見出し画像

タイトなコンテンポラリー・ジャズ 〜 チェンチェン・ルー

(3 min read)

Chien Chien Lu / Built in System: Live in New York 内建系統

チェンチェン・ルーがいいぞと日本語で話題にしているのがほとんどぼくだけのような気がして、これこのままでいいんですかね。たしかに世間的にヒットする要素がまったくないわけですけども、音楽はごく上質の台湾人ジャズ・ヴァイブラフォン奏者であります。

そんなチェンチェン、つい先週出た最新作『Built in System: Live in New York 内建系統』(2023)は、今年二作目で通算三作目。といっても今年一つ目はリッチー・グッズとの共作名義による企画アルバムでしたから、単独名義のソロ作品としてはキャリア通算で『The Path』に続く二個目です。

その『ザ・パス』が明快な1970年代ふうソウル・ジャズでファンキー路線まっしぐらだったのに比べたら、最新作『Built in System』は情緒感を消したコンテンポラリー・ジャズ路線といえます。こういうのもいいですね。

編成は、ふだんのボス、ジェレミー・ペルト(tp)に、リッチー・グッズ(b)、アラン・メドナード(dms)というカルテット編成。鍵盤楽器やギターがいないというのもタイトなサウンド・カラーを決定づけている大きな理由でしょう。

またドラムスのアランがかなりの好演を聴かせていて、細かな手数の多い細分化ビートを叩き出すありさまは、まさにいまのコンテンポラリー・ジャズではドラムスが鍵を握っているぞと実感させるものがあります。

ファンキーだったりメロウだったりすることがないのは、プロデューサーがジミー・カッツに交代したのが理由かも。ジミー・カッツはNYCで非営利のジャズ・レーベルを運営する人物で、レコーディングし作品をリリースするチャンスがなかなかないけれど音楽的にはすぐれているというミュージシャンに門戸を開いているという存在です。

そんなわけもあってか、本作でのチェンチェンはエンタメ路線ではなくややネオ・クラシカルな現代ジャズを志向していて、リリカルだったりする部分がまったくない硬質なサウンドを心がけているのがよくわかります。今回マリンバは弾かずヴァイブに専念しているのも特色でしょうか。

(written 2023.10.22)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?