ソロが3分程度ですからねえ、サイド・メンバーなのに二倍以上も吹いていて、こんなにやっちゃってだいじょうぶだったのか?と心配になるくらい。
しかし当時のマイルズはトレインに絶大なる信頼を置いていましたから、好きなようにやらせてあげようっていう気分だったでしょう。それでもさすがに一回聞いたことがあるそうです:「なんでそんなに長く吹くんだ?」と。いはく「夢中になりすぎて終わりかたがわからなかった」。
このころからすでにトレインは自身のリーダー作での疾走ぶりを予感させる激烈ぶりがはじまっていて、その端緒がこの「ソー・ワット」で聴けるというわけです。個人的にトレインの(アトランティック、インパルスでの)リーダー作はそうでもないっていう感想を持つ自分にとっては、このマイルズ60年ツアーあたりが臨界点かなあと。
臨界点ならではのグツグツ煮えたぎる熱さが聴けますし、それを冷静沈着に支える3リズムの安定感もあいまって、大好物というわけです。
(written 2023.9.6)
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