バルセロナ出身のジャズ・サックス、ジュク・カサーレスの『Ride』がちょっといい
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Lluc Casares / Ride
ジュク・カサーレスは1990年バルセロナ生まれのジャズ・リード奏者。ジュリアードを卒業していますが、三月に発売されていた最新作『Ride』(2023)はギター+ピアノ・トリオの伴奏で、ずいぶん心地よくノリよくスウィングしていて楽しいですよ。
ここではテナー・サックスに専念しているジュクにとって四作目で、住んでいたアムステルダムの街に題材をとったものらしく、じっさい同地での2022年9月のコンサート前日にバンドでスタジオ録音されたもの。+ラスト8曲目はそのコンサートでのライヴ収録。
新世代ジャズとかではなく、従来型のメインストリームなスタイルではありますが、なかなか耳を聴き張るダイナミックであざやかな演奏ぶり。ジュク以外のメンバー四人も腕達者ですが、個人的には特にギターのジェシー・ヴァン・ルーラーが印象に残りました。
静かなバラード系の曲はまずまずかなといった印象ながら、グルーヴするノリいい曲の数々での五人の演奏ぶりはほんとうにみごと。2「Grewisms」、3「Melo」あたりなんて鳥肌立ちそうなほどカッコいいし、リズムのキメが快感で、ソロ・インプロをあざやかにきわだたせています。
そのあざやかなキメはあらかじめ用意されていたものかもしれませんが、演奏のなかではきわめて自然発生的に聴こえますし、アレンジではなくアド・リブだったかも。特に「Melo」で聴けるキメがカッコいいんですが、それがこの曲ではグルーヴに一定のファンキーさを与えています。
6「Prova Dos」ではラテン・リズム(に聴こえる)の色彩や躍動感があって、これもいいですね。アルバムで大部分を占めるスタジオ録音曲も一回性のライヴ収録で、事後の編集はいっさいなしだそうです。
ジュクがリーダーの作品ではありますが、一人でたくさん吹いているというよりも、メンバーにどんどん演奏させている感じで、なかでもギターのジェシーがメインのソロ時間を占めているだろうと思います。ほぼ双頭クインテットに近い様子。ほんといいギターリストですよ。
(written 2023.5.12)
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